2019年、金融庁がまとめた報告書に「老後は毎月平均5万円の赤字、30年分で2,000万円の資金不足」という試算結果があり、世間を騒がせました。必要な老後資金は、ライフスタイルや配偶者の有無などによって異なるので、どのくらいの資金が必要なのかを試算し、現役世代の今から将来に備えることが大切です。
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「老後は○歳から」という明確な規定はなく、それぞれの考え方によるものの、「公的年金の受給が始まる65歳」を一つのボーダーラインとしておくと、ライフプランが立てやすくなります。自分が65歳になったとき、配偶者や子どもがいくつなのかも把握しておきましょう。
老後に必要な資金(過不足金額)は、下記の計算式で概算できます。
老後の過不足金額=(A.必要な生活費-B.年金収入)×C.老後年数-D.退職金など
A〜Dについて、一つずつ考えていきましょう。
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老後の生活資金について、前述の金融庁の報告書では「毎月約26.4万円」(無職夫婦のみ世帯の場合)となっています。
とはいえ、生活費はライフスタイルによって異なります。「現在の生活費×70%」を目安金額とする方法か、現在の生活費から「老後には不要な出費を引き算する方法」で、しっかり計算しておきましょう。教育資金や住宅ローンが不要になる年の確認も忘れずに確認しましょう。
日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、現時点での加入実績と「年金の見込み受給額」の確認ができます。将来の年金額は、働き方や加入期間、配偶者の有無などによって異なります。平均額や一般的な情報ではなく、自分のケースを知ることが重要です。
国民年金のみの人は「付加年金」や「国民年金基金」といった将来の年金額を増やす方法を検討してみるのもいいでしょう。
厚生労働省の発表によると、平均寿命は男性81.25年・女性87.32年(2018年「簡易生命表」より)、100歳到達者は3万7,005人となっています。「人生100年時代」ともいわれ、退職後の平均余命が伸びていることもあり、「老後」は、65歳から30年ほど続くと考えておくといいでしょう。
既に加入している生命保険の個人年金保険や養老保険などは、受け取り年齢と金額を確認しておきましょう。
退職金の算出方法は、就業規則に記載するよう労働基準法で定められています。ただし、退職金制度のない会社もあります。今のうちに、確認しておきましょう。自営業やフリーランスの人は、小規模企業共済などで自分の退職金を準備しておく方法もあります。
老後の過不足金額は、現役の頃から毎月貯蓄をして積み立てておくのが良いでしょう。老後30年で必要になる資金を計算した後、1ヶ月あたりの貯めるべき金額を試算すると計画的なマネープランが立てられます。
・1ヶ月あたりの目標貯蓄額
過不足金額÷老後までの年数÷12ヶ月
貯めるための期間は、現在30歳ならば35年、40歳でも25年あるので慌てる必要はありません。今からコツコツ貯めていくための対策案を紹介します。
まずは、貯蓄分を「捻出」しましょう。コツは、毎月必ずかかる固定費から見直すことです。
住居費や通信費、保険料などは、プランの見直しや基本使用料の変更、契約会社の変更などを検討しましょう。通販などで定期購入しているものや、スマホアプリやネットサービスで定額払いをしているものなどがある場合はひとまず紙に書き出し、本当に必要なもの以外は思い切って解約しましょう。
一つあたりは数百円程度の削減でも、対象項目が多ければ多いほど削減効果は高まり、長期間継続することで大きな節約となります。
変動費の節約は、メリハリをつけることが大切です。我慢する生活を続けるとストレスが貯まってしまうため、「外食を月4回から月3回に減らす」など無理のない範囲で行うといいでしょう。
次は、貯蓄分を「確保」しておきましょう。見えないところで貯まる先取り貯蓄は、ついつい使ってしまう人の味方です。
財形貯蓄
勤務先に財形貯蓄制度がある場合は、給与天引きで貯金ができます。使用目的が限定されない「一般財形貯蓄」や、年金として受け取れる「財形年金貯蓄」が、老後資金作りに向いています。
自動積立定期預金・自動入金サービス
自動積立定期預金・自動入金サービスは、どちらも指定日に指定した金額を移動させるサービスです。各銀行で扱っている自動積立定期預金は「同じ銀行の普通口座から定期預金口座へ」、ネット銀行が扱っている自動入金サービスは「他行口座からネット銀行口座へ」、資金を移動させます。生活口座からよけておくことで、浪費防止につながります。
貯蓄を「増やす」方法も、考えておくといいでしょう。リスクもありますが、iDeCoとNISAは税制優遇などもあり、投資初心者におすすめの制度です。
iDeCo
iDeCoは、「個人型確定拠出年金」と呼ばれる私的年金制度です。月々5,000円から掛金を積み立て、運用する投資信託などの金融商品を自分で選び、その利益を年金あるいは一時金として受け取ります。運用益は非課税、受け取る際の税金も軽減されるため、節税効果が大きい制度です。
NISA
NISAは、少額投資非課税制度と呼ばれ、「つみたてNISA」では年間40万円の投資が可能で、安定的な資産形成をめざす条件に合致した商品のみが投資対象です。投資から20年間は、分配金や譲渡益などの運用利益が非課税になります。
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「(必要な生活費-年金収入)×老後30年-退職金など=過不足金額」を今のうちに計算しておけば、「すべきこと」が明確になります。「わからないこと」が多いと、不安を感じるものです。それならば、「わかっていること」を増やしましょう。老後になってから慌てないために、ゆっくりと着実に準備をしておきましょう。