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「退職金に税金がかからない」のはどんな人?計算方法や必要な手続き

人生100年時代、長い老後の生活を支えるのが退職金と年金です。退職する機会は人生でそう何度も訪れるものではないため、所得税や住民税に関する知識はある程度あるものの、退職金の制度や税金についての知識となると話は別という人も多いはずです。退職金にかかる税金の計算方法や必要な手続きについても見ていきましょう。なかには退職金に税金がかからない人もいます。

大卒定年退職の退職金の平均額

退職金の受け取り方法や税制を解説する前に、退職金は平均でどれくらいの金額なのかを確認しておきましょう。厚生労働省の「令和元年賃金事情等総合調査」によると、19年に大学卒で60歳まで勤め上げた場合の平均退職金は2,289万5,000円です。

この統計は、資本金5億円以上、労働者1,000人以上の企業の中から独自に調査したものです。比較的大手企業の退職金の実情だと言えるでしょう。中小企業の場合、東京都が従業員10人〜299人までの都内中小企業を対象とした「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」によると、大学卒でやはり38年勤め上げた場合の平均で1,203万4000円です。

企業によってさまざまな制度があり、異なる点も多いので、自分の会社の年金制度を詳しく確認しましょう。その際、一時金か年金でもらう選択肢があるのかもチェックしておきましょう。

退職金の受け取り方法3つのケース

もらえる金額を把握した後に確認すべきなのが税制と受取方法です。
会社の制度にもよりますが、退職金の受け取り方法は「一時金」と分割して受け取る「年金受け取り」、両者を「併用」する3つのケースがあります。一般的にはいずれかを選択できることが多く、それぞれの受け取り方法によって退職金の税金計算が変わってきます。

結論から述べると、税金面では「一時金」で受け取るほうが有利に働きます。退職金の用途として、住宅ローンの返済など、まとまった資金として使いたいニーズもあるため一時金で受け取る人が多いようです。ただ、年金型が一概に悪いとはいえません。手元にあるとどうしても使ってしまう人には、税金が高くても年金のほうがいいでしょう。すでに金融資産をある程度保有する場合は年金資産の補助にするという考え方も出来ます。ライフプランにあわせて考えてみましょう。

一時金で受け取る場合のメリットとデメリット

退職金は他の所得と合算しない分離課税となっており、税負担が軽くなっています。退職所得控除という優遇税制があり、勤続年数38年の場合は退職金2,060万円までは非課税となります(詳細な計算式は以下で解説)。さらに全額一時金で受け取る場合、社会保険面でもメリットもあります。健康保険、雇用保険、厚生年金保険等の社会保険料がかかりません。退職後に働かない場合には国民健康保険に加入する必要がありますが、退職金は前年度の所得とは別扱いとなるため翌年の健康保険料の算定には含まれません。

あえてデメリットを挙げると、一時金を老後資金として有効活用せずに使ってしまうリスクがあることです。

年金として受け取る場合のメリットとデメリット

年金受け取りの場合は、一時払いと比較するとメリットと思える点が少ないのですが、各種年金を合算した雑所得に「公的年金等控除」が適用されます。また、一括で受け取る場合と比べて年金原資の運用が継続されるため、運用利回り次第ではトータルすると一時金より増える可能性もあります。ただ、現在のような低金利の時代では運用に期待しすぎるのはよくありません。退職金で住宅ローンの残金を払うといった大きな支払いに充てない場合はどちらにしてもその資金を運用することになります。企業年金の給付利率次第では年金受け取りも悪い選択だとは言えないでしょう。

一方のデメリットとして、老後20年に渡って受け取る間に公的年金控除が適用されますが、国民年金、厚生年金、企業型の年金、個人確定拠出年金などと合算され、雑所得として課税対象になります。
雑所得はその年の所得として、翌年の国民健康保険料の算定に関係します。将来的に医療費が増えて、国民健康保険の税率や負担が上昇する場合には悪影響を受けるでしょう。

併用

会社の制度があれば両方のメリットをうまく使い合わせて併用することも可能です。一時金で受け取る人が多いのは退職所得控除が大きいからです。ただ、退職金が控除枠を上回るなら、超える部分を年金受け取りで検討してみる意味があります。また、公的年金を受け取るまでの間に一定額以下を年金受け取りにした場合の税負担が低くなることもあります。会社で退職が近づいてくると退職金の制度や退職後の社会保険の説明会などが行われるはずです。そこで詳しく自社の退職金制度の仕組みや税制をクリアにしておきましょう。

退職金の計算方法 一時金で受け取る場合、多くの人は非課税 

退職金は社会保険制度により退職時に支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて生命保険会社又は信託会社から受ける退職一時金なども含まれます。退職金全額に対して税金がかかるわけではなく、退職金から退職所得控除を引いた後の「退職所得」が課税対象になります。

退職所得=(退職金(源泉徴収前)-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額は、「勤続年数」で変わります。特にポイントなのは「20年以上」働くと控除が増えること、勤続年数は「切り上げ」で計算することです。

退職所得控除の計算方法

・勤務年数が20年以下:40万円×勤務年数(80万円に満たない場合、80万円)
・勤務年数が20年超 :800万円+{70万円×(勤続年数 – 20年)}

主な勤続年数の退職所得控除額

1年    80万円
10年   400万円
19年   760万円
20年   800万円
21年   870万円
30年   1,500万円 
38年   2,060万円
40年   2,200万円

勤続年数1年目の控除額は80万円、その後20年までは年間の控除額が40万円ずつ増えていきます。勤続20年からは控除額が増える構造になっており、21年目以降は70万円ずつ増えます。勤続年数の数え方は切り上げ方法です。勤続年数が1年と1日でも、切り上げて勤続年数は2年となります。

上記のように大卒で38年間、定年まで勤め上げた場合は2,060万円が控除されます。大企業の平均退職金が2,289万5,000円、中小企業が1,203万4,000円であることを考えると、多くの場合は控除金額内で収まり「退職所得」はゼロになります。

退職金に税金がかかる場合はいくらになる?具体的に計算してみる

勤続年数37年10ヵ月、退職金は大企業平均2,289万5,000円の場合、次のように求めます。

勤続年数に1年未満の端数がある場合は切り上げますから、勤続年数は38年になります。

退職所得=(2,289万5,000円−2,060万円)×1/2
    =114万7,000円(1,000円以下切り捨て)

この「114万7,000円」に対して他の所得と分離して所得税がかかります。他の所得と分離されることもポイントです。年収が高くて所得税率が高い人でも退職金だけに応じた税率となるわけです。

退職所得114万7,000円に対する計算は次のようになります。

退職金の所得税=114万7,000円×5%
       =5万7,350円

所得税率は退職所得の金額に応じて定めされています。以下の税率簡易表(表1)を参照してください。なお、平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとなるため、次のように計算します。

所得税と復興特別所得税の合計額
=5万7,350円+( 5万7,350円×2.1%)
=5万8,554円 (1円以下切り捨て)

表1)国税庁の所得税の税額表(令和2年)

(出典:国税庁)

勤続年数20年以下の場合

勤続年数が20年以下の場合は、控除額は以下のようになります。退職金に税金がかかる場合は、いくらになるか具体的に計算してみましょう。

控除額: 40万円×勤務年数(80万円に満たない場合、80万円)

勤続年数が10年8ヵ月のケースで、控除額を計算してみます。勤続年数に1年未満の端数がある場合は切り上げますから、勤続年数は11年になります。計算結果は以下のとおりです。

控除額: 40万円×11年=440万円

「退職金-退職所得控除額」が0以下ならば、所得税はかかりません。このケースでは、退職金が440万円以下なら非課税です。0以上の場合は、以下の計算によって算出された所得税がかかります。例えば退職金が500万円の場合は、以下のようになります。

退職所得=(退職金500万円-控除額440万円)×1/2
    =30万円(1,000円以下切り捨て)

この場合は30万円の退職所得に対して、他の所得と分離して所得税がかかります。他の所得と分離されることも、重要なポイントです。年収が高く所得税率が高い人でも、退職所得のみに応じた税率となります。

退職所得に対する所得税率は、退職所得の金額に応じて定められています。上記税率簡易表(表1)から、この場合の所得税率は5%です。

退職金の所得税=30万円×5%
       =1万5,000円

なお、平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとなるため、最終的に税額は以下のようになります。

所得税と復興特別所得税の合計額
=1万5,000円+(1万5,000円×2.1%)
=1万5,315円 (1円以下切り捨て)

誰でもできる年金で受け取る「退職金の税金計算法」

年金で受け取る場合、所得区分が雑所得扱いになります。給与所得など、他の所得と合計して総所得金額を求めた後に税率が適用されます。公的年金である国民年金、厚生年金の他、私的年金である企業型の年金、個人確定拠出年金なども合算します。詳細は国税庁の速算表を参照しましょう。


(出典:国税庁)

退職金2,000万円を20年にわたって年金として受け取る場合

2,000万円の退職金なら一時金(勤続年数38年)だと非課税です。年金として受け取る場合、運用収益を考えないと年間100万円を受け取ることになります。60歳で定年退職して年金以外の収入がない場合、公的年金が始まるまでの65歳までは、年金以外の所得1,000万円以下、年金の雑所得が100万円で計算(上記画像1)すると、割合(b)100%、控除額が60万円となり、次のように計算します。

100万円×100%-60万円=40万円

65歳以降は公的年金も受け取ります。公的年金を240万円受け取っているとすると、企業年金分の100万円と合わせると年340万円が雑所得になります。他に所得がない場合、掛け目は75%、控除額は27万5,000円となり、次のように計算します。

(240万円+100万円)x 75% – 27万5,000円=227万5,000円

いずれにしても、一時金で受け取るのに比べて、総受取額は減少します。

併用の場合は、これはそれぞれの額に応じて、計算します。

退職金に必要な手続きは?

勤務先の企業へ「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出しましょう。提出している人については、退職金等の支払者である企業が所得税、復興特別所得税を計算し、その退職手当等の支払の際に源泉徴収されます。原則として確定申告は必要ありません。

一方、「退職所得の受給に関する申告書」の提出がなかった人については、退職金等の支払金額の20.42%の所得税、復興特別所得税が源泉徴収されます。それは、受給者本人が確定申告を行うことにより還付できます。

退職金の確定申告で還付金がある場合

ここまで説明してきたとおり、退職金は控除額が大きいため税金はあまり高くありません。しかも他の所得と分離されるので、基本的には確定申告も不要です。ただし「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、確定申告をすることで源泉徴収分が還付されることがあります。どのような場合に確定申告をしたほうがよくて、その手続きはどうしたらよいのでしょうか。これを知らずに確定申告を忘れる人も多いようですので、還付が見込める場合は忘れずに確定申告を行いましょう。

年の途中で退職し再就職しなかった場合

年の途中で退職し、同じ年に再就職しなかったケースを考えてみましょう。特に年初に退職して年収が少ない場合は、確定申告によって税金が還付される可能性が高いです。

サラリーマンですから、税金は前年度の年収をもとに退職するまで毎月源泉徴収されています。年初に退職した場合は年収が少なくなるので、税率も下がることになるでしょう。扶養控除や社会保険料控除、生命保険料控除なども払い過ぎていて、それぞれの控除枠も残っていることが考えられます。在職中は会社が「年末調整」によって還付額を計算してくれますが、退職した場合は自分で確定申告をして、還付してもらうことになります。

年の途中で退職し再就職したが収入が少ない場合

上記は再就職しなかった例ですが、再就職したとしても年収が大きく減った場合は、確定申告によって還付を受けられる可能性があります。正社員として再就職した場合は、前の会社の源泉徴収票を提出すれば新しい会社で年末調整をしてくれます。源泉徴収票を提出していない場合は、自分で確定申告をしなければなりません。新しい仕事の雇用形態がアルバイトや契約社員などの場合、年末調整をやってもらえないことがあります。そのケースで税金を払い過ぎいている場合は、確定申告によって還付を受けられます。

退職金と年金が老後資産のコア

退職金は、事前の会社の説明会などで予想ができるものです。公的年金については。「ねんきん定期便」把握出来るはずです。今回説明してきたことも大切ですが、一番大切なのは、「定年後も働くのか?」「家族はいるのか?」「家族にまだお金はかかるのか?」など個人個人のライフプランを優先して考えることでしょう。不安がある場合は自助努力の年金(つみたてNISAやiDeCoが代表例)などで補えるようにしたいものです。
退職金にはほとんどの場合、税金が掛かりませんが、勤続年数や収入により課税対象額も変わってきます。自分の退職金については自社の退職金制度を調べ、必要な手続きだけは忘れずにしておきましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。

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