将来の資産形成には「預貯金から投資へ」が求められるといわれますが、本当に必要なのか、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。投資にはリスクがあることも事実ですが、預貯金を含めた金融商品のなかでも効率的にお金を増やすことが期待できます。ただしそのためには、投資の種類や方法に注意を払うことも大切です。
本記事では、投資の意義や必要性、リスクを抑えた投資の方法などについて解説します。
目次
まずは、投資が必要といわれる主な理由を4つ紹介します。
長い人生のなかでは、まとまった資金が必要になる出来事がたくさんあります。例えば結婚や出産、引越し、子どもの進学、老後生活の始まりなどが挙げられます。これらのライフイベントにかかる費用額は、人によっても異なりますが一般的な目安額は以下のとおりです。
結婚資金 | 約343万9,000円(※1) |
出産費用 | 約48万2,000円(※2) |
マイホーム購入に必要な自己資金 (分譲戸建ての場合) | 約1,305万円(※3) |
大学進学資金 (国立大学入学金+4年間の授業料) | 約242万5,200円(※4) |
老後資金 | 約1,300万~2,000万円(※5) |
これらの費用のなかには、必要時期が先のものもあります。しかし必要なタイミングで順次手当できるように事前準備を進めておくことが必要です。
効率的な資金準備をしたい場合、預貯金だけでは難しいことも実情です。2024年3月の日本銀行のマイナス金利政策解除を受けて以降、徐々に預金金利を引き上げる金融機関も増えています。しかしそれでも普通預金・定期預金の金利は、ともに1%未満です(2025年3月時点)。
資産が増えるスピードを簡単に知る方法として「72の法則」というものをご存じでしょうか。これは、手もとの資産を2倍に増やすために必要な年数を算出できる計算式です。
【72の法則】
・72÷年利=資産が2倍になるおおむねの年数
例えば100万円を年利0.2%の銀行預金に1年複利で預ける場合であれば、200万円になるまでに約360年(72÷0.2)かかることがわかります。一方、年利5%の投資で運用した場合は、約14.4年(72÷5)で200万円に達します。
資産形成するうえでは、インフレを考慮することが必要です。近年は「物価が上がって物を買いにくくなった」という人も多いかもしれません。インフレが進むと額面金額は変わらなくても、お金の価値は下がってしまいます。つまりインフレ率を上回る金融商品などで資産運用しなければ、お金の価値は徐々に目減りするということです。
インフレによる目減りを防ぐためには、預貯金だけでなく株式や債券、投資信託などへ投資することも求められます。
銀行預金の利息や投資で得た利益には、原則20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。日本政府は、利益が非課税になるNISAやiDeCoといった制度を設け、個人が資産形成で貯蓄から投資に資金を回しやすいような環境整備を整えています。
そもそも投資は「将来の価値増加や成長に期待して長期的にお金を投じること」を意味します。例えば値上がり益や配当金を見込んで株式や投資信託などを購入するといった具合です。しかしこれらは、さまざまな要因で価格が変動するため、見込みどおりに利益を得られるとは限りません。価格が上がって利益を得られる可能性もありますが、当然価格が下がって元本割れをする可能性もあります。
「リスク=損をすること」と思っている人もいる多いかもしれません。しかし投資におけるリスクとは「投資をすることで利益を得られるかもしれないし、損失が出るかもしれない、その利益や損失がいくらになるかは不確実」ということです。
リスクや商品の特徴を正しく理解せずにお金を投じると、ギャンブル的な投機になってしまいます。しかし商品の選び方や投資の方法を工夫して、リスクと上手に付き合いながら投資することは可能です。
投資のリスクを抑えるためには、少額投資や分散投資を心がけましょう。投資金額が小さければ仮に値下がりした場合でも損失が小さくなります。投資は自己責任となるため、しばらく使う予定のない余裕資金や損をしても生活に支障を来さない金額ではじめることが大切です。
分散投資とは、特定の商品や銘柄だけに投資するのではなく複数の商品・銘柄に分けて投資する方法です。資産分散によって、どれかが値下がりしても、他の商品は値下がりせずに済むかもしれず、全体的にはダメージを軽減できます。また、まとまった金額で一括投資するのではなく同じ商品でも少しずつ、購入するタイミングを分けて購入する時間分散でも分散投資が可能です。
ここまで投資の必要性や投資のリスクについて説明しました。資産形成に必要なのは、“投資”というより“前向きな覚悟”といえるかもしれません。次のことを意識し、投資が必要かどうかご自身で見極めましょう。
投資をはじめる前に、「何のために投資をするか」という目的を明確にしておきましょう。目的がはっきりとしていれば「いつまでにいくらお金を増やしたいか」という目標を設定しやすくなり、適切な投資商品や投資方法を選びやすくなります。また、目的意識を持つことで「仕組みや特徴がよく理解できないまま投資してしまう」という失敗を防ぐことにもつながります。
株式や投資信託などの金融商品は、毎営業日価格が変動するため、一時的に購入時の価格よりも下がり、いわゆる「元本割れ」を経験することもありえます。しかし、大切なのは最終的に目標を達成することです。元本割れは、ストレスを感じてしまうかもしれませんが、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。
ただし、自分のリスク許容度を正しく認識した上で投資することも欠かせません。リスク許容度とは、不確実性(リスク)にどれだけ耐えられるかの度合いのことで、精神的な面も含まれます。小さな値動きでも動揺してしまう場合は、元本保証のない投資を避けることも選択肢の一つです。
投資に回したお金に手を付けない覚悟も大切です。余裕資金で運用すれば値動きに対する不安を軽減できるだけでなく、長期投資によるで複利効果を最大限に活かすことができるでしょう。
複利効果とは、運用益を元本に組み入れ、再投資することで資産を効率的に増やす仕組みです。運用期間が長くなるほど効果を期待できます。
ひとくちに投資といっても、さまざまな金融商品があります。自分の目的やリスク許容度に適する投資商品を選べるよう、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
投資信託は、不特定多数の投資家から集めた資金を運用のプロが株式や債券、不動産などに分散投資し、その成果を投資家に分配する金融商品です。プロが運用を担当し、分散投資の効果でリスクを抑えやすいため、初めての投資でもはじめやすい商品の一つです。ただし、プロが運用するからといって元本保証があるわけではない点には注意が必要です。
投資信託の運用方針や投資対象は「目論見書」で確認できるため、事前にしっかり目を通しましょう。
ETFは「Exchange Traded Funds」の略で、証券取引所に上場している投資信託です。通常の投資信託は1日に1回基準価額が決まるのに対し、ETFは株式のように市場でリアルタイムに売買できるため、機動的な取引が可能です。
債券は、国や地方自治体、民間企業が資金調達のために発行する有価証券です。発行主体に応じて「国債」「地方債」「社債」などの種類があります。債券を購入すると一定期間ごとに利子(クーポン)を受け取ることができ満期時には額面金額(通常は投資額)が戻ってきます。利率や満期日は、発行時に決められているため、安心して取り組みやすい点がメリットです。
株式は、企業が資金調達のために発行する有価証券です。購入すると投資家は株主になります。株主は、企業の経営に関与する「議決権」を持つほか、企業によっては配当金や株主優待を受け取ることもできます。また、株価が値上がりした際には、売却によって利益を得ることも可能です。
株価は、企業の業績や景気状況、各投資家の売買状況(需要と供給)など、さまざまな要因で変動するため、投資信託や債券に比べるとリスクは高めです。
外貨預金は、預金商品の一つです。預金したい外貨へ両替したお金を金融機関へ預け入れ、預け入れた通貨で利息を受け取ることができます。例えば米ドルの外貨預金をした場合であれば、利息は米ドルで受け取るといった具合です。基本的な仕組みは、一般的な円預金と変わりません。金融機関によって異なりますが、複数の通貨から選べ、通貨によっては円預金よりも高金利なことがメリットです。
ただし基本的に入金時には「円から外貨」、出金時には「外貨から円」へ両替が必要で、その都度為替手数料がかかります。また円に両替して出金する際、為替状況によって利益または損失が発生する可能性がある点にも注意が必要です。
変額保険は、払い込んだ保険料が投資信託や株式などで運用され、その運用成績によって保険金や解約返戻金の額が変動する保険商品です。通常、死亡保険金と高度障害保険金は、契約時に設定した「基本保険金額」が保証されるため、万一の死亡保障と将来に向けた投資(資産形成)を兼ね備えられるメリットがあります。
ただし、運用成果によっては解約返戻金が元本を下回る可能性があり、さらに「保険」と「運用」の両方に手数料がかかるため、コスト面も考慮する必要があります。
投資をする際には、NISAやiDeCoを活用することで、効率的に資産を増やすことができます。それぞれの制度で投資できる金融商品や投資上限額、投資の仕方などのルールが決められていますが、投資目的に合わせてうまく活用すれば得られた利益が非課税になり、より効率的な資産形成が期待できます。
NISAは運用期間に制限がなく、必要なタイミングで資金を活用できるため、ライフプランに応じた資産形成に向いています。対してiDeCoは原則60歳まで引き出しができないため、老後資金を確実に準備したい人におすすめです。また、掛金が所得控除の対象となるため、節税効果も期待できます。
投資には元本割れのリスクもありますが、資産の成長やインフレ対策の観点から見ると、効率的な資産形成に役立ちます。自分の投資目的やリスク許容度に応じて金融商品を選び、分散投資などのリスク管理を行えば投機的なギャンブルとは異なり、安定した資産増加に期待できるでしょう。
資産形成に投資が必要かどうかは、自分で判断するものです。まずは少額から実際に投資に取り組み、リスクとリターンの関係を体感しながら、無理のない範囲で続けてみてはいかがでしょうか。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
文・續恵美子(CFP)