共働きで収入源が2つあることはメリットがある一方、お金の出入りが複雑になることもあります。各自が自身の収入・支出のみを管理していると、世帯全体の収支を把握しにくくなるといった課題が生じます。これが把握できていないと、人任せになったり、将来必要となる資金をどちらか一方あるいは双方が使ってしまったりしがちです。そこで、忙しい共働き夫婦が簡単に家計や資産を把握できる方法をお伝えします。
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まずは、世帯の手取り年収を把握しましょう。給与(賞与)明細や源泉徴収票などを見せ合うようとよいですね。また、ボーナス以外の助成金の給付や税金の還付などの特別収入も確認したいところです。これらをすべて合算した金額が家計に入ってくるお金になります。
次に支出の把握をします。まずは、金額が大きな特別支出を洗い出しましょう。特別支出とは不定期に発生する支出のことです。たとえば、税金の支払い(固定資産税、自動車税)、冠婚葬祭費用、お中元・お歳暮、帰省費、旅行費、スーツなどの購入費、家電や家具の買い換え費などです。これらの特別支出を通常支出(レギュラーな家計支出)と一緒にすると毎月の支出の変動幅が大きくなってしまいます。そこで、あらかじめ1年間で想定される特別支出を予定し、必要なお金をプールしておくと安心です。
収入から特別支出や貯金・貯蓄型保険などを引いた金額が通常支出にまわせるお金です。貯まらない家計では通常支出から先に使うために、貯金ができず、イレギュラーな支出が発生した場合に対応できなくなってしまいます。貯めるためには、予備費(特別支出に充てるお金)と貯金を先取りしておきましょう。
通常の家計支出はできれば一つの口座で管理することをお勧めします。「子育て費用は妻」、「家賃は夫」のように支出項目ごとに役割分担をすると全体の把握がしにくくなり、新しい支出が発生した際に負担を巡ってもめる原因となることもあるからです。一つの口座ですべての家計支出をまとめてしまえば、通帳を家計簿代わりにすることもできます。固定費などを銀行引き落としにしておけば、家賃が18万円、通信費が3万円、電気代が1.5万円、現金支出が10万円など通帳を見ればパッと分かるからです。日本では共同名義人のジョイントアカウントはないので夫婦のうちどちらかの名義の銀行口座にはなりますが、1カ月の共通の家計支出を支払う口座を決めましょう。家計に入れるお金の割合は、それぞれの収入により負担割合を決めてもよいでしょう。たとえば夫の月の手取りが30万円、妻が20万円なら、3対2の割合で負担をするといった形です。
予備費、貯金、共通の家計支出を支払った後で残ったお金はそれぞれが自由に使ってもよいでしょう。家計の大きな流れは二人で把握したほうがよいですが、細かなプライベートな部分は自由度を残しておかないと息がつまってしまうこともあるからです。
共働き夫婦の賢い資産形成においては、資産運用の目標を二人で共有することが重要です。一般に資産運用は目標を設定することから始まります。「なぜ資産運用を行うのか」「今ある資産をどうしたいのか」「どれくらいの期間行うのか」といった目標を具体的に設定することが重要です。また、マーケットが大きく下落した際にどのような行動を取るか、どれくらいの割合を資産運用に回すか、定期的な見直しのタイミング、といったリスク管理についても話し合いましょう。
ファイナンシャル・プランナーは顧客のライフプランニングを立てます。一人一人の家計の現状を整理、把握をします。いつ、お金が必要になるのかによって運用期間や目標に設定するリターンなどが変わってきます。
世界のファミリーオフィス(資産が一定額以上の富裕層を対象に資産管理および運用サービスを提供する組織)でも、資産運用をスタートする前に、顧客の資産状況やビジネスや家族構成を理解し、投資期間や目的をヒアリングし、リスク許容度診断を必ず行います。
こうした作業を行っておくことで価格の変動に一喜一憂せずにどっしりとしたスタンスで長期投資を行うことができます。また、目標が共有できていれば資産運用で意見の相違や争いごとなどのトラブルを避けることができます。また、資産の置き場を一覧表にするなどし、万一の際に家族が対応できるようにしておきましょう。
NISAやiDeCoなどの税制優遇制度も活用できそうなら利用を検討しましょう。しかし、必ずしも利用しなければならないわけではありません。全体の資産のうちの一部で優遇制度を考えるという位置付けとして捉えましょう。
忙しい共働き夫婦にとっては、1円2円の細かな数字の把握よりも、重要なポイントを押さえることが大切です。「木を見て森を見ず」とならないよう、全体像を把握することから始めましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
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