28歳でFIREした投資家が考える、早期リタイアの「現実」と「最短ルート」

そもそもFIREとは? 早期リタイアを希望する理由

FIREとは(Financial Independence Retire Early)の略で、「経済的自立を確立して、早期退職を実現しよう」という、アメリカで始まったムーブメントです。

日本では2020年のコロナ禍をきっかけに、在宅ワークや外出自粛が広がり、多くの人が自分の生活を見直すようになりました。その中で「リモートワーク」や「自由な生き方」が注目されるようになり、FIREや早期リタイアといった考え方も広まりました。

FIREをしたいと思う人々の背景には、日本の長時間労働や年功序列によるゆるやかな昇給、そして仕事にやりがいを感じにくいという状況があります。さらに、今の職場で感じるストレスから抜け出したいという思いも、FIREを目指す人が増えている理由のひとつです。

FIREを実現するための条件は…?

FIREを実現するには「経済的に自立していること」が欠かせません。特に早期リタイアをした場合、会社からの給料といった安定した収入はなくなります。そのため、誰かに頼るのではなく、自分で収入源を確保する必要があります。会社に依存しない収入源としては、副業などで得られる事業所得や、投資によって得られる資産所得などが代表的です。

NISAなどでよく利用されているインデックス投資の利回りは、一般的に相場が上昇している場合で年3〜7%ほどとされています。相場環境によっては必ずしても上昇するだけではないので慎重に考えなければいけなせんが、仮定として年3〜4%の利回りを見込み、その運用益だけで生活費をまかなえる状態になれば、FIREを達成した状態に近いといえるでしょう。

FIREを目指すうえで大切なのが、「自分にとっていくらの資産が必要か」を具体的にイメージすることです。

たとえば毎月の生活費が20万円の人の場合、年間では240万円が必要になります。この生活費を利回り4%でまかなうと仮定すると、必要な資産額は6,000万円です。 一方、利回り3%で運用する場合は、8,000万円の資産が必要になります。

このように、想定する利回りや生活費の水準によって、FIREに必要な資産額は大きく変わってきます。

また、完全リタイアではなく、月に10万円の事業所得などが得られる「SideFIRE(サイドFIRE)」の形であれば、生活費の一部を自力で補えるため、必要な資産額は半分の3,000万円(利回り4%運用)まで減らすことも可能です。

FIREへの道をショートカットする秘訣

FIREを実現するには、生活費を上回る「給料以外の収入源」を持つことが欠かせません。しかし、生活費をすべて資産運用でまかなえるだけの資産を築くのは、簡単ではありません。そのため、FIREへの道をショートカットするには、「必要な資産額を減らす工夫」が効果的です。

なかでも有効なのが、生活費を見直して支出を抑えることです。日々の出費を抑えれば、その分必要な資産額も少なく済み、FIREのハードルが下がります。

たとえば、毎月の生活費が20万円(年間240万円)の場合、利回り4%で運用するには6,000万円の資産が必要になります。しかし、生活費を見直して月15万円(年間180万円)に抑えられれば、目標資産額は4,500万円となり、実に1,500万円もの削減が可能です。

生活費の削減は、FIREの達成において非常に効果的な方法です。支出が減れば必要な資産額が下がるだけでなく、浮いたお金を投資に回せるため、資産形成のペースも加速します。その結果、生活費を抑えることは、資産目標を下げるだけでなく、資産形成のスピードも高められるため、FIREの実現がぐっと近づきます。つまり生活費を抑えることは、「必要な資産額を減らせる」と「投資に回せる資金が増える」という一石二鳥の効果が期待できるアプローチといえるでしょう。

実際に私自身も、28歳のときに早期リタイアを経験しています。その当時は生活費を徹底的に見直し、毎月わずか51,000円で生活していた時期もありました。社宅で住居費が8,000円に抑えられていたとはいえ、残りの食費や娯楽費などを含めた生活費は約43,000円でやりくりしていたことになります。

生活費を抑える以外にも、FIREへの道をショートカットする方法があります。給料以外の収入源をつくることです。

私の場合は、YouTubeやせどりなどの副業から収入を得ていました。副業のメリットは大きく、毎月の入金力を高められるだけでなく、FIRE後の生活でも資産収入だけに頼らずに済むため、必要な資産額を大きく減らすことができます。

さらに、実際にFIREを経験した立場から言えるのは、個人でビジネスを持っていると、FIRE後の生活にも充実感が生まれるということです。収入だけでなく「やりがい」や「仕事を通じた仲間とのつながり」といった、人生を豊かにする要素にもつながると実感しました。

資産運用だけでもギリギリ可能?シミュレーション

私の場合、FIREまでの道のりをYouTubeなどの副業によって大きく短縮できました。しかし中には、「副業はハードルが高い」「資産運用だけでFIREを目指したい」と考える会社員の方もいらっしゃるでしょう。

はたして、会社員の給料だけでFIREは実現可能なのでしょうか?

たとえば、毎月10万円を年利5%で積み立てた場合、25年後には約5,955万円、30年後には約8,323万円の資産を築くことができます。このうち、6,000万円を利回り4%で運用できれば、年間240万円(月20万円)の所得が得られます。さらに約8,300万円あれば、月あたり約27万6,000円の所得を得ることも可能です。

【毎月10万円を年利5%で積み立てた場合 25年後のシミュレーション】

引用:積立シミュレーター・金融庁

【毎月10万円を年利5%で積み立てた場合 30年後のシミュレーション】

引用:積立シミュレーター・金融庁

つまり、25歳から投資を始めれば、50〜55歳頃にはFIREが現実的なものとなる計算です。先述のように生活費を抑えたり、副業を始めたりすることで、FIREまでの期間をさらに短縮することもできるでしょう。

FIREの難易度が上昇しているって本当?

ここまで記事を読み進めてきた方にとって、FIREは「仕事のストレスから解放され、自由な生活を手に入れられる」という点で、非常に魅力的に映っているかもしれません。

しかし私自身は、FIREを達成する難易度は年々上昇していると感じています。

FIREの難易度が上がっている理由としては、いくつかの要因が考えられます。まず、税金や社会保険料の負担が年々増加しており、手取り収入が減っていること。次に、インフレの影響で生活費が上昇しており、FIRE達成に必要な資産額も膨らんでいることが挙げられます。

また、副業の面でも環境は変化しています。インボイス制度の導入により副業による益税メリットが薄れたことや、初心者の参入が増えて手軽な副業がレッドオーシャン化していることなど、かつてよりも利益を出しづらくなっていると感じます。少なくとも、私がYouTubeを始めた2019年と比べると、副業によって得られる収益の旨みは減少しているといえるでしょう。

また、増税による手取りの収入の悪化の流れは、少子高齢化や経済構造の変化により、今後も続いていく可能性が高いと考えています。そのため、FIREのハードルはこれからますます高くなっていくかもしれません。

とはいえ、FIREを目指すことそのものは、生活を見直したり、将来の不安に備えたりするうえで非常に有効なアクションです。たとえ完全なFIREに至らなかったとしても、そこへ向かう過程で得られる「自由度」や「選択肢の広がり」は、人生を豊かにしてくれるはずです。FIREするかどうかはさておき、まずは自分の達成したい状況を描き、そこに至る必要なお金を計算するところから考えてみてはどうでしょうか。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。


ぽんちよ【投資&お金の勉強YouTuber】
20代の投資家。経済的自由とセミリタイアを目標に、日本株や米国株、つみたてNISA、iDeCoなど、幅広い金融商品へ投資を行っている。特に「高配当株を権利確定前に売却する」という独自の手法を実践。投資の源泉は、家計簿を駆使した徹底的な節約と、YouTube、ブログ、せどりといった副業への挑戦。現在は地方でのびのびと働きながら、自身の経験を元に投資初心者向けの解説や、お金、副業に関する情報を発信している。

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