「老後資金が2,000万円足りなくなる」という金融庁による衝撃のレポートが物議を醸しましたが、いまや世間の関心はすっかり薄れている様子です。しかし老後資金に関しては問題が解決されたわけではありません。iDeCoやつみたてNISAといった公的な制度を活用して少しでも早くから備え始めたいところですが、どちらを優先すべきなのでしょうか。
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公的年金だけでは不安な人が任意で加入するのがiDeCo
iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称で、国民年金や厚生年金などとは違い、自分自身の意思で任意加入する制度です。公的年金だけでは不安な部分をカバーする目的で加入します。提示されている金融商品のラインアップ(定期預金や投資信託)の中から希望のものを選択すると、自分が払った毎月の掛け金が運用されていくという制度です。
積み立てていったお金は原則として60歳以降に受け取るようになっていますが、その総額は選んだ金融商品の運用状況次第で異なってきます。掛金は所得から控除できるので、それだけ所得税が安くなりますし、運用によって得られた利益にも税金が課されません。さらに、受け取る際にも「公的年金等控除」や「退職所得控除」の対象となるので、税負担が抑えられます。
年間40万円、最長20年間の投資で得た利益が非課税になる「つみたてNISA」
一方、つみたてNISAは「少額投資非課税制度」の一種で、年間40万円まで、最長20年間にわたる積立投資で得られた利益に一切税金がかからないというものです。つまり、月々にすると約1.8万円ずつの積立投資となるわけで、その運用対象となるのは、金融庁が定めた基準を満たした投資信託です。
当初、つみたてNISAは2037年までの時限措置で、以降は積立期間がまだ20年に達していない場合でも利用打ち切りになっていました。しかし2019年12月、自由民主党・公明党が「令和2年度税制改正大綱」を公表し、2042年までその期限が延長されることが見込まれています。
「令和2年度税制改正大綱」では、60~64歳の厚生年金被保険者および国民年金任意加入被保険者も、iDeCoへ加入できるように制度改正を行うことを認めています。現行制度では60歳までですが、こちらも延長になる見込みです。
老後資金以外にも使う可能性があるなら、とりあえずはつみたてNISAから
では結局のところ、どちらを優先するのがベターなのでしょうか。老後のための資金作りに限定し、決して他のことには使わないということなら、税制上のメリットも大きいiDeCoを優先するのがよいでしょう。
ただし先に述べたように、iDeCoは原則として60歳まで換金できません。「老後のことが不安で積立投資を始めたいものの、お金が必要になったら引き出すかもしれない」という場合は、ひとまずつみたてNISAを選択し、資金的余裕が出てきたタイミングでiDeCoも併用、そちらは老後の資金専用として位置づけるという手もあるのではないでしょうか。
毎月使える投資資金は60歳まで使わなくてよいものかどうか。iDeCoとつみたてNISAの検討はここから始めてみましょう。