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退職金はいつ頃支払われる?確定拠出年金で代用できるかも解説

会社を辞めた場合、退職金はいつ頃支払われるのでしょうか。退職金はその後の生活資金や投資資金に充てられるため、支給時期が重要な問題になることもあります。本記事では退職金が支払われるタイミングや確認方法に加えて、確定拠出年金で代用できるかについても解説します。

退職金がもらえない場合は確定拠出年金が代わりになることも

勤務先で退職金がもらえない場合は、確定拠出年金で代用できる可能性があります。

企業年金として導入される企業型DC(確定拠出年金の一種)は、勤務先の会社が拠出した掛金を使って、投資信託などの金融商品を運用できる制度です。受給方法としては年金形式のほか、積みたてた資産を一度に受けとる一時金も用意されているため、運用状況によっては退職時にまとまった資産を受けとれます。

企業型DCが実施されていない場合は、個人型のiDeCoに加入することも可能です。個人で掛金を拠出する場合は、その全額が所得控除の対象になるため、毎年の所得税や住民税を抑える効果が期待できます。

ただし、金融商品の運用に失敗すると、将来の支給金額が減ってしまうリスクもあります。特に元本変動型の商品(投資信託)で運用する人は、各ファンドの特性をきちんと調べておきましょう。

退職金制度のタイプ

退職金制度は主に4つのタイプに分かれます。

退職一時金制度

退職時に一括で受けとるタイプが「退職一時金制度」です。一般的にイメージされている退職金制度といえるでしょう。多くの企業がこの制度を導入しています。一括で支払われる退職金には、「退職所得控除」が適用されるため、次項で解説する退職年金制度に比べ、課税額を抑えられる可能性が高いことがメリットです。

退職年金制度

退職後に分割で受けとるタイプが「退職年金制度」です。支払われる期間は企業により異なり、一時金制度と併用している企業もあります。退職後の年間収入が増えるため、所得税や社会保険料が高くなるケースもあるでしょう。

なお、企業によっては、社外で運用できる「確定拠出年金制度」を導入している場合もあります。確定拠出年金は、転職先に資産を移せることや、倒産による退職金カットのリスクを回避できることがメリットです。

中小企業退職金共済制度

省略して「中退共」とも呼ばれる、退職金を積みたてるための共済制度です。中小企業を対象としており、2022年8月末時点では37万以上の事業所が加入しています。

中小企業退職金共済では国から支援を受けることができ、加入後4ヵ月目からの1年間にわたって掛金の2分の1(※上限5,000円)を助成してもらえます。また、パートなどの短時間労働者の場合は、これに加えて300~500円が上乗せして助成されます。

さらに掛金の損金計上も認められる制度ですが(※個人事業主の場合は経費)、加入や助成には要件が設けられています。たとえば、同居する親族のみを雇用する事業主などは助成の対象外となるため、加入前には要件をしっかりと確認しておきましょう。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度

社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、社会福祉施設や特定介護保険施設などを対象にした共済制度です。従業員1人あたり年額44,500円の掛金(※2022年度)を拠出すると、勤務期間に応じた退職金が支給されます。

財源には国・都道府県による補助金も含まれており、2020年度には約1,157億円の退職金を支給しました。社会福祉法人であれば原則として加入できますが、公費補助が適用されない事業所(特定介護保険施設等)もあるので注意しましょう。

確定拠出年金とは?退職金の代わりになる?

退職年金制度に含まれる確定拠出年金は、事前に決めた掛金を毎月拠出し、積みたてた資産で金融商品を運用する制度です。原則60歳以上になると、掛金に運用益を含めた資産が一時金または年金形式で支払われます。

そのため、金融商品の運用状況によっては退職金の代わりになることもあるでしょう。たとえば、入社後の23歳から65歳まで毎月2万円を拠出すると、定年退職を迎えるころには約1,000万円の資産を積みたてられます。ただし、投資先の金融商品が値下がりした場合は、支給金額が減ることもあるので注意してください。

確定拠出年金には、企業が掛金を拠出する「企業型DC」と、個人で加入する「iDeCo」の2種類があります。まずは勤務先の就業規則や退職金規定などから、企業型DCの有無を確認してみましょう。

もし実施されていない場合は、個人でiDeCoに加入する方法も選択肢になります。

退職金と確定拠出年金(企業型DC)の違い

一般的な退職一時金と企業型DCには、どのような違いがあるのでしょうか。参考として、以下の表では両制度の主な違いをまとめました。

主な違い 退職一時金 企業型DC
個人での積みたて 不可 マッチング拠出があれば可能
金融商品の運用 不可 可(投資信託や定期預金など)
適用される控除 退職所得控除 一時金:退職所得控除
年金:公的年金等控除
支給金額が減るリスク あり(業績悪化による支給停止など) あり(金融商品の値下がりによる損失など)

退職金は企業ごとに計算方法が決められているため、基本的には想定以上の金額は受けとれません。一方で、企業型DCには個人で掛金を上乗せできる「マッチング拠出」と呼ばれる制度があり、さらに金融商品の運用もできるため、加入者によって将来の支給金額が変動します。

退職金はいつもらえる?

状況によって退職金を受けとれる時期が変化します。

一般的には退職後2ヵ月以内

退職金が支払われる時期は、一般的に退職後から1~2ヵ月以内です。ただし、退社時期や退職者の状況などにより、受けとる時期が遅くなることもあるでしょう。なお、中小企業退職金共済制度(中退共)に加入している企業の場合、原則として退職金の請求から約4週間で支払われます。中退共は、掛金の一部を国に助成してもらえることや、管理が簡単であること、掛金が全額非課税になることなどがメリットとされる制度です。

退社時期などにより変わることも

同じ企業を退職しても、時期により退職金を受けとるタイミングが数ヵ月先になることもあります。たとえば、ある時期に退職者が集中した場合、経理の請求業務が忙しくなり支払い時期が遅くなることもあるでしょう。

通常、退職者は年度末である3月に多くなる傾向があります。退職金の計算をしやすいことがその理由です。中退共などの外部機構を利用している場合でも、3月の退職者が多いことで、4~8月は支払いまでの期間が長くなるでしょう。

振り込まれる時期を早めることはできるのか

退職金は原則として、就業規則等に則った形で支給されます。そのため、支給時期が明確に記載されている場合は、振り込まれるタイミングを早めることは難しいと考えられます。

なお、就業規則等に特段の定めがないケースでは、退職金が労働基準法の賃金として認められる場合に限って請求ができます。仮に従業員から請求を受けたら、企業側は7日以内に退職金を含む賃金を振り込まなければなりません。

中小企業退職金共済制度の場合は?

通常、中小企業退職金共済制度の退職金は請求から約4週間で支給されます。ただし、退職までの掛金の確認がとれてから支給される形となるため、事業所の納付方法によっては2ヵ月以上かかるケースもあります。

中小企業退職金共済制度では支給の準備が完了すると、請求人(退職者)に「退職金等振込通知書」が発送されます(※支給時期の約2週間前)。事業主にも同様の通知が届くため、振込予定日が決まらない場合は勤務先に確認をしてみましょう。

なお、退職金は「退職金(解約手当金)請求書」に記載された預金口座に振り込まれます。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度の場合は?

通常、社会福祉施設職員等退職手当共済制度では請求から約3ヵ月で退職金を受けとれます。ただし、3月末の退職者が多い影響で、毎年4~8月にかけては支給が遅れることもあるため、この時期に退職を予定している人は早めに手続きを済ませましょう。

なお、提出した請求書に不備があった場合は、請求人(退職者)に照会の連絡が届きます。

退職金をいつもらえるか知る方法

主に2つ方法があります。

方法1. 会社の就業規則を確認

一般的に、退職金の支払い時期は、会社の就業規則に記載されています。就業規則とは、常勤従業員が10人以上いる企業に作成が義務づけられている規則集です。就業規則を作成し、労働基準監督署へ届けでた後は、社内で閲覧できる就業規則も作成し、従業員へ周知を図らなければならないとされています。どこにあるのかわからない場合は、会社に確認してみましょう。

方法2. 担当者に聞く

退職金の支払い時期を確認する方法としては、担当者に聞くのもよいでしょう。退職金に関する業務に直接携わっているスタッフなら、より具体的な時期を教えてもらえるはずです。通常、退職金に関する業務は、企業内の人事部または労務部が担当しています。外部機構の制度を利用している場合でも、請求するのはこれらの担当部署です。

中小企業退職金共済制度の場合

中小企業退職金共済では、振込予定日の約2週間前に届く「退職金等振込通知書(請求人宛て)」または「退職金等支払のお知らせ(事業主宛て)」で支給時期を確認できます。数ヵ月経ってもこれらの書類が届かない場合は、相談窓口へ問い合わせてみましょう。

電話での問い合わせも可能で、直接の相談したい場合(面会・訪問)は、「東京・名古屋・大阪」の3都市で窓口が用意されています。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度の場合

社会福祉施設職員等退職手当共済制度にも、専用の問い合わせナビダイヤル(平日9時~17時)が用意されています。毎年4~6月は18時まで対応していますが、繁忙期の影響で回線がつながりにくいため、早めの相談を心がけましょう。

なお、ナビダイヤルでは退職金の支給時期のほか、書類の作成や提出、契約に関することなども相談できます。

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振り込まれない時の対処法

退職金がいつまでたっても振り込まれない場合、しっかりと行動する必要があります。

まずは勤務先へ確認を

退職金の支払い時期は、退職してから通常1~2ヵ月であり、どんなに遅くとも半年以内には指定口座へ振り込まれます。退職後、半年を過ぎても入金がないようなら、まずは元勤務先へ連絡してみましょう。

元の職場へ直接連絡するのが嫌な場合や、連絡を入れても対応が遅い場合は、行政書士や弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の送付など然るべき手続きで請求してもらえます。

遅すぎる場合は労基署に相談

退職金に関する事項が就業規則に記載されていながら、期限を大幅に過ぎても退職金が支払われない場合は、企業側が就業規則違反に問われる可能性があります。就業規則の提出先である労働基準監督署に相談してみましょう。また、再三の催促や請求を無視し続けるようなケースでは、不法行為や債務不履行による損害賠償を請求できる可能性もあります。このような場合は、弁護士への相談が適切です。

なお、労働基準法により、退職金の請求権は、5年で時効を迎えることが定められています。退職日から5年以上経過している場合、元勤務先への退職金請求はできないことに注意しましょう。ちなみに、退職金以外の賃金や災害補償の時効は2年です。

退職金の計算方法

退職金の計算方法は、勤務先が導入している制度によって変わります。ここからは主な制度に分けて、退職金の計算方法についてご紹介します。

会社から支給される退職金

退職金の計算方法は各企業が独自に決めており、代表的なものとしては勤続年数に比例する「定額制」や、退職時の基本給まで考慮した「基本給連動型」などがあります。そのほか、勤続年数や役職をポイントに換算した「ポイント制」や、基本給を考慮しない「別テーブル制」を採用する企業も見られます。

そのため、会社から支給される退職金を同じ式で計算することはできません。支給金額が気になる場合は、勤務先の退職金規定などを確認してみましょう。

確定拠出年金

確定拠出年金の支給金額は、掛金の総額と金融商品の運用益を合計したものになります。金融商品の運用で損失がでている場合は、掛金の総額から損失分を差し引きます。

なお、企業型DCの掛金については、原則として勤務先の企業が拠出額を決定します。退職金の支給総額が不足している人は、マッチング拠出やiDeCoの利用も検討してみましょう。

中小企業退職金共済制度

中退共の支給金額は、掛金月額と納付月数で決まる「基本退職金」と、剰余金の状況などに応じて決められる「付加退職金」を合計した金額になります。付加退職金の料率は年度ごとに設定されるため、加入するタイミングによって支給金額が変わることもあります。

また、中退共は制度全体として1.0%の利回りで設計されているため、加入期間が長いほど支給金額の増加幅が大きくなります。

社会福祉施設職員等退職手当共済制度

社会福祉施設職員等退職手当共済制度の支給金額は、加入月数や計算基礎額(退職前6ヵ月の平均本俸月額)、退職理由によって決まります。退職理由には「普通退職」と「業務上死亡・傷病」の2つがあり、業務上死亡・傷病が適用される場合は支給金額が加算されます。

普通退職をした場合の大まかな支給金額は、以下の通りです。

<支給金額の例>
5年間勤務、計算基礎額20万円:49万5,900円
10年間勤務、計算基礎額22万円:114万8,400円
15年間勤務、計算基礎額26万円:269万7,000円
20年間勤務、計算基礎額28万円:572万4,600円

なお、1ヵ月あたりの出勤数が10日以下を下回る月は、本制度の加入月数から除外されます。

退職金はいつから発生するのか?

退職金の受給に必要な勤続年数は、勤務先の就業規則等によって異なります。

退職金の受給に必要な最低勤続年数の企業数割合
最低勤続年数 1年未満 1年~2年未満 2年~3年未満 3年~4年未満 4年~5年未満 5年以上
会社都合での退職 8.5% 21.8% 8.7% 42.2% 1.1% 9.3%
自己都合での退職 3.2% 15.0% 9.7% 56.2% 1.6% 10.9%

(参考:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」

厚生労働省のデータを見ると、約半数の企業は勤続年数3年から退職金を支給しています。ただし、1年以上の勤続で受けとれるケースもあるため、退職金の有無は勤続年数に関わらず確認をとりましょう。

いつ税金を支払うことになるのか?

一般的なサラリーマンの場合、退職金に対する所得税は源泉徴収によって納付されます。支給する企業側が源泉徴収を行い、翌月10日までに納付する形となるため、退職者側で所得税を納める必要はありません(※復興特別所得税を含む)。

ただし、住民税は源泉徴収の対象ではないため、普通徴収によって退職者自身が支払うことになります(原則翌月10日まで)。納付忘れが不安な場合は、勤務先に依頼をして給与から差し引く一括特別徴収をしてもらいましょう。

なお、退職金の課税対象は退職所得控除を差し引いた金額となるため、事前に計算しておくことが大切です。

支払い時期を確認し資産運用に役立てよう

ある程度まとまった金額であるケースが多い退職金を、資産運用のための投資に使おうと考えている人も多いでしょう。投資信託・株式・不動産投資など、増やせる方法は数多く存在します。

退職金は、会社側の裁量が大きい制度です。確実に退職金を受けとれるよう、勤務先の就業規則などでもらえる時期を確認し、支払われない場合はプロに依頼しての請求も視野に入れましょう。

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