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中小企業は大手より退職金が少ない-老後の不安を解消する対策とは

年功序列、終身雇用といった時代においては、定年でまとまった退職金をもらうのが一般的でした。しかし現代は、このシステムが崩れつつあり退職金がもらえない企業も少なくありません。特に中小企業の場合は、顕著です。それでは、中小企業に勤務する人はどのように老後の不安を解消すればよいのでしょうか。

老後資金を貯める一助となるのがiDeCoやNISAといった制度の活用です。そこで本記事では、近年の中小企業の退職金事情を解説しつつ、退職金が少なかった場合の対処法について解説します。

法律上、退職金は雇用側に支払いの義務がない

全ての法人事業所と常時従業員を5人以上雇用している個人事業所は、社会保険や雇用保険への加入が法律で義務づけられています。ところが、退職金制度にはそういった法的な根拠がなくもらえるのが当然ではありません。法律上、企業は退職金制度を導入する義務がなく、あくまで個々に任意で設けているものなのです。

同制度がない企業では、定年を迎えても退職金が支払われません。支払いの義務が生じるのは、あくまで退職金制度を導入している企業です。導入企業は、就業規則などに退職金に関する規程を定め、支給対象者や勤続年数を明確化にしています。ただし、「支給対象を正社員だけに限定するのか」「契約社員やパート、アルバイトにまで広げるのか」は、個別の企業の判断次第です。

ご自身が務めている会社の退職金制度についてきちんと把握できていない人は、就業規則を改めて確認しておいたほうがいいでしょう。一般的に「退職金=定年時に支給されるまとまったお金」というイメージを持っている人が多いかもしれません。しかし、退職金制度には、大きく分けると「退職一時金」「企業年金」の2種類あります。

・退職一時金:定年時や中途退職時に一括で支給されるもの
・企業年金:一定期間にわたって分割で支給され公的年金を補てんする役割

世間で認知度が高い退職金は、前者です。退職時、勤続年数に応じたまとまった金額が支給されます。

中小企業の退職金は大手企業に比べて1,000万円も少ない

ここからは、退職金制度の実態についてクローズアップしていきます。

おそらく多くの人たちが特に気になっているのは「どの程度の金額が支給されているのか」ということではないでしょうか。厚生労働省が資本金5億円以上で従業員数が1,000人以上の大企業に実施した「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」によると2020年の定年退職金の平均支給額は1,872万9,000円でした。

学歴・勤続年数別に見ると以下の違いがあります。

勤続年数 大学卒 高校卒
勤続35年 1,903万3,000円 1,745万7,000円
卒業から定年まで 2,230万4,000円 2,017万6,000円

もっとも、日本国内の企業数において全体の約99.7%を占めるのが中小企業となるため、この2,000万円台という退職金の平均値は世間の実情とマッチしていない可能性が考えられます。

果たして、中小企業における支給額はどの程度なのでしょうか。東京都産業労働局では、都内にある従業員数10~299人の企業を対象に「中小企業の賃金・退職事情」という調査を実施しています。

退職金については、隔年で調べており2022年7月現時点の最新データが「令和2年版」です。同調査によると、定年まで勤務した場合の学歴別の退職金の目安は以下のようになっています。

【モデル退職金】

勤続年数 大学卒 高校卒
卒業から定年まで 1,118万9,000円 1,031万4,000円

先述した厚生労働省の調査と比較すると大企業と中小企業では、大学卒・高校卒のどちらも支給額に1,000万円前後の差があることになります。つまり学歴の違いもさることながら企業規模によっても退職金の金額がかなり違ってくるということです。

退職金制度がない大手企業は15%弱だが、中小企業は3割弱に達する

大企業と比べて中小企業は、退職金の支給額が少ないばかりか、制度自体が未導入のケースも珍しくありません。その事実を裏づけるのが厚生労働省の「就労条件総合調査」で、4~5年ごとに民間企業の退職金制度についてリサーチしています。

「平成30年就労条件総合調査」によると、2018年における企業規模別の退職金制度導入状況は以下の通りです。

企業規模 導入している割合 未導入の割合
従業員1,000人以上 92.3% 7.7%
300~999人 91.8% 8.2%
100~299人 84.9% 15.1%
30~99人 77.6% 22.4%

企業規模が小さくなるにつれて未導入のケースが増えていることが分かります。こうした結果から大企業と比べて中小企業では、退職金制度の導入が進んでいないといえるでしょう。「30~99人の企業でも8割弱が導入している」と受け止める人もいるかもしれません。しかし、先述したように大企業と比べて支給額が大幅に少ないのが現実です。

次でフォーカスを当てる企業年金制度においても大企業と中小企業の間に格差が生じています。

退職一時金をもらえる中小企業でも、企業年金制度はないケースが多い

退職一時金を支給している中小企業でも企業年金制度まで導入する余裕のない会社が多い傾向です。厚生労働省の「就労条件総合調査(平成30年版)」によると、従業員1,000人以上の大企業で退職一時金制度のみの導入は、全体の27.6%にすぎず企業年金のみの導入も24.8%で47.6%が両制度を併用していました。各企業規模の導入状況は、以下の通りです。

企業規模 退職一時金制度のみ 企業年金のみ 両制度併用
従業員1,000人以上 27.6% 24.8% 47.6%
300~999人 44.4% 18.1% 37.5%
100~299人 63.4% 12.5% 24.1%
30~99人 82.1% 5.4% 12.5%

従業員数30~99人の企業で退職一時金制度のみの導入は、全体の82.1%で企業年金制度のみは5.4%、両制度併用は12.5%です。明らかに中小企業の間では、企業年金の導入が進んでいないことが分かります。これらの背景には、従来の企業年金が中小企業にとって負担の重いことが関係しているでしょう。従来タイプは確定給付型と呼ばれ、あらかじめ確定された金額の給付を保障する仕組みです。

掛け金の運用は、外部(金融機関)への委託で実施します。企業側は、運用の成果が芳しくなくても約束した金額を給付する責任を追わなければなりません。日本では超低金利が長期化する一方で、高齢化社会の進展とともに年金を受け取る世代と掛け金を負担する現役世代との人口バランスが崩れてきています。

そのため、大企業でさえ「確定給付型」の制度維持には苦労している状態です。中小企業が導入に二の足を踏むことは当然といえるかもしれません。そこで2001年から導入されたのが「確定拠出型」と呼ばれる企業年金制度(企業型確定拠出年金=DC)です。確定しているのは企業側が支払う(拠出する)掛け金の金額で、将来の給付額は従業員自らが選んだ金融商品の運用成果次第で増減する仕組みです。

つまり企業側は、掛け金を負担するだけで良く、運用上のリスクについては個々の従業員が負うことになります。確定給付型年金制度よりも企業負担が軽くなったことで導入する企業は増加傾向です。実際に企業型確定拠出年金を導入する企業の数は、右肩上がりで増えており2011年3月末に約371万人だった加入者数は2021年3月末で約750万人にまで拡大しています。

(出典:厚生労働省

しかし、企業型確定拠出年金の導入をためらう中小企業も少なくありません。導入企業の多くを占めているのは大企業で、中小企業は極少数派となっているのが現状です。

退職金が少ない場合の対処法

2019年6月に金融庁が公表した「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」の中で公的資金だけでは老後資金が約2,000万円不足することが明らかとなり、物議を醸し大騒ぎとなりました。少子高齢化が進行していく中で多くの人たちが「公的年金には過大な期待を寄せられない」と思っていただけに強烈な反響を招いたといえます。

やや「2,000万円不足」という金額ばかりが一人歩きしてしまった印象が強いです。ただ、今の現役世代が公的年金だけで老後資金をまかなうことは心もとないでしょう。ここまで見てきたように、くしくも大企業では平均額で2,000万円台の退職金が支給されます。しかし、中小企業の平均額はその半分程度にすぎません。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で老後資金を補う

企業負担が少なくなった企業型確定拠出年金でさえ導入していないケースが主流となるため、個々の従業員の自助努力が求められています。国もこうした状況を重く見ており、中小企業で働く人たちの老後生活を支えるために「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の制度拡充を進めてきました。その名の通りiDeCoは、企業単位で導入するものではなく個人が任意で加入できる「確定拠出型」の私的年金です。

企業型確定拠出年金と同じく自分自身で運用先の金融商品を選び、毎月掛け金を拠出し運用成果次第で将来の支給額が増減する仕組みです。勤務先が「確定給付型」の企業年金を導入していない場合(公務員、私学共済制度の加入者を除く)は、毎月2万3,000円まで掛け金を拠出することができます。掛け金の年間総額は、所得から全額控除できるため、所得税や住民税の負担を抑えることが可能です。

また、運用で得られた利益が非課税となることもiDeCoの大きなメリットで、その分だけ効率の良い資産形成が期待できます。さらに受け取る際には、一時金なら「退職所得控除」、年金なら「公的年金等控除」の対象となるため、税制優遇を活用することが可能です。勤務先に企業年金制度がある人もiDeCoに加入することはできます。

「確定給付型」の企業年金が導入されている場合は、毎月1万2,000円、企業型確定拠出年金のみが導入されている場合は毎月2万円まで掛け金の拠出が可能です。

ただし、iDeCoにはデメリットとして原則60歳になるまで引き出せない制限があったり、元本割れのリスクがあったりします。必ずiDeCoで資産運用を行うリスクを確認した上で活用を検討しましょう。

つみたてNISAで老後資金を補う

少額投資非課税制度の「つみたてNISA」も長期的な資産運用を行う際に有利な制度のひとつです。投資対象は、金融庁が定めた基準を満たす投資信託で毎年最大40万円、20年間で最大800万円(2022年に始めた場合)の新規投資で得られた利益が全て非課税となります。

中小企業で働く人たちは、自社で退職金制度がなかった場合でもiDeCoやつみたてNISAのように有利な制度を徹底的に活用すれば、老後資金を効率良く準備することができます。民法改正に伴い2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられています。NISAは、口座開設する年の1月1日時点で成人の場合に利用できる制度です。

こちらもiDeCoと同様に元本割れのリスクがあります。必ず運用する金融商品のリスクとリターンを確認した上で、つみたてNISAの利用を検討してみましょう。

有利な制度を活用して積立投資を始めよう

法的な義務がない退職金制度は、それなりの規模に達している企業でなければ企業負担が重くなるため、簡単には導入しづらい一面があります。日本全体で99.7%を占める中小企業の間では、退職金制度がないケースが多く導入している場合でも支給額は大企業と比べて見劣りするのが現実です。そのため、現役世代の人たちは老後を見据えて早いうちから資産運用を進める必要があります。

自分の老後のことをなかなか想像しづらいものです。中小企業で働いている人は大企業と比べてかなり不利な状況は明白となるため、何らかの手を打っておく必要性が高いでしょう。

まずは、勤務先の退職金制度を再確認した上で、iDeCoやつみたてNISAの活用を検討してみてはいかがでしょうか。資産運用は、必要性を感じていても「そろそろ始めたほうがいいかもしれない」といった感覚では、なかなか実行に移せないものです。老後の不安は、悩んでいるだけでは解消できないため、思い立ったらまずは少額からスタートしてみましょう。

※本記事は資産運用に関わる基礎知識を解説することを目的としており、資産運用を推奨するものではありません。

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