資産管理や運用の世界における投資とは、お金を増やすことが目的と言えます。しかし近年は、世界的な潮流として、お金=金融資産を増やすことだけが投資の目的ではなくなりつつある傾向です。環境などに配慮した「ESG投資」は注目例の1つです。これは一体どのようなものを指し、なぜ注目されているのでしょうか。本記事では世界でも広がりつつある「ESG投資」について詳しく解説します。
そもそも投資とは、何らかの対象に資金を投じることでリターンを得るための活動です。ほとんどの場合、リスクとリターンは比例しており大きなリスクを許容すればそれだけ大きなリターンも期待されます。その点において投資には一定の戦略性と冷静な判断力が求められます。いわば数字的な発想が求められるわけです。
一方で近年の投資傾向は「自らの資産を増やすことだけを至上」とする以外の要素も押さえておくことが必要です。ESG投資などはまさにそうですが、「自分たちだけでなく社会の問題にも同時に取り組んでいこう」といった姿勢があります。特に環境資源を優先的に享受してきた先進国において求められているため、今後も同様の傾向が続いていくと考えられます。
ESG投資の概要とその意義について詳しくみていきましょう。
ESG投資とは、一般的な投資の判断指標とされる財務情報に加え、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」という3つの要素も考慮していることが特徴です。特に企業経営のサスティナビリティ(持続可能性)を評価する観点から生まれた概念とされています。
ESG投資が推奨されているのは、主に機関投資家です。なかでも巨大な資金を長期間にわたって運用する年金基金などは、市場に与えるインパクトなども考慮しESG投資を行うべき対象として挙げられています。その必要性としては、やはり世界規模での「持続可能性への配慮」が求められているためでしょう。例えば国連が掲げている投資原則(PRI:国連責任投資原則)は、以下の6項目で構成されています。
1.投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む
2.活動的な所有者となり所有方針と所有習慣にESG問題を組み込む
3.投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求める
4.資産運用業界において本原則が受け入れられ実行に移されるよう働きかけを行う
5.本原則を実行する際の効果を高めるために協働する
6.本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告する
出典:経済産業省
日本においては、国民の年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESGを重視した投資を採用するなど、徐々にその規模は拡大傾向です。この流れは機関投資家だけでなく、個人の投資家もESGを意識した投資が求められるかもしれません。少なくとも新たな判断指標の1つになることは間違いなさそうです。
資産管理の一種でもある投資において、今後は個人的な視点だけでなく、より一層社会的な視点が求められていきます。投資経験の多少にかかわらず、ESG投資という視点で投資先を選定してみてはいかがでしょうか。