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グローバルな金融市場の動揺が続く中、緊急FOMC(米連邦公開市場委員会) が3月3日に開催され、FF金利が1.00~1.25%へと、50bp(ベーシスポイント)引き下げられました。FRB(米連邦準備理事会)の利下げにもかかわらず米S&P500株価指数が前日比で2.8%下落したのは、米国国内における新型コロナウィルス感染者増加への懸念の高まりを背景としたものであり、利下げの効果が限定的と認識されたためでしょう。コロナウィルス感染者増加によって景気の下振れリスクが高まったり、株価がさらに下落する場合は、3月17-18日に予される次回FOMCで再び25bpの利下げを実施する可能性が高まります。
FRBによる利下げがドル安の動きを加速させたことで、ドル独歩高が修正され、ユーロや円の対ドルレートは新型コロナウィルスの感染が問題化する前の水準にほぼ戻りました。足元ではさらに対ドルでのユーロ高、円高の動きが進行していますが、FRBによる更なる利下げが視野に入る場合は、もう一段のユーロ高、円高も想定されます。ドル円レートについては、1ドル=105円程度まで円高が進行する可能性を見ておく必要があるでしょう。
FRBが緊急利下げに動いたことで、ECB(欧州中央銀行)がこれに追随して利下げを行うかどうかが注目されています。私は現段階では3月12日にECBが利下げに踏み切る可能性は低く、TLTRO(長期資金供給オペ)が活用されると考えていますが、①さらなる株価下落や➁いっそうのユーロ高は、ECBが利下げを実施する引き金になるでしょう。
グローバルな金融市場の動揺が続く中、緊急FOMC(米連邦公開市場委員会) が3月3日に開催され、FF金利が1.00~1.25%へと、50bp(ベーシスポイント)引き下げられました。FRBの利下げにもかかわらず米S&P500株価指数が前日比で2.8%下落したのは、米国国内における新型コロナウィルス感染者増加への懸念の高まりを背景としたものと考えられます。米国内での感染者増加は消費や企業活動への打撃という経路で短期的な景気減速につながりますが、利下げによって企業や消費者の借り入れコストを軽減できたとしても、感染者増加によるサービス消費等への悪影響を食い止めることはできません。もっとも、FRBとしては、2月20日以降でS&P500株価指数が累積で11.4%下落するという状況下で、株価の下落に対して行動を起こす必要がありました。
パウエルFRB議長は3月3日の記者会見で今後の利下げについて含みをもたせる発言をしましたが、コロナウィルス感染者増加によって景気の下振れリスクが高まったり、株価がさらに下落するのであれば、3月17-18日に予される次回FOMCで再び25bpの利下げを実施する可能性が高まります。状況次第では、次々回の4月28-29日に予定されるFOMC会合でも追加的な利下げの可能性があります。
現在のFF金利は1.00~1.25%であるめ、1回の利下げが25bpで行われるとすると、 FRBの利下げ余地はあと4回となります。FRBは昨年半ばからの金融政策の枠組みを見直す作業の中で、マイナス金利については現在の米国には適さないという見方を打ち出す一方、政策金利がこれ以上下げられない状況になる場合は、米国債などの資産買い入れ策を積極的に実施するという方向性を明確にしています。実質ゼロ金利に達した段階でFRBは量的緩和第4弾を検討するはずです。米国債の利回りが低下を続けているのは、株式市場からの資金シフトだけではなく、こうした思惑が背景にある可能性があります。
FRBは、将来新型コロナウィルス問題が終息する局面では、引き下げた政策金利を適正水準に戻す必要があります。ただし、利上げには株価やその他資産市場への影響が伴いますので、そのペースは緩慢なものになると思われます。11月に米大統領選挙が実施されることを考えれば、利上げの開始は大統領選挙以降のタイミングになるとみられます。
こうした中、グローバル市場では、新型コロナウィルス問題の本格化以降続いていた、米国だけに資金が集中する「米国一極集中」の構図が崩れました。FRBによる利下げがドル安の動きを加速させたことで、ドル独歩高が修正され、ユーロや円の対ドルレートは新型コロナウィルスの感染が問題化する前の水準にほぼ戻りました(図表1)。足元ではさらに対ドルでのユーロ高、円高の動き進行していますが、FRBによる更なる利下げが視野に入る場合は、もう一段のユーロ高、円高も想定されます。ドル円レートについては、1ドル=105円程度まで円高が進行する可能性を見ておく必要があるでしょう。
FRBが緊急利下げに動いたことで、ECB(欧州中央銀行)がこれに追随して利下げをするかどうかが注目されています。私は現段階では3月12日にECBが利下げにふみきる可能性は低いと考えています。欧州ではマイナス金利の深堀りによる金融機関収益等への副作用がより強く意識されており、副作用を上回る効用がない限りは利下げ実施は見込めません。ただし、①株価がさらに下落したり、あるいは➁ユーロ高がさらに進行するような場合には、利下げも視野に入ってくると思われます。現時点ではユーロは年初来の対ドルでの下落分を取り戻しただけであり、ECB当局者を慌てさせるような水準にありません。新型コロナウィルス感染への対策としては、TLTROを使った資金供給がECBの視野に入っているでしょう。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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MC2020-026