国際的な枠組みとして推進しているSDGs。そこに関わるESGへの取り組みは、企業にとって最優先課題といってもいい状況になっているかもしれません。一方で、「SDGsって? ESGって何?」という人や、自分にとってどのような関わりがあるのか、理解できていない人もいるでしょう。
SDGsやESG関連の記事を5つ紹介しますので、理解を深めておきましょう。
目次
■1. SDGsは日本に浸透している? 各自治体の現状や課題を事例とともに紹介
■2. ESG投資とは?投資家にとってのメリット・デメリットとわかりやすい始め方
■3. サステナビリティを加速させる「グリーンテクノロジー」とは?
■4. 金融、コンサル分野で激化するESG人材獲得競争 育成関連投資に注目?
■5. 中国が「世界最大の炭素取引市場」をスタート、地球温暖化防止の救世主となるか?
目次
国連サミットにおいて「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されてから、世界のさまざまな地域で環境・社会問題に関する取り組みが行われています。その波は日本にも押し寄せており、最近ではESG投資を行う投資家や消費者を意識して、新たなプロジェクトを立ち上げる企業も増えてきました。
では、都道府県や市区町村などの自治体は、SDGsに対してどのように考えているのでしょうか。今回は実際のアンケート結果をもとに、全国の自治体の現状や課題などを紹介します。
2015年にSDGsが採択された影響で、最近では世界中の国や自治体、企業が「環境・社会のための取り組み」を行っています。日本国内の自治体は、SDGsをどれくらい意識しているのでしょうか。
ここからは、自治体SDGs推進評価・調査検討会が公表した「令和2年度 SDGsに関する全国アンケート調査結果(回答自治体数:1,303)」をもとに、自治体の現状を見ていきます。
SDGsへの関心度 | 割合 |
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非常に関心がある | 22.2% |
関心がある | 68.9% |
あまり関心がない | 7.5% |
全く関心がない | 0.2% |
分からない | 1.2% |
(参考:https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/kaigi/pdf/sdgs_enquete_chousa_r02_kekka.pdf)
近年、さまざまなメディアで取り上げられている「ESG投資」。ESG投資の規模は着実に拡大しており、その投資額は世界全体で35兆ドルに上ると言われています。今回はESG投資の概要やメリット・デメリット、始め方などを紹介します。
ESG投資とは、環境・社会・企業統治の3つの観点から投資先を選ぶ投資手法のことです。
ESG投資の概念が広まるまで、多くの投資家は売上高や営業利益などの「財務情報」をもとに投資先を選んでいました。
しかし、ESG投資の浸透によってその状況は変わりつつあり、最近は以下のような「非財務情報」を重視する投資家が増えています。
非財務情報の種類 | 投資判断に用いられる情報の例 |
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環境に関するもの | ・二酸化炭素の排出量が抑えられているか ・環境汚染物質を排出していないか ・再生可能エネルギーを積極的に利用しているか |
社会に関するもの | ・地域活動に貢献しているか ・女性が活躍できる社内体制になっているか ・労働環境が改善されているか |
企業統治に関するもの | ・積極的に情報が開示されているか ・資本効率に対する意識が高いか ・適切なコーポレートガバナンスや内部管理体制が整っているか |
非財務情報が充実している企業は、経営体制や事業が安定しているところが多いため、将来高い収益力やブランド力などを備える可能性があります。
ESG投資は短期的な利益ではなく、企業の「将来性・持続性」に投資する中長期的な投資手法と言えるでしょう。
電力、エネルギー、ガス、輸送・物流、農業、公益事業、不動産など多様な領域において、持続可能な社会の実現に欠かせない技術として「グリーンテクノロジー」が注目されています。
「2030年までに8兆円市場に成長する」と期待されているグリーンテクノロジーの最新動向から、新たな投資のチャンスが見えてくるかもしれません。
グリーンテクノロジー(Green Technology)は人為的な活動により生じる環境問題を解決、あるいは緩和するための技術です。環境技術(Environmental Technology)と呼ばれることもあります。
その領域は再生可能エネルギーやオゾン層保護などの地球環境対策技術、省エネ技術・エネルギー有効利用技術、エコモビリティ(交通環境対策)、環境汚染物質の排出抑制技術、水質浄化などの環境管理技術、廃棄物対策、リサイクル技術まで広範囲にわたります。
身近な例としては太陽光発電や風力発電、地熱発電、バイオ燃料、生分解性プラスチック、省エネ商品、省エネビル、クリーンカー(電気自動車、ハイブリッド車など)などが挙げられます。
いずれのグリーンテクノロジーも、環境および天然資源を保護すると同時に、過去の環境損傷を修復することを目標としています。
世界各国で加速している「持続可能な社会」の実現に向けた取り組みは、金融産業にも広がっており、近年は「サステナブル・ファイナンス(持続可能な金融)」という領域が確立しています。
取り組みが拡大する一方で、その戦力となる専門知識や経験豊かな人材が世界的に不足しているのが現状です。
「サステナブル・ファイナンス(持続可能な金融)」は、金融セクターで投資決定を行う際にESG(環境・社会・ガバナンス)の要素を考慮に入れ、中長期的視点で経済活動やプロジェクトへ投資するための取り組みです。「社会的責任投資」や「インパクト投資」などと呼ばれることもあります。
近年はゴールドマンサックス やJPモルガン・チェース、KPMG などの国際金融機関やコンサル企業、格付企業に加え、日本では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)やHSBCホールディングスなどがサステナブル・ファイナンスを経営計画に組み込み、巨額の資金を投じてそれぞれの目標達成に挑んでいます。
しかし、サステナブル・ファイナンスは比較的新しい分野であるため、専門知識や経験を有する人材が不足しています。
英非営利金融教育組織CFAインスティテュートが2020年8月、ビジネスネットワーキングサイトLinkedInに掲載された1万件を超える投資関連の求人広告を分析したところ、約6%がサステナビリティ分野のスキルを持つ人材を求めていました。
ところが、LinkedInに登録している100万人以上の投資専門家のプロフィールを分析すると、実際にサステナビリティ分野のスキルを有するのはわずか1%であり、深刻な需要ギャップが明らかになりました。
サステナブル・ファイナンスに対応可能なESG人材は徐々に増加しているものの、人材難が慢性化した場合、同分野の発展に支障をきたす可能性が懸念されています。
世界最大の二酸化炭素排出国である中国がCO2排出量実質ゼロを目指し「世界最大の炭素取引市場」を開設しました。これによって、世界の脱炭素に向けた取り組みがさらに加速することが期待されています。CO2排出削減の促進策として注目されている「炭素市場(カーボンマーケット)」とともに、中国が気候変動対策先進国となる可能性について考察します。
炭素市場は、炭素クレジット(排出枠)を取引する場所のことで「排出権取引市場」と呼ばれることもあります。
世界銀行の2021年5月のデータによると、世界中で64のカーボンプライシングが実施されています。カーボンプライシングとは、排出されるCO2(カーボン)の量に価格を付ける(プライシング)仕組みのこと。排出量に応じた金銭的なコストを企業や家庭に負担してもらうことでCO2排出量の削減を促すのが狙いです。
具体的には、CO2排出量に対して課税する炭素税(カーボンタックス)や、国が企業の排出するCO2量に上限を設け、それを超過した企業は上限に達していない企業から炭素クレジットを買い取る炭素取引(カーボントレード)などが行われています。
世界の炭素市場は年々拡大しており、2020年には総額2,290億ユーロ(約29兆7,159億円)相当の取引がありました。その大部分を占めているのは、世界に先駆けて取引を開始したEU ETS(欧州連合排出量取引システム)ですが、この勢力図を大きく変える動きが中国で見られます。
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いかがだったでしょうか。SDGsやESGへの取り組みは、もはや引き返すことはない世界的な取り組みになっています。投資の観点からも目が離せない分野といえるでしょう。これからも、Wealth Roadでは随時、SDGsやESG関連の記事を配信予定です。読み逃すことのないように、楽しみにお待ちください。
※上記は参考情報であり、特定企業の株式の売買及び投資を推奨するものではありません。