『図解即戦力 債券のしくみがこれ1冊でしっかりわかる教科書』より一部抜粋
(本記事は、土屋 剛俊氏監修の書籍『図解即戦力 債券のしくみがこれ1冊でしっかりわかる教科書』=技術評論社、2021年8月26日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
どんな債券なら安心して投資できる?
債券の信用力をランクづけする信用格付け
債券の信用リスクを、専門的な知識を持つ格付会社が、客観的に表したものを信用格付け(以下、格付け)といいます。格付けには、企業や国・自治体などの債券発行体を格付けする発行体格付けと、個別の債券を格付けする個別格付け(債券格付け)があります。
発行体格付けは、発行体の債務全体に対する返済可能性に対して行われるため、発行体につき1つの格付けとなります。一方、個別格付けは、債券ごとに回収リスクが検討されるため、同じ発行体であっても異なる格付けになることがあります。
おもな格付会社と格付け記号の読み方
格付機関は公的機関ではなく民間企業です。日本では、格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)、ムーディーズ、S&Pグローバル・レーティングの4社の格付けが有名で、よく投資の際の参考にされます。格付会社は、発行体の財務リスクと事業リスクを中心に各社独自の手法で分析を行い、格付けを行っています。
格付けの表し方は各社とも似ていて、アルファベットのAからDまでの組み合わせで表現します。格付けの等級は最高がAAA(トリプルエー)で、下がるほどリスクが高い債券になります。
BBB(トリプルビー)までの上位の債券は、投資適格債と呼ばれ、信用力(=返済可能性、安全性)が高いとされます。一方、BB(ダブルビー)以下の下位の債券は、信用力が低いとされ、投資不適格債や投機的格付債、ハイイールド債、ジャンク債と呼ばれます。
実は、債券の発行を行う企業などは、基本的に一定の費用を格付会社に支払って格付けをしてもらっています。高い格付け評価を得られれば、信用力が高いと投資家に思われるので、発行体は低い金利で債券を発行する(低コストで資金調達する)ことができるからです。
格付けは、基本的に発行体の信用力が悪化すると引き下げられ、信用力が向上すると引き上げられます。
格付けBB以下は本当に投資してはいけないのか
BB以下の債券はBBB以上の格付けの債券に比べて、投資資金を回収できないリスクが高くなりますが、見返りに高い利率をつけて発行されます。高利回りを狙う投資家には魅力的なため、海外では人気のある金融商品です。
日本ではA格以上でないと買わない機関投資家や銀行が多く、また保有する債券の格付けがBB以下になったら、デフォルトリスクを回避するために社内ルールで売却する決まりになっている場合も多くあります。そのため、国内ではBB格以下の債券はほとんど発行されません。
アメリカではジャンク債の市場がきちんと整備されており、設立直後の企業、競争や変動の激しい分野の企業などの債券は、BB以下でも発行され、取引されます。こういった債券は日本でも証券会社を通じて購入できます。
発行体や債券自身のリスクを把握したうえで、自分の目標とする利回りを求めて投資を行うなら、格付けBB以下の債券も投資対象になるといえるでしょう。
<監修者プロフィール>
土屋 剛俊(つちや たけとし)
土屋アセットマネジメント社長
1985年一橋大学経済学部卒。野村ロンドン、野村香港、JPモルガンチェース銀行、野村証券チーフクレジットアナリスト、野村キャピタルインベストメント審査部長、バークレイズ・キャピタル証券ディレクター、みずほ証券シニアエグゼクティブなどを歴任。2021年より現職。CFA協会認定アナリスト。著書に『入門 社債のすべて』(ダイヤモンド社)などがある。
『図解即戦力 債券のしくみがこれ1冊でしっかりわかる教科書』