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金利が上がると、逆に債券価格は下がるのはなぜ?

『図解即戦力 債券のしくみがこれ1冊でしっかりわかる教科書』より一部抜粋

(本記事は、土屋 剛俊氏監修の書籍『図解即戦力 債券のしくみがこれ1冊でしっかりわかる教科書』=技術評論社、2021年8月26日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

金利が上がると債券価格が下がるのはなぜ?

債券を現金化したいときを考えてみよう

発行された債券の価格は、さまざまな要因で変動します。なかでも、そのときの金利、将来の金利の見通しに大きく影響されます。

わかりやすく、毎月発行されている国債を例に説明しましょう。同じ5年の固定利付国債で、利子が2%のものと3%のものがあったら、あなたはどちらを買うでしょう? 間違いなく3%のものを買いますよね。

では、あなたは利子2%の国債をもっていて、現金化するため売りたいとします。そのとき金利が上がっていて、今月は利子3%の国債が発売されるとしたら、買った価格では売れないことはわかるでしょう。

利子3%の国債と利回りが同じになれば買ってくれる人がいるかもしれません。利子が低い分は償還差益で補うようにします。つまり販売価格を下げるしかありません。

逆に、売るときに今月の国債の利子が1%に下がっていたとします。利子2%の国債はプレミアムがついて、発行時より高い価格でも買いたいという人が出てきます。そこで値上がりするのです。

このように金利と債券価格は反対に動きます。

 ● 金利が上がると、債券価格は下がる
 ● 金利が下がると、債券価格は上がる

これは一般的な法則なので覚えておきましょう。

実際には同じ5年国債でも、既発債と新発債では残存期間が違いますから、償還までにもらえる利子の総額を計算し、同じ残存期間の国債と利回りが釣り合うように価格が決まります。

債券の価格は残存期間が短いと変化も小さくなる

債券価格は償還日が来るまで変動しますが、その変動幅は、債券の償還までの残存期間の長さによって異なります。

国債のように信用力の高い債券で考えてみると、あと1年未満など残存期間が短ければ、デュレーションが短いため、債券価格の値動きはほぼ発生しません。また、償還期間が短い債券ほど一般的に利率が低いため、利回りの観点からも価格変動の余地は小さくなります。

10年、20年と残存期間が長くなれば、償還されるまでに景気・金利の変動、インフレ、政情不安、災害、戦争など、さまざまなリスクの発生が想定されます。50年後となると、確実に償還されるか予測できません。貨幣価値が変わるかもしれません。


そのため、残存期間が長い債券ほど債券価格の変動幅は大きくなります。国債に比べ信用リスクが高い社債や、政治・経済が不安定な国の国債は、より短い期間で価格の変動は大きくなります。

価格変動の波が激しいことをボラティリティ(volatility)が大きいといいます。金融商品のボラティリティはリスクが高いほど大きくなります。債券に限らずよく使われる金融用語ですので覚えておきましょう。

金利が上昇すると判断したときは、債券投資は慎重に

債券投資家は、金利の動きを常に気にかけています。これから金利は上がるのか、下がるのか、さまざまな情報から判断して取引しています。

一般的に金利は、資金の需要と供給の関係で変動しますが、中央銀行が金融政策として金利を操作することもあります。中央銀行は常に金融市場の動向をチェックしており、金利の変更を行う際は、市場の反応を十分に考慮したうえで行うことがほとんどです。

金利の上昇(債券価格の低下)局面の債券投資は慎重に行う必要があります。中央銀行の動向に注目しておきましょう。

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<監修者プロフィール>

土屋 剛俊(つちや たけとし)
土屋アセットマネジメント社長
1985年一橋大学経済学部卒。野村ロンドン、野村香港、JPモルガンチェース銀行、野村証券チーフクレジットアナリスト、野村キャピタルインベストメント審査部長、バークレイズ・キャピタル証券ディレクター、みずほ証券シニアエグゼクティブなどを歴任。2021年より現職。CFA協会認定アナリスト。著書に『入門 社債のすべて』(ダイヤモンド社)などがある。

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