長期投資では、ブレずに買い続けることが相場の荒波を乗り越える方法のひとつです。相場にはサイクルがあり、上手く付き合う必要があります。悪いときに売ってしまうと次の上昇サイクルに乗れない可能性があります。今回は相場の荒波を乗り越えるための投資方法を解説します。
2020年の年初から新型コロナウイルスが世界的に蔓延しています。WHO(世界保健機構)が3月11日に「パンデミック」を宣言し、主要都市のロックダウンで世界景気に急ブレーキがかかり、株価は3月に大暴落しました。日経平均は2月高値からわずか1ヶ月程度で約3割の下落を見せました。
過去の暴落局面(2000年以降)を振り返ると、およそ10年に1度は日経平均で3割を超える大幅調整がありました。01年の「ITバブル崩壊」、08年の「リーマンショック」、そして今回の「コロナショック」です。日経平均は18年には2万4,448円とITバブル崩壊後の高値を更新しています。世界経済や日本経済は「ITバブル崩壊」「リーマンショック」を克服し、株価は回復してきています。「コロナショック」でも、日経平均は6月には下げ幅の8割以上を戻しました。この循環が「相場のサイクル」なのです。
なぜ「相場のサイクル」が出来るのでしょう。一般的に、景気と企業業績と金利と株価には以下のような関係があるからです。
景気拡大期 : 企業業績拡大、株価上昇、景気の過熱を防ぐために金利は上昇
景気のピーク: 企業業績ピークアウト、株価は業績に先行して下落
景気下降期 : 企業業績減速、株価下落、
政府や中央銀行は金融緩和や景気対策等で景気刺激、金利は低下
景気のボトム: 金利低下、景気対策の効果で企業業績底打ち、先行して株価は上昇
「コロナショック」で株価の戻りが予想したよりも早かったのは、日米欧中など世界の主要国が、経済や株価への影響を危惧し、リーマンショックを越える過去最大の金融緩和と経済対策を矢継ぎ早に実施したからという見方が主流になっています。
相場がサイクルであることを前提に考えると、下げた時にしっかり買うことで投資効率はよくなります。ITバブル時の日経平均の安値は03年4月の7,603円でした。リーマンショック時は08年10月の6,994円でした。ともに現在の日経平均の3分の1以下まで売られたのです。長期目線では、ともに10年に1度の買いチャンスだったのではないでしょうか。リーマンショック時に日経平均安値08年10月の6,994円で買えていれば、その後に株価は大きく上昇を見せました。ただ、その前の高値は07年2月の18,300円です。つまり底打ちするまで1年8ヶ月もかけ6割以上の下落を見せました。節目と考えられた15,000円、10,000円などで、もし全財産をつぎ込んでいたら、その後の下げに耐えられたでしょうか?どこかで、底値売りをしてしまったかもしれません。
こうした相場の激しい値動きの中で、投資から利益を得ていくためには、リスクを分散しながら、勇気を持って投資することが大切だと言えます。サイクル相場のなかで心がけるべき有効な3つのリスク分散方法について紹介します。
(1)ドルコスト平均法:買入コスト低減によるリスク分散
ドルコスト平均法とは、金融商品を一度に購入するのでなく、定期的に一定額ずつ分散して購入する投資手法で、長期間で平均の買い単価を下げる方法です。毎月一定額を買うことは、安い時には多くの口数、高い時には少ない口数を買うことになります。毎月一定口数ずつ買うよりも買い付け単価が下がり長期では投資効率があがるという考え方です。
(2)時間分散:投資タイミングのリスク分散
時間分散とは、投資する時期を分けることで、相場で難しいタイミングのリスクを分散する方法です。相場のタイミングを正確に判断することは株式投資の専門家にも難しいことです。タイミングのリスクをとらずに、時間分散することでリスクを管理出来ます。長期投資では、「時間を見方につける」ことがリスク管理、複利の観点からも有利です。
(3)資産分散:アセットによるリスク分散
資産分散とは、投資を、株や債券、日本国内や海外など、違う動きをする金融商品に分けることでリスク分散する長期投資の基本的な方法です。
相場のサイクルをお話しましたが、一般的には、景気上昇期には株が上がりますが、金利が上がるため債券価格は下がります。逆に過去多くの局面では、株価が下がるときは、債券価格が上がりました。つまり、株と債券は、通常相反する動きをします。だから株式と債券に投資することで、相互でリスク分散が出来るのです。ただ、それも金利があった時代の教科書的な考え方です。今は世界的に低金利になっており、日本国債はゼロ金利もしくはマイナス金利が何年も続いています。金利の低い債券は長期投資ではあまり魅力的には見えません。だからこそ、金利を求めて、REIT、インフラファンドなど、原油や金などの商品、不動産などといったオルタナティブ資産への投資が増えてきているのです。オルタナティブ資産を新しい投資先として検討してみるのも良いでしょう。
将来的に日本の財政が健全かどうかは誰にもわかりませんし、地震の可能性や近隣での地政学リスクの高まりなども想定されます。そういう観点からは、日本の資産のみへの投資よりも、海外資産も含めた分散投資も有効なリスク分散方法と考えられます。
人間は周りの意見や行動に流され、感情的に行動をしやすい生き物です。その時々の相場環境や報道などの影響も強く受けます。連日、「コロナ」「景気終焉」「株安」などの文字を見れば不安をかき立てられます。間違った判断をしないためにも、自分で決めた資産配分やロスカットなどの「ルール」に沿って行動し、投資の軸がブレないようにすることが大切です。
暴落したときや不安になったときは、むしろ、「買いのチャンス」と捉え、ブレずに長期投資することの大切さを再確認することができます。ITバブルやリーマンショックなど過去の株安局面とその後の投資損益を検証すると、投資はやめずに続けることが大切だということがわかったと思います。不透明な市場環境を乗り切るためには、長期投資を続けていくことが、相場の荒波を乗り越える最大の秘策だと言えます。一時的に厳しい状況になっても、相場のサイクルに有効な3つのリスク分散方法を駆使しながら長く投資し続けることで資産は育てられるのではないでしょうか。
次回は、具体的な商品選びのポイントと過去のパフォーマンスを見ながら検証していきます。