「資産全体の何割を投資に振り分けるか」。これは投資におけるリスク管理の肝であり、資産配分(アセット・アロケーション)とも呼ばれます。投資においてリスクとは、値動き(=利回りの変動)の大きさを示す指標をいいます。つまり、リターンの変動(ブレ)のことを表し、リターンの変動幅が小さいことを「リスクが低い」、変動幅が大きいことを「リスクが高い」と呼びます。リスクを未然に防いだり、分散させたりすることで賢く自分の資産を守ることをリスク管理といいます。資産の運用を始める前に、起こりうる危険を知ってそのリスクを防ぐ方法を考えておくことは重要です。
同じハイリスク商品に投資をするにしても、全資産に対する割合が20%と80%とでは影響が大きく異なります。つまり、資産配分さえ間違えなければ大きな失敗は防げると言えます。資産配分の重要性について解説していきましょう。
目次
「守り」の話からはじめます。何に投資するかを決める前に、リスク資産に投資をしても良い割合、「最悪、無くなっても良いと思える割合」を決めることからはじめましょう。
資産運用において、全資産の配分比率をきちんと守ることがリスク管理の肝です。これを「アセット・アロケーション」と呼びます。例えば、どんなにハイリスク商品に投資をしたとしても、資産全体の5%であれば、どんなに損をしても5%に抑えることができます。
リスク資産に投資しても良いと思える割合は人それぞれ。7割の人もいれば、2割の人もいるのです。「どれくらい投資元本がマイナスになっても生活に影響がないか」「どれくらいまで投資元本がマイナスとなっても精神的に耐えられるか」という度合いを「リスク許容度」と言います。自分なりの「リスク許容度」を知っておきましょう。
「攻め」の話に移りましょう。資産運用において、アセット・アロケーションの重要性は高く、運用成果の8割以上を決定する要因であることが、各種の金融理論の研究・調査で報告されています。
たとえば、長期運用で日本株と米国株に分散投資をする場合は、それぞれの分野で上昇が期待出来る個別銘柄やファンドを選ぶことに意識を向けがちになります。銘柄やファンドによって、短期的にはパフォーマンスに差が付きますから当たり前です。しかし長期のリターンで見ると、日本株と米国株の比率を資産全体の中でどれくらいに配分するかを決定することのほうが、個別の銘柄やファンドを決定することよりもリターンに対する影響度は大きいのです。
具体的には、NYダウは99年末の1万1,497ドルから19年末の2万8,538ドルまで20年間で2.5倍になりました。一方、日経平均は99年末の1万8,934円から19年末の2万3,656円まで約25%の上昇でした。米国株がどんなに素晴らしいパフォーマンスを出していたとしても米国株の投資比率が低ければ資産全体への影響は限定的だということです。
リスク資産の割合を決めるには、自分のライフプランと定年時の目標金額を考え、どれくらいのリターンが必要で、リスクをどれくらいとれるかをクリアにすることが最初のステップです。リスクがあまりとれないなら、ローリスク・ローリターンへの投資配分が中心になります。リスクをとれるなら、ハイリスク・ハイリターンの資産に配分を増やすこともできます。
誰にでも簡単にリスク資産配分比率を求めることができる式をご紹介します。
100 -(年齢)=リスク資産(株式)配分比率
たとえば、30歳だったら株の比率を70%に、50歳だったら株の比率を50%にするのが平均的なリスク許容度という計算式です。残った比率を債券などの安定資産にすればいいのです。リスク資産の株の比率、安定資産の債券の比率を決めた後、それぞれで国内と海外の比率を決めるのがいいでしょう。
最近は証券会社、銀行、運用会社などでAIやロボアドなどが、年齢やリスク志向などの簡単な質問に応えるだけで推奨アセット・アロケーションを教えてくれるサービスも存在しています。一度やってみてみるといいでしょう。
アセット・アロケーションは、年齢や経済環境によって定期的に見直す必要がありますのでその習慣と見直し方も身に付けていきましょう。ちなみに、アセット・アロケーションの見直しを専門用語では「リバランス」といいます。
主要アセットには、国内株、海外株、国内債券、海外債券の伝統的な4資産と、オルタナティブと呼ばれる金や原油などのコモディティや不動産などが存在します。一般的に、ハイリスク・ハイリターンの資産が株式とオルタナティブ、ローリスク・ローリターンの資産が債券です。
基本となるアセット・アロケーションは、日本株式と海外株式、日本債券と海外債券をそれぞれ25%にするものです。これをベースに、リスクを増やすなら株もしくはオルタナティブの比率を上げる、安全性を重視するなら債券の比率を増やしましょう。また、株式の中でも、電力やガスの公益性の高い事業を行なっている会社は比較的配当も高く、事業も安定していて、売り上げ・利益の変動幅が少なく、比較的安全性の高い資産と考えられています。
海外株では、先進国より新興国のほうが、政治的混乱に伴うカントリーリスクや為替変動リスクなどが大きいため、ハイリスク・ハイリターンとなります。債券でも国債は社債よりもリスクが低く、社債でも低格付けのハイイールド債と呼ばれるハイリスク・ハイリターンの商品もあります。世界的な低金利時代のため、より高い金利を求めるのならある程度はリスクをとる必要があるでしょう。
アセット・アロケーションという投資の大前提部分で間違わなければ、資産運用で大きな失敗をすることは少ないでしょう。リスク管理さえしっかりしていれば、恐れることなく投資を続け、経験値を上げていくことで資産を効率的に増やす機会が増えていくのではないでしょうか。
次回は、ブレない長期投資をするために知っておきたい「相場サイクル」について紹介します。