新NISAの対象商品である投資信託には、分配金が支払われるファンドもあります。分配金には同じファンドを買い増しする「再投資型」と、現金で支払われる「受取型」がありますが、新NISAではどっちを選ぶとよいのでしょうか。
目次
分配金を再投資・受取するメリット
新NISAの非課税投資枠で投資信託を購入すると、生じたリターンには税金(所得税や住民税)がかかりません。再投資型・分配型のいずれのファンドでも、全ての譲渡益や分配金が非課税になります。
なお、投資信託の分配金にはファンドの運用益から支払われる「普通分配金」と、元本をとり崩す「特別分配金(元本払戻金)」があります。このうち、特別分配金は投資家のリターンに該当しないため、新NISAの恩恵は受けられないことになります。
以下では普通分配金が発生すると仮定して、再投資型・受取型のメリットをまとめました。
<分配金を再投資するメリット>
・投資金額が増えるため、期待できるリターンも大きくなる
・分配金がないファンドと同様の複利効果を期待できる
・購入時手数料や手続きを省いて同じファンドを購入できる
<分配金を受取するメリット>
・ファンドの運用が悪化しても、分配金を受けとれる可能性がある
・受けとった分配金を別の投資などに充てられる
再投資型は基準価額の上昇が継続することを前提にすると、複利効果によってリターンを大きくできる可能性があります。受取型の場合は、受けとった分配金を使って別の金融商品を買えるだけではなく、生活費に充てたり、ポートフォリオ内の現金比率を上げたりする時に役立ちます。
分配金を再投資・受取するデメリット
次に、分配金を再投資・受取するデメリットをご紹介します。
<分配金を再投資するデメリット>
・再投資分の非課税投資枠が消費される
・分配金を現金で受けとれない
・下落時の損失幅がより大きくなる
<分配金を受取するデメリット>
・複利効果が発揮されない
・同じファンドを買い増しする場合に手続きや購入時手数料が必要になる
再投資型では、投資信託を追加購入した分の非課税投資枠が消費されます。新NISAの非課税投資枠は年間360万円ですが、投資状況によっては目当ての金融商品を購入できなくなるかもしれません。また、再投資型はファンドへの投資総額が増えていくため、思った以上に損失が膨らむこともあります。
受取型のデメリットは、複利効果を期待できなくなる点です。また、同じファンドを追加購入する場合は新たな手続きや購入時手数料が必要になる可能性があります。購入時手数料がかかる場合、受取型が同じタイミングで投資したと仮定すると再投資型よりも資産を減らしてしまう可能性があります。
分配金の再投資が向いている人
分配金の再投資は、長期運用で資産を増やしたい人に向いている可能性があります。
再投資型のファンドでは、分配金が生じる度に自動で買い増しが行われます。良好な運用状態が続けば、保有しているだけで複利効果の恩恵を受けられます。
そのほか、生活に余裕があって現金収入を必要としていない人や、ひとつの金融商品で運用したい人にも再投資型は向いていると考えられます。ただし、保有中に相場状況が変わることもあるので、ファンドの運用状態はこまめに確認し、他の投資の選択肢も検討しておきましょう。
分配金の受取が向いている人
分配金を受けとると複利効果は得られませんが、その資金でほかの金融商品を購入できます。そのため、複数のファンドを購入したい人や、投資信託以外の金融商品にも興味がある人は、受取型のほうが向いているかもしれません。
また、分配金を家計の足しにしたい場合も、受取型が向いていると考えられます。分配金の額によっては普段の生活費だけではなく、学費などを補う資金としても活用できます。
再投資型・受取型の変更を検討したいタイミング
相場状況に合わせて保有するファンドを変更すると、資産効率を高められる可能性もあります。どのタイミングで再投資型と受取型の変更を考えればよいでしょうか。以下ではそれぞれのメリット・デメリットを踏まえて、変更を検討したいタイミングをまとめました。
<再投資型から受取型に変更するタイミング>
・投資の目的や目標金額を達成した時
・老後生活に入ったため、年金以外の収入が欲しい時
・子どもの進学など、出費のかさむライフイベントが近づいてきた時
<受取型から再投資型に変更するタイミング>
・家計が安定し、分配金を生活費に充てる必要がなくなった時
・長期で資産形成をする必要性が生じた時
・複利効果に期待する手法に切り替えたい時
現在の家計状況や将来のライフイベントを意識すると、どっちが合っているのかを判断しやすくなります。実際の運用をイメージしながら、ご自身に合った分配金のタイプを選びましょう。
分配金の再投資型・受取型は状況に応じて切りかえよう
再投資型と受取型は、どっちが優れているのかを一概にいうことはできません。それぞれにメリットとデメリットがあるので、投資の目的や資産状況から判断することが重要です。相場状況は常に変化するため、状況によって再投資型・受取型の切り替えも検討しましょう。
※本記事は投資信託に関わる基礎知識を解説することを目的としており、特定ファンドの売買や投資を推奨するものではありません。
※本記事は、2024年6月24日現在のものです。今後制度が変更になる場合もあります。