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株式・投資信託を利確して買い直す必要性とタイミング
(画像=LuckyAi/stock.adobe.com)

株式・投資信託を利確して買い直す必要性とタイミング

保有中の金融商品に利益が出ている場合は、一度利確して買い直す選択肢があります。活用できる場面は限られますが、資産状況や運用方針によっては有効な手法になるかもしれません。本記事では、株式・投資信託を利確して買い直すメリットやデメリット、タイミングを解説します。

結論:利確して買い直すタイミングは限定される

税金や手数料がかかることを考えると、株式・投資信託を利確して買い直す方法が有効なタイミングは限られます。ただし、いったん利益を確定できたり、手持ちの現金を増やせたりするメリットはあるため、以下のようなケースでは一つの選択肢になるでしょう。

<利確後の買い直しを考えるタイミング>
・上昇トレンドが続いているとき
・金融商品が一時的に高騰したとき
・決算内容が悪かったとき(株式投資)
・他に魅力的な金融商品を見つけたとき

利確して買い直す方法を実践する前に、メリットやデメリット、注意点などを理解することが重要です。他の売買のタイミングとの違いを確認して、今の運用状況に適した取引になるのかを慎重に判断してください。

株式・投資信託を利確して買い直すメリット

金融商品を利確して買い直すと、運用方針によってはメリットを得られることがあります。以下では株式や投資信託を想定して、実際に買い直すメリットを紹介します。

【1】いったん利益を確定できる

株式や投資信託を利確すると、その時点での利益が確定します。もしその後に評価額(株価や基準価額)が下がっても、売却分については損失に変わることはありません。金融商品のリターンには、購入時・売却時の差額で生じる「譲渡益」と、保有によって生じる「インカムゲイン(※)」があります。このうち譲渡益は、購入した金融商品を売却しないと得られないリターンです。

(※)株式では配当金や株主優待、投資信託では分配金が該当する。

金融商品の保有中に評価額が上がると、一時的に含み益が生じます。それに伴って資産額も変動しますが、含み益はあくまで現時点での評価額です。この含み益を確定させて現金として使うには、保有銘柄を売却する必要があります。

【2】手持ちの現金を増やせる

金融商品の利確は、簡単に言い換えると「現金化すること」です。その時点での評価額が証券口座に追加されるため、株式・投資信託を利確すると手持ちの現金を増やせます。

金融商品を現金に換えておけば、その一部または全額をさまざまな用途に使えます。利確した金額によっては、病気やケガで入院費が必要になったときや、冠婚葬祭が重なった場面などにも対応できるでしょう。

【3】利益があれば他の金融商品を購入できる

株式・投資信託で利確した金額は、証券口座に入金されます。そのため、他に魅力的な金融商品が見つかった場合は、そのまま別の銘柄に投資をすることが可能です。実際にどのような選択肢があるのか、いくつか例を紹介しましょう。

<新しい投資先の例>
・保有中の金融商品よりも割安感がある銘柄
・直近の成長率が高く、上昇トレンドが続きそうな銘柄
・構成銘柄などの特徴が似ており、かつ保有コストが低い銘柄

また、利確した銘柄が値下がりしている場合は、割安感のあるうちに買い直す方法もあります。ただし、そのまま下落が続く可能性もあるので、実際の投資判断は慎重に行いましょう。

株式・投資信託を利確して買い直すデメリット

株式・投資信託を利確して買い直すと、税金や手数料が負担になることがあります。具体的にどのようなデメリットがあるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

【1】利益に税金がかかる

株式・投資信託に限らず、金融商品の利益には税金がかかります。復興特別所得税がある2037年12月までは、所得税と住民税を合わせて20.315%の税金が課されます。

この税金は、あくまで利益を確定させた時点で発生するため、含み益(金融商品を保有したまま)の状態では課されません。実際に100万円分を利確したとして、どれくらいの税金になるのかを計算してみましょう。

<利確にかかる税金>
1年間の利益×税率=その年に課される税金
100万円×20.315%=20万3,150円

金融商品の税金は「利益×税率」で計算されるため、利確する金額が多いほど税負担は大きくなります。

【2】手数料がかかる

金融機関や銘柄にもよりますが、株式・投資信託の売却には手数料がかかることもあります。例えば、国内株式では「約定代金100万円までは1,000円」、外国株式では「約定代金×0.5%」などの形式で、購入時または売却時の手数料が決められています。

仮に100万円分の外国株式を利確するとして、0.5%のコストがかかる場合の手数料を計算してみます。

<取引にかかる手数料>
約定代金×手数料の割合=利確したときの手数料
100万円×0.5%=5,000円

特殊なプランやキャンペーンなどを利用しない限り、上記のような手数料は基本的にかかります。ただし、投資信託については保有中にも手数料がかかるため(※)、必ずしも利確でコストがかさむわけではありません。

(※)投資信託の保有中には、「信託報酬」と呼ばれる手数料が日々計上される。

株式・投資信託を利確する前には、金融機関のサービスやプランを確認しておきましょう。

【3】積立投資の効果がなくなる

購入金額などを一定に保つ積立投資には、金融商品の平均購入単価を平準化する効果があります。中でも、購入金額と頻度を一定にする手法は「ドル・コスト平均法」と呼ばれており、価格が下がったときには多くの数量を購入し、価格が上がったときには少ない数量を購入します。結果として平均購入単価が平準化されるため、相場状況にもよりますが損失のリスクを抑えやすくなります。

上記の効果は、あくまで積立投資を続けることで生じるものです。そのため、利確によって一部でも保有銘柄を手放すと、これまで積み重ねてきた効果が失われます。

金融商品を利確して買い直すタイミング

金融商品を利確して買い直すと、状況によっては損をしてしまいます。どのような場面でメリットがあるのか、以下では具体的なタイミングを紹介します。

上昇トレンドが続いているとき

相場の上昇トレンドがしばらく続きそうな場面では、一度利確して買い直しても利益になる可能性があります。現金が必要になる場合は別ですが、金融商品を保有していない空白期間ができる点や手数料を考えると、わざわざ売買を繰り返す必要はないかもしれません。

ただし、自分が購入する個別銘柄や投資信託などの値動きが相場全体の動きと一致するわけではありませんので、注意が必要です。

金融商品が一時的に高騰したとき

株式・投資信託が一時的に大幅に上昇した場合は、一度利確して下落後に買い直すと、利益を増やせる可能性があります。具体的にどのようなケースが当てはまるのか、分かりやすい例を紹介します。

<利確後の買い直しで得をするケースの例>

1株=300円で100株を購入した銘柄が、一時的に1株=450円まで上昇し、その後1株=400円まで戻ったとします。この銘柄が再び1株=500円に上昇する場合、一度利確するかどうかで利益は以下のように変わります。

◆一度も利確せずに株価500円で売却した場合
(売却時の株価-購入時の株価)×保有株式数=最終的な利益
(500円-300円)×100株=2万円

◆株価450円で利確した後に400円で買い直し、株価500円で売却した場合
1回目の取引:(450円-300円)×100株=1万5,000円
2回目の取引:(500円-400円)×100株=1万円
1万5,000円+1万円=2万5,000円(最終的な利益)

上記の例では、利確後に買い直したほうが5,000円分の得をしています。買い直した後に上昇するとは限りませんが、投資手法の一つとして覚えておきましょう。

決算内容が悪かったとき(株式投資)

企業がその年の業績を公開する決算は、投資家の動向に影響を及ぼします。前期から悪化していたり、期待に届かなかったりした場合は、失望感から株式を手放す投資家が増える恐れため、株価は下がる可能性が考えられます。

そのため、決算内容が悪かったときは下落を見越して、一時的に利確する方法が選択肢になります。ただし、決算内容はあくまで判断材料の一つなので、必ずしも株価に影響するとは限りません。

他に魅力的な金融商品を見つけたとき

保有中の金融商品より魅力的な銘柄を見つけた場合も、利確後の買い直しを考えるタイミングです。

例としては、高い利回りを期待できる銘柄や、将来性・成長性のある銘柄が挙げられます。保有中の銘柄にも続けて投資をしたい場合は、利益分のみ他の金融商品に回す方法もあります。

<利益分のみ他の金融商品に回す例>
50万円で購入した銘柄Aを、評価額が70万円に上がってから売却したとします。当初と同じ金額を銘柄Aに投資しつつ、新しい銘柄Bも購入したい場合は、次のように投資金額を振り分けます。

銘柄A:利益のうち50万円を投資
銘柄B:利益のうち20万円を投資

金融機関にもよりますが、株式や投資信託には数百~数千以上の銘柄があるため、情報収集をすれば魅力的なものが見つかるかもしれません。

利確して買い直したときの税金を抑える方法

利確して買い直すデメリットの中で、税金については事前の準備で対策ができます。税金を抑えながら運用したい方は、以下で紹介する制度の利用を考えましょう。

NISA口座で取引をする

国が実施するNISAは、金融商品から得た利益が非課税になる制度です。年間の非課税投資枠が設けられており、この範囲内であれば所得税・住民税のいずれも課されません。

NISAには成人を対象とした「一般NISA」「つみたてNISA」の他にも、未成年(18歳未満)を対象にした「ジュニアNISA」があります。参考として、以下では一般NISAの概要を紹介します。

制度名 一般NISA
非課税投資枠 年間120万円
非課税期間 最長5年間
対象商品 上場株式、投資信託、ETF、REITなど
非課税の対象 譲渡益、配当金、分配金

例えば、一般NISAでは年間120万円の購入金額を超えない限り、株式や投資信託から得た利益が全て非課税になります。なお、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAは2023年末での廃止が決まっており、2024年1月からは以下の「新NISA」が始まります。

制度名 新NISA
非課税投資枠 成長投資枠:年間240万円
つみたて投資枠:年間120万円
非課税保有限度額 1800万円
非課税期間 無期限
対象商品 成長投資枠:上場株式や投資信託など
つみたて投資枠:投資信託やETF
非課税の対象 譲渡益、配当金、分配金

いずれのNISAも金融機関によって対象商品が異なるので注意してください。

確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)を活用する

確定拠出年金は、あらかじめ設定した毎月の掛金を拠出して、その資産で金融商品を運用する制度です。積み立てた資産については、原則60歳以降になってから年金または一時金として受け取れます。

確定拠出年金の対象商品には、投資信託や定期預金、年金保険があります。株式は含まれませんが、これらの金融商品で生じた運用益(譲渡益や分配金など)は全て非課税です。また、加入者個人が拠出した掛金は所得控除の対象になり、受給時には退職所得控除または公的年金等控除が適用されます。

なお、確定拠出年金は個人で加入する「iDeCo(イデコ)」と、勤務先の会社で加入する「企業型DC」に分けられます。いずれも年金資産を形成するための制度ですが、以下のように仕組みが異なります。

制度名 iDeCo 企業型DC
対象者 国民年金の被保険者 厚生年金の被保険者
掛金の拠出 加入者個人が負担する 事業主が負担する(※)
掛金の税制優遇 全額が所得控除の対象 会社の損金に算入できる(※)
運用商品 個人で加入した金融機関の商品 企業が委託した金融機関の商品
運用手数料など 個人で負担する 事業主が負担する

年金資産に不安がある方や、投資信託の税金を抑えたい方などは、一つの選択肢として確定拠出年金を検討してみましょう。

(※)「マッチング拠出」が導入されている企業では、事業主負担分に上乗せする形で加入者個人も拠出できる。個人で拠出した分は、全額が所得控除の対象になる。

利確後の無理な追いかけには注意

金融商品を利確してから買い直す場合は、上昇トレンド中の無理な取引に注意してください。取引価格が何倍にも跳ね上がったときに買い直すと、その後の下落で大きな損失を抱えるかもしれません。大幅に上昇している最中は高値で購入してしまうリスクがあるので、取引価格が一度落ち着いてから買い直すことも考えましょう。

また、同じ理由で利確のタイミングにも注意が必要です。上昇トレンド中に売却すると、取引価格がまだ上がるときに金融商品を手放してしまう可能性があります。類似した銘柄の値動きなども併せて確認した上で、慎重にタイミングを判断しましょう。

利確後の買い直しは慎重に判断しよう

株式や投資信託を利確して買い直すと、いったん利益を確定できたり、手持ちの現金を増やせたりなどのメリットがあります。他の金融商品に投資する余力もできますが、その反面で税金や手数料がかかる点はデメリットです。

また、無理な追いかけにも注意が必要です。相場は往々にして自分の思った方向に動かないことがあります。どんな局面になっても対応できるように、投資をするなら余裕資金で対応することが重要です。そのうえで、ご自身に合った投資方法を慎重に判断しましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。

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