私立高校にかかる学費の平均とは?活用できる制度もご紹介

高等学校等就学支援金の制度が改正されたことで、2020年4月からは私立高校でも授業料の実質無料化が始まりました。しかし、全ての学費が支援される制度ではないため、進学にあたって不安を感じることもあるでしょう。

学費が不足しているご家庭でも、事前の準備次第では無理なく私立高校に通える可能性があります。本記事では、私立高校で3年間にかかる学費の一覧と、学費が足りないときの対策をご紹介します。

私立高校の学費一覧と3年間でかかる金額

一般的な私立高校に3年間通うと、学校外活動費を含めた学費は約292万円になります。以下の学費一覧は、文部科学省が公表している「令和3年度子供の学習費調査」の結果をもとに、私立高校における3年間の平均額をまとめたものです。

私立高校の学費一覧 1年間の平均金額 3年間に換算した金額
授業料 28万8,443円 86万5,329円
学校納付金等 11万5,808円 34万7,424円
修学旅行・遠足・見学費 2万6,549円 7万9,647円
図書・学用品・実習材料費等 6万4,259円 19万2,777円
教科外活動費 4万7,013円 14万1,039円
通学関係費 12万9,155円 38万7,465円
学校外活動費 30万4,082円 91万2,246円
合計 97万5,309円 292万5,927円

上記の他、私立高校では入学金やその他の雑費(※)もかかります。大学受験を目指すために通塾し、部活動などの教科外活動にも参加する場合は、3年間で約300万円の学費がかかることを想定しておきましょう。

(※)文部科学省の調査によると、「入学金等」の平均は年7万1,844円、「その他」の平均は年7,291円。

私立高校(全日制)で3年間にかかる学費一覧

2022年12月に文部科学省が公表した資料(※)によると、全日制の私立高校で1年間にかかる学費は75万362円、3年間に換算すると225万1,086円です。公立高校(3年間で92万7,783円)に比べると学費は2倍以上であり、全体の4割弱は授業料が占める結果となりました。

ここからは各費用に分けて、私立高校で3年間にかかる学費一覧をご紹介します(※入学金等とその他の費用は除く)。

(※)参考:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します

授業料

文部科学省によると、私立高校の授業料は平均で年28万8,443円、3年間に換算すると86万5,329円です。学費全体の38.4%を占めており、本記事でご紹介する中では最も高い費用になりました。

授業料は高等学校等就学支援金の補助対象であるため、世帯によっては最大で年39万6,000円の支援を受けられます。支援対象のご家庭は、毎年7月頃に学校から配布される案内を確認し(※新入生は4月頃)、手続きを忘れないようにしましょう。

学校納付金等

私立高校の学校納付金等は、平均で年11万5,808円、3年間に換算すると34万7,424円です。公立高校に比べると3~4倍ほど高く、学費全体の15.4%を占めています。

学校納付金とは、教育を受けるために必要な経費のうち、授業料を除いた費用の総称です。高校によって含まれる費用は異なりますが、文部科学省の資料では施設整備費等や学級・児童会・生徒会費、PTA会費などが含まれています。

修学旅行・遠足・見学費

私立高校の修学旅行費等(遠足・見学・移動教室を含む)は、平均で年2万6,549円、3年間に換算すると7万9,647円です。公立高校に比べると年間7,000円ほど高いですが、他の学費よりは差が小さい結果となりました。

修学旅行費等の金額は、行き先や回数によって異なることが予想されます。各学校の行事日程やパンフレットなどを確認し、大まかな費用を把握しておきましょう。

図書・学用品・実習材料費等

私立高校の図書・学用品・実習材料費等は、平均で年6万4,259円、3年間に換算すると19万2,777円です。公立高校では約17%を占める費用ですが、私立高校での学費全体に対する割合は8.6%となっています。文部科学省の資料では、文房具類や体育用品の他、授業・実験・実習のための図書や材料の購入費も含まれています。

教科外活動費

私立高校の教科外活動費は、平均で年4万7,013円、3年間に換算すると14万1,039円です。学費全体に対する割合は6.3%であり、公立高校より年間7,000円ほど高い結果になりました。教科外活動費とは、部活動や運動会などに参加するための費用です。文部科学省の資料では、学芸会や芸術鑑賞会、臨界・林間学校の参加費用も含まれています。

通学関係費

私立高校の通学関係費は、平均で年12万9,155円、3年間に換算すると38万7,465円です。授業料に次いで高い費用であり、学費全体に対する割合は17.2%になりました。

文部科学省の資料では、制服や通学用品の購入費も通学関係費に含まれています。なお、通学費は交通手段に左右されるため、同じ学校でも生徒によって異なる可能性があります。

私立高校は学校外活動費も高い傾向にある

学校外活動費とは、通塾や家庭教師への依頼、習い事、自宅学習、体験活動などにかかる費用です。以下の表は、文部科学省による「令和3年度子供の学習費調査」の結果をもとに、公立高校と私立高校の学校外活動費を比較したものです。

学校外活動費の内訳 公立高校の平均額(年間) 私立高校の平均額(年間)
家庭内学習費 2万2,640円 3万1,786円
通信教育・家庭教師費 1万6,301円 2万6,530円
学習塾費 12万397円 17万1,149円
その他の補助学習費 1万2,039円 1万7,174円
体験活動・地域活動 1,342円 1,903円
芸術文化活動 9,460円 1万6,501円
スポーツ・レクリエーション活動 6,778円 1万2,956円
国際交流体験活動 2,045円 8,118円
教養・その他 1万2,708円 1万7,965円
合計 20万3,710円 30万4,082円

(参考:文部科学省「2 調査結果の概要」)

私立高校の学校外活動費は平均で年30万4,082円であり、公立高校と比べて年間10万円ほど高い傾向にあります。3年間に換算すると91万2,246円になるため、ご家庭によっては授業料より負担が大きくなるでしょう。中でも学習塾などの補助学習費は、入学前からシミュレーションをしておくことが重要です。

私立高校(定時制・通信制)の3年間の学費は安い?

進学先にもよりますが、定時制の私立高校における学費は年50万円~100万円が目安です。入学金の影響で初年度は高い傾向にありますが、3年間の学費は全日制と大きく変わらないと考えられます。国の高等学校等就学支援金制度で比較しても、定時制・全日制の私立高校は月の支給限度額が同じ金額に設定されています。

一方で、通信制の私立高校における学費は、年25万円~120万円が目安になります。登校日数やコースによって学費が大きく変わるため、入学手続きの前に3年間の学費を調べておくことが望ましいでしょう。

参考として、以下では高等学校等就学支援金制度の支給限度額をまとめました。

定額授業料の場合 単位制授業料の場合
全日制の私立高校 3万3,000円/月 1万6,040円/単位
定時制の私立高校 3万3,000円/月 1万6,040円/単位
通信制の私立高校 2万4,750円/月 1万2,030円/単位

(参考:文部科学省「支給期間・支給限度額一覧」)

なお、定時制・通信制の私立高校は4年で卒業するケースが一般的なので、卒業までの学費は全日制より高くなる可能性があります。

私立高校で3年間にかかる学費は無償化でまかなえるのか

国が実施する高等学校等就学支援金制度は、あくまで授業料を支援するための制度です。全日制の私立高校では、年39万6,000円または年11万8,800円の支援を受けられますが、授業料以上に支給されることはありません。

以下では制度の対象となった場合に、3年間で学費負担がどれくらい減るのかを計算してみます。

<年39万6,000円を支給される場合>
年間の就学支援金×3年間=軽減される学費負担
39万6,000円×3年間=118万8,000円

<実際に負担する学費>
3年間の学費-軽減される学費負担=実際に負担する学費
292万5,927円-118万8,000円=173万7,927円

<年11万8,800円を支給される場合>
11万8,800円×3年間=35万4,000円(軽減される学費負担)
292万5,927円-35万4,000円=257万1,927円(実際に負担する学費)

年39万6,000円の支給を受ける場合であっても、私立高校を卒業するまでには約170万円の学費が必要になると考えられます。

私立高校に3年間通う学費が足りないときの対策

学費に不安を感じているご家庭は、早めに資金計画を立てておくことが大切です。ここからは、私立高校に3年間通う学費が足りないときの対策をご紹介します。

1.世帯年収を調整して就学支援金を増やす

国が実施している高等学校等就学支援金は、住民税の課税標準額によって支給額が決まります。したがって、働き方やライフスタイルを調整して世帯年収を減らすと、ご家庭によっては支給額を増やせる可能性があります。

どのように支給額が決められているのか、以下では高等学校等就学支援金の仕組みを簡単にまとめました。

基準額 年間の支給額(全日制)
15万4,500円未満 39万6,000円
15万4,500円~30万4,200円未満 11万8,800円
30万4,200円以上 支給なし

<基準額の計算式>
住民税の課税標準額×6%-住民税の調整控除額=基準額
(※政令指定都市の場合は、調整控除額に4分の3を乗じる。)

住民税の課税標準額は、世帯年収から所得控除を差し引いて計算されます。そのため、iDeCoに加入して小規模企業共済等掛金控除を受けたり、保険料の支払いで生命保険料控除を受けたりする方法でも、高等学校等就学支援金の基準額は減らせます。

2.高等学校等就学支援金以外の制度も活用する

私立高校の学費を支援する制度は、高等学校等就学支援金だけではありません。たとえば、文部科学省は住民税の非課税世帯などを対象に、授業料以外の学費を支援する「高校生等奨学給付金」を実施しています。

ご家庭の状況や進学先にもよりますが、高校生等奨学給付金では最大で年15万2,000円の給付金を受けとれます。補助金制度の一種なので、高等学校等就学支援金と同じく返済の必要はありません。他にも、文部科学省は様々な修学支援策を用意しているため、就学支援金以外の制度も確認してみましょう。

参考:文部科学省「高校生等奨学給付金

3.自治体の支援制度を利用する

お住まいの地域によっては、自治体が独自に実施している支援制度を利用できます。たとえば、東京都は都内の私立高校に通う生徒を対象に、平均授業料まで助成金を支給する「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」を実施しています。本制度は国の就学支援金と併用できるため、学費の負担を大きく減らせるかもしれません。

大阪府が実施する「私立高等学校等授業料支援補助金制度」も、国の就学支援金と併用できる制度です。また、大阪府は授業料以外の支援を目的として、返済不要の「奨学のための給付金」も実施しています。

自治体の支援制度については、所得制限を撤廃する動きも見られるので、積極的に活用することを考えましょう。

参考:東京都私学財団「私立高等学校等授業料軽減助成金事業
参考:大阪府「私立高校生等に対する授業料等の支援について

4.学資保険に加入する

学資保険とは、毎月一定額の保険料を支払うことで、子どもの進学時などに返戻金を受けとれる金融商品です。商品によっては病気・けがなどの保障もあるため、万一の事態に備える対策としても活用できます。

また、学資保険で支払った保険料は、生命保険料控除の対象に含まれます。住民税については最大で年2万8,000円が控除されるため、就学支援金の基準額を下げる効果も期待できます。

5.計画的に資産運用をする

生活にある程度の余裕がある場合は、資産運用もひとつの選択肢です。具体的な方法としては、配当金に期待する株式投資や、投資信託の長期的な積みたてなどがあります。

2024年1月からは新NISAが始まったことで、年間360万円までの金融商品を非課税で購入できるようになりました。投資資金が少なくても、早めにコツコツと積みたてておけば、学費の一部を補えるかもしれません。

金融商品には損失のリスクもあるため、投資先は慎重に選ぶことが重要です。十分な情報収集をした上で、目的や資産状況に合った方法を考えましょう。

私立高校の学費一覧をもとに3年間の計画を立てよう

一般的な私立高校に3年間通うと、約300万円の学費がかかります。国の就学支援金だけでは全額をまかなえないため、私立高校の学費一覧をきちんと確認した上で、卒業までの計画を立てておくことが大切です。不安を感じている世帯は、就学支援金以外の制度や対策も視野に入れて、早めに準備を進めておきましょう。

※本記事は、2024年4月9日現在のものです。今後制度が変更になる場合もあります。

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