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目次
中国経済の再開がサービス業を後押しする
連邦準備制度理事会にとって大切な1週間
FRBの報告書がインフレ率は高すぎると示す
パウエル議長は議会に何を伝えるのか?
米雇用統計に注目
大局を見据える
中国がゼロコロナ政策を緩め、経済を再開してから3カ月以上が経過しました。多くの人が中国経済への恩恵に懐疑的で、コロナウイルス感染症の大きな波が起こることを懸念していました。しかし、私は早くから中国に対して強気の見方をしていました。中国の人口に占めるワクチン接種者の割合が高く、再開に成功した他の国よりもはるかに高いことに勇気づけられたためです。さらに、この再開は経済にとって途方もない力になり得ると考えたからです。
なぜ私がそう思ったのか?私は、欧米先進国がパンデミック後に再開した後、需要が急速に増加したことを目の当たりにしました。また、中国のゼロコロナ政策は、これらの国々の厳しい条件よりもはるかに長く続いたことから、私は、サービス部門を大きく後押しするような、より高水準の潜在的な需要があると考えました。現在、その考えが証明され始めています。
この再開が中国経済、特にサービス業に大きな好影響を与えていることを示す兆候が見られます。例えば、Caixin/S&Pグローバルのサービス購買担当者指数(PMI)は1月の52.9から2月の55.0に上昇し1 、公式の中国NBS 非製造業購買担当者指数は1月の54.4から2月の56.3に上昇し、2021年3月以来の高い水準を記録しました2 。以前私が予想した「リベンジ消費」が既に始まっています(製造業の活動も改善したことも注目すべき点です)。
昨年秋の経済活動の再開発表以来、中国の強気派が勢いづいているのは驚くにはあたりません。しかし、先週末、李克強首相による政府活動報告(GWR)で始まった全国人民代表大会によって、このセンチメントが疑問視され始めました。多くの人々が5.5%~6%の目標を期待していたものの、中国の政策当局が設定した今年の国内総生産(GDP)成長率の目標が「5%前後」であることに投資家は失望しています。
規制が今年大幅に強化されるため、中国が低い目標を設定したという最悪の事態を想定している人もいます。また、中国が自国経済に大きな刺激を与えないというメッセージを発していると考える人もいます。しかし、私はそのどちらにも当てはまらないと考えています。政策立案者は、プラットフォーム経済を支持し、個人事業者や起業家の権利を保護することを約束したと述べています。さらに、政策立案者は、より効果的で大幅な緩和的財政政策を公約に掲げています。そうしたことから、私は成長目標については、よりシンプルな視点を持っています。つまり、2022年の困難な時期を経て、政策立案者はハードルを低くし、簡単にそれを打ち破ることができるようにあえて設定しているのかもしれないと考えています。
今週はFRBにとって大切な1週間となります。数日前に金融政策報告書が公表され、これは3月7日に行われるパウエルFRB議長の半期に一度のハンフリー・ホーキンス議会証言の前触れとなります。そして、3月10日には米国の2月雇用統計が発表されます。これは、FRB関係者がかなりタカ派的な発言をしたことを受けてのことです。
私は、これらのコメントを、市場を静まらせ、金融緩和を早まって先走ることを阻止するためのFRBのキャンペーンの一部と見ています。私はこれらの発言に怯えてはいません。実際、FRBが市場を静まらせようとしていないのであれば、私は怯えてしまうでしょう。
金融政策報告書について少し触れておきましょう。報告書では、これまでFRBから何度も聞かされてきた、「インフレは高すぎ、景気は減速する必要がある」という内容が繰り返されました。しかし、金融政策報告書は常に後ろ向きの内容が多く、これは特段驚くべきことではありません。私は、FRBが何を考えているのかを知ることができる「特別な話題」の方に興味があります。
例えば、FRBは労働市場の分析に取り組み、労働力人口の低さの原因を探り、今後も厳しい状況が続くと予想しています。報告書はまた、FRBのバランスシートの進展と市場への影響についても取り上げています。FRBは、国債市場などの分野で市場の流動性が低いことを指摘しました。FRBは、市場の機能と流動性を管理するために、量的引き締め戦略を変更する必要があるかもしれないと認識しました(これは、パウエル議長の議会証言でも重要なトピックになりそうです)。興味深いことに、報告書は、高金利のためにFRBの利払い費が大幅に増加し、その結果、純利益がマイナスになったことも指摘しています。
金融政策報告書から私が得た最も大きな印象は、インフレ期待が十分に定着していると判断したことです。長期的な消費者物価とマーケットのインフレ期待が「FOMC(連邦公開市場委員会)の長期的な2%のインフレ目標と概ね一致している」との詳細な例を挙げ、さらに短期のインフレ期待が2022年半ばの水準より低くなっていることにも言及しています6 。
パウエル議長のハンフリー・ホーキンス証言については、もちろん、FRBが現在のインフレ状況にどの程度満足しているのか、金融政策についてどのような計画を立てているのかについて、パウエルが何を話すかについて大きな憶測を呼んでいます。パウエル議長は、デイリー総裁とボスティック総裁のタカ派的な発言をほぼ踏襲し、インフレが引き起こす問題を強調し、タフさを維持すること、特にターミナル・レート(利上げの終着金利水準)をしばらくの間維持することを約束するのではないかと思います。しかし、パウエル議長は、FRBが最終的にデータに依存することを強調すると思います。
では、それは何を意味するのでしょうか。行間を読む必要がありそうです。このような発言は、FRBが金利を6%以上に引き上げなければならないことを意味しません。私は、FRBは25ベーシスポイントの利上げをあと2回行い、その後、厳しい発言を続けながら「条件付き一時停止」を実施する可能性が高いと考え続けています。FRBは、遅かれ早かれ一時停止する理由として、インフレ期待の落ち着きをより重視する方向に傾くだろうと考えています。FRBは将来のインフレ率を決定する上でインフレ期待が重要であるとする立場であり、現在のインフレ期待を肯定的に評価することで、利上げ回数を減らす側に回る可能性が高いと思います。私は、米国経済が私の予想よりはるかに悪化しない限り、今年の利下げはないと考えていますが、現在の米国経済の強さを考えれば、それは妥当なことといえるでしょう。
最後に、金曜日に米国の雇用統計が発表されます。雇用者数はむしろ増加すると思われますが、雇用者数が賃金の伸びよりも予想を上回った1月の統計と同様の結果になることを期待したいと思います。もちろん、雇用統計では、労働参加率と、インフレへの影響を踏まえて、特に時間当たり平均賃金が注目されます。
今週は興味深い、イベント盛りだくさんの1週間になるはずです。しかし、あまり近視眼的になりすぎないようにしたいと思います。投資家はマラソンをしているのであって、疾走しているのではないので、一歩下がって大局を見据える必要があると思います。つまり、金融政策の不確実性、そして米国の債務上限問題が迫っていることから、今後数カ月はボラティリティが高くなることが予想されます。また、今後数年間、主要な資産クラス間で十分に分散され、余計な雑音に見向きもせず、長期的な目標に集中するという、さらに大きな視野で見る必要があるということです。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
1. 出所:中国CaixinサービスPMI、2023年3月2日
2. 出所:中国国家経済局(NBS)、2023年3月5日
3. 出所:ブルームバーグニュース“Fed’s Bostic Open to Seeking Higher Rate Peak If Data Stays Hot” 、2023年3月2日
4. 出所:ブルームバーグニュース“Fed’s Daly Says More Rate Hikes Likely Needed to Cool Inflation” 、2023年3月4日
5. 出所:連邦準備制度理事会、クリストファー・ウォーラーによる講演録、2023年3月2日
6. 出所:連邦準備制度理事会、金融政策報告書、2023年3月3日
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