日本証券業協会によると、2021年末時点でNISAの口座開設数は1,000万を超えています。今では多くの投資家が節税につながる制度として、一般NISA・つみたてNISAを利用しています。これらの制度は、2024年から新しくなることをご存じでしょうか。
本記事では新NISAの概要や仕組み、従来制度の違いを分かりやすく解説します。活用のポイントを押さえて、今後の資産運用に役立てていきましょう。
目次
新NISAとは、2024年1月から始まる新しい税制優遇制度です。一般NISA・つみたてNISAとは別に実施される予定であり、国民の安定的な資産形成や、市場への成長資金の供給を目的として考案されました。従来制度(一般NISA・つみたてNISA)からどのような点が変わるのか、主な違いを見ていきましょう。
主な違い | 新NISA | 一般NISA | つみたてNISA | |
---|---|---|---|---|
投資枠の種類 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 | ─ | ─ |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間240万円 | 年間120万円 | 年間40万円 |
非課税期間 | 無期限化 | 無期限化 | 最長5年間 | 最長20年間 |
対象商品 | 投資信託、ETF(※) | 上場株式、投資信託など | 上場株式、ETF、投資信託、REITなど | 投資信託、ETF(※) |
口座開設期間 | 恒久化 | 恒久化 | 2023年まで | 2042年まで |
(※長期積立や分散投資に適した、一定の条件を満たす銘柄のみ。)
上記は2023年1月時点での比較表であり、新NISAについては過去に制度が見直されています。制度開始までに変更される可能性もあるので、利用を考えている方は最新情報をチェックしておきましょう。
令和5年度の税制改正大綱では、新NISAにおける変更点が公表されました。その中でも、特に押さえたい3つの変更点を紹介します。
新NISAでは、非課税期間や口座開設期間が無期限化・恒久化される予定です。
従来制度では運用益が非課税になる期間が制限されているので、口座を開設した時期によっては非課税の期間が短くなってしまうデメリットがありました。その点、新NISAはいつから始めても非課税になる期間がずっと続きます。
年間投資枠が拡充された点も、新NISAの大きな変更点です。
従来制度の一般NISAの非課税投資枠は年間120万円、つみたてNISAは年間40万円に分けられ、同時に活用することができませんでした。しかし、新NISAのつみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は240万円に分けられてはいますが、どちらも同時に活用できます。
生涯非課税限度額は、従来のNISAにはない制度です。生涯非課税限度額とは運用期間中に使える投資枠の総額のことで、1,800万円の限度額(このうち、成長投資枠は1,200万円まで)が設定されます。毎年360万円を積み立てると5年間で使い切ってしまうので、計画的な運用が求められます。
生涯非課税限度額の注意点としては、簿価(取得価額)で管理される点が挙げられます。もし毎年360万円を積み立てて5年間で使い切ってしまった場合でも、100万円を売却した際に簿価が1,700万円になるので、100万円分が再利用できます。
ここからは、新NISAを使いこなす3つのポイントを解説します。
つみたて投資枠と成長投資枠は、状況に応じて併用しましょう。
つみたて投資枠は投資できる対象が221銘柄(2023年2月9日時点)に限られていますが、成長投資枠のほうが対象銘柄(上場株式や投資信託など)の選択肢が多くなっています。そのため、成長投資枠のほうが相場に合わせた投資を行いやすいといえるでしょう。
恒久化のメリットを活かすには、長期保有が大切です。長期保有をすることで、リターンの振れ幅が小さくなり、安定した収益を期待できるとされています。もちろん銘柄によっては長期保有のメリットを活かせないものもたるため、10年後20年後の価値がどうなっているのかを考えた上で投資する必要があります。
新NISAの対象商品は、利用する金融機関によって異なります。積立金額やポイントプログラム、利用できるツールなどにも違いがあるので、情報収集をした上で使いやすい金融機関を選びましょう。
一般NISAやつみたてNISAの保有商品は、新NISAにそのまま移管する(ロールオーバー)ことはできません。2023年1月現在では、新NISAの外枠でこれまで通りの非課税措置が適用される予定です。
従来制度は新NISAの生涯非課税限度額に影響しないため、すでに一般NISA・つみたてNISAを利用している人も、前向きに新NISAへの切り替えを検討しましょう。
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、一般NISAとつみたてNISAを組み合わせたような仕組みになっています。非課税投資枠や非課税期間などは異なるので、従来制度との違いを理解した上で自身の状況に合わせた活用方法を検討してみましょう。