変額保険は運用によって受取額が異なる特殊な保険です。死亡保障がついた投資信託とでもいうべき保険商品で両者はよく似ています。本記事では変額保険と投資信託の違いや、どのような人に向いているのかについて解説します。
目次
変額保険の特徴は所得控除と保障
変額保険は払い込んだ保険料を株式や債券などの金融商品で運用し、その結果によって解約返戻金や保険金額が変わります。契約の時点で受取額が決まっている一般的な保険商品とは大きな違いです。そのため加入にあたっては運用のリスクをよく理解しておかなければなりません。販売する側に変額保険販売資格という独自の資格が必要とされていることからも商品の特殊性がわかります。
変額保険でよく利用されている商品は変額個人年金保険です。保険料支払い後、一定の据置期間を経てある時期(60歳など)から支給を開始するものです。保険料の支払い方法は一時払いが多い傾向ですが積み立ての場合もあります。受取額については、受給開始時に確定するものや年金の受取期間中も変動するものなどタイプはさまざまです。
変額保険は、商品によって運用の対象となる金融商品が異なります。国内株式や債券、先進国株式など資産クラスを選べるタイプが一般的です。運用する資産配分を自動的に調整(リバランス)できるものもあり、変動の仕組みはさながら投資信託に似ているともいえるでしょう。では変額保険と投資信託の違いはなんでしょうか。主な違いは以下の2つです。
・所得控除がある
・保障がある
所得控除がある
生命保険に加入していると所得税と住民税で生命保険料控除を受けることができます。2012年1月1日以降に契約した保険には生命保険料控除と介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つがあり所得税の控除額はそれぞれに4万円ずつです。変額個人年金保険は「生命保険料控除」に該当します。変額保険は個人年金保険のように年金で受け取るタイプもありますが、「個人年金保険料控除」の対象外です。
掛け金は生命保険料控除に該当するため、他の終身保険や収入保障保険に加入して控除額を上限まで使っている人にとって税制メリットがないことは確認しておきましょう。
保障がある
変額保険は生命保険のため、契約期間中に亡くなった場合は保険金の支払いがあります。受取金額は運用実績によって変わりますが最低保障額を設けているのが一般的です。
変額保険と比較!一般的な投資信託の3つの特徴
今度は、一般的な投資信託について、変額保険と比較したときの3つの特徴を紹介します。
・コストが低い
・銘柄数が多い
・制約が少ない
コストが低い
投資信託には保有している間ずっとかかる信託報酬があります。変額保険は投資信託の信託報酬とは別に運営費用がかかり、他にも保険関係費用などが数%かかるのが特徴です。一般的には投資信託のほうがコストは低いといえるでしょう。ただし投資信託の中には販売手数料や高い信託報酬がかかるものもあるので、必ずしも変額保険のコストがすべて投資信託商品を上回るということではありません。
銘柄数が多い
一般社団法人投資信託協会によると2020年1月末時点の投資信託の銘柄数は不特定多数に向けて販売されている公募投信だけで6,000本以上あります。50人未満の投資家に向けた私募も含めると約1万3,000本と銘柄数が多岐にわたります。また銘柄の種類もインデックスファンドやテーマ型投信、ターゲットイヤーファンド(年齢の経過によって資産配分を調整する)など多種多様です。
制約が少ない
加入年齢、受取年齢や保険金額、据置期間などさまざまな制約がある変額保険と違い、投資信託は基本的にいつでも誰でも購入し、また解約することができます。さらに100円程度から積立を設定できる商品があるなど、投資信託のほうが柔軟性は高いと言えます。
年金や保障のための変額保険。もちろん生命保険控除枠を利用できることも見逃せない
変額保険は制約が多くコストも比較的に高い傾向です。純粋に資産運用のみを目的とするのであれば投資信託のほうがメリットは多いといえるでしょう。ただし生命保険料控除の枠を利用できるのであれば変額保険にもメリットがあります。たとえば一般的な生命保険に加入していない人が変額保険に加入すると所得税率が15%の場合、上限4万円まで控除が利用できれば最大で年間6,000円(4万円×15%)の節税が可能です。
住民税を10%とすると住民税は最大で年間2,800円(2万8,000円×10%)となり年間節税額は合計で8,800円となります。他にも変額保険には、「年金か一括か受給方法が選択できる」「万が一の際の保障を確保しつつ運用もできる」といった点も魅力です。人生設計にうまく合うような保険のプランニングができれば安心につながるのではないでしょうか。
人生設計に合った運用商品を選ぼう
変額保険は、その運用結果によって受取額が変わる生命保険です。運用という観点で見ると投資信託よりもコストが高めで柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。しかし「所得控除を得られる」「死亡時などの保障が確保できる」といったメリットもあらためて確認したいところです。人生設計にあったプランを検討したうえで、その必要性を検討しましょう。