資産運用をして、お金を増やしたいと思う人は多いでしょう。しかし、投資は「難しそう」「損をしそう」だと敬遠していませんか。今回は、目的別の投資手法を取り上げ、投資をする前に知っておきたいリスクとリターンも交えながら徹底解説します。
目次
資産運用をする前に知っておくべき、「リスク」と「リターン」の関係
資産運用とは、投資や貯蓄をして自分の資産を増やすことです。そして、投資には「リスク」と「リターン」がつきものです。
リスクとリターンは、表裏一体。必ずペアでやってくる
一般的に「リスク」という言葉は、危険性などを表すときに使われています。できることなら回避したいと考えるのも当然です。
しかし、資産運用では、「リスク」という言葉は危険性というよりも、「振れ幅」を意味します。将来の運用成果(リターン)が「どのくらい減るか」あるいは「どのくらい増えるか」、その増減の幅を「リスク」と表現しているのです。
-リスクがあるから、リターンがある
ブランコを思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。大きく前に振れた分、後ろにも大きく下がります。安定して揺れるブランコは、前に出たのと同じ分だけ後ろに下がります。
投資も同じです。大きく増える可能性があるものは、大きく減る可能性もあります。これを、「ハイリスク・ハイリターン」と呼びます。リスクが低ければ、リターンも少なくなります。
また、「リターン」とは、運用成果のことを指し、利益が出た場合のみを表現しているわけではありません。運用成果がマイナスだったとしても、「リターン」と呼びます。
-投資する金融商品によってさまざまなリスクがある
金融商品のリスクは、商品によって異なります。投資する際には、リスクの種類と状況をしっかり確認することが大切です。投資には各種リスクが伴うため限定は出来ませんが、投資における主なリスクは下記の5つです。
・価格変動リスク:金融商品の値動きによるリスク。企業業績・為替相場・景気動向などにより変動すること
・為替変動リスク:円と外国の為替相場の変動により、海外の金融商品などに投資した場合の資産の価値が変動する可能性のこと
・金利変動リスク:金利の変動により資産の価値が変動する可能性のこと
・信用リスク:倒産や債務不履行等により、元本の返済や金利の支払いが滞ったり、停止されたりすること
・カントリーリスク:投資対象国や地域において、政治や経済状況の変化によって証券市場や為替市場に混乱が生じた場合、そこに投資した資産の価値が変動する可能性のこと
投資には、余剰金を使うべき
投資には、まず金融商品を購入するための資金が必要です。このとき、必ず「余剰金」を使うことを肝に銘じましょう。日々の生活費や目的があって貯金しているお金など「なくなったら困るお金」は、投資に使わないようにしましょう。
それでは、投資のための資金である「余剰金」とは実際にはどのようなお金のことを指すのでしょうか。例えば、生活費や貯蓄、余剰金については以下のように考えてみたらよいかもしれません。
・生活資金:毎月の生活費。3ヵ月分程度確保しておく。
・緊急用貯蓄:突発的な出来事(ケガや病気、事故など)のためのお金。生活費6ヵ月分程度。
・目的別貯蓄:教育費用・旅行費用・住宅資金・車購入費など、目的が決まっているお金。
・余剰金:10年程度は使う予定のないお金。
現在保有している資金を整理して、「生活資金・緊急用貯蓄・目的別貯蓄」に当てはまらないものがあれば、それが余剰金です。
投資商品には、様々な種類がある
投資する金融商品の種類を見てみましょう。同じ金融商品でも、発行元や運用方法によってリスクは異なります。リターンは少しでも堅実な運用がしたいのか、リスクは高くても大きなリターンを求めたいのか、自分の目的に合った金融商品を探しましょう。
「貯めたい」に向いている投資商品
増やすことより、貯めることを重視する金融商品です。元本保証があり、固定金利のため運用成果が確定しているなど、確実性の高さが特徴です。増やす必要がない資金、将来のために確保しておきたい資金などに向いています。
-預貯金
預貯金は、最も安全な金融商品のひとつです。大きくは増えませんが、減りもしません。預金保険機構がひとつの金融機関ごとに1,000万円まで保護しているため、万一金融機関が破綻しても安心です。
-生命保険
生命保険の個人年金や養老保険などの貯蓄型商品も、低リスク・低リターン商品です。固定金利で、満期の金額も解約返戻金額もあらかじめ決まっているため、確認してから契約することができます。
「増やしたい」に向いている投資商品
発行元や運用方法によってリスクの大きさは異なりますが、収益が期待できる分、安全性は低くなります。教育資金など、減ると困る資産形成には向いていません。
-債券
国や地方公共団体、会社などが、お金を借りるために発行するものです。つまり、債券は「借用証書」のようなものです。満期時には、元本あるいはあらかじめ約束した金額を受け取れるほか、定期的に「利子」を受け取れるものもあります。主なリスクとしては、有価証券の発行体である国や企業などが財政難、経営不振などの理由により、利息や元本などをあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなることが起こる信用リスクなどが挙げられます。
一般的には、満期まで保有することでリスクを抑えられますが、途中で売却することもできます。収益性は低い分、株などに比べて相対的にリスクが低いので安全性は高めです。
-株式
会社が活動資金を集めるために発行する「株式」を売買します。株式の価格が値上がり、購入価格よりも高いタイミングで売却すると利益を得られます。逆に、購入時より価値が下がると利益も減り、もし投資した会社が破綻した場合は、大きな損失に繋がります。
株式投資には、会社が得た利益を株主に還元する「配当金」や、会社の製品やサービスなどの優待を受けられる「株主優待」など、プラスαの利益があることも魅力です。「値上がり益」目的の短期投資ではなく、「配当金や優待」を目的とした長期投資を行う場合は、ある程度のリスクが軽減できます。
余剰資金があるためリスクがあっても「短期で結果を出したい」に向いている投資商品や投資スタイル
取引期間が定められていない投資商品は、長期運用もできますが、デイトレード(日計り取引)などの短期運用にも向いています。より大きな収益を期待するのなら、投資商品の価値が上下する情報を常に仕入れ、売買のタイミングを見計らうことが重要です。
目的のある資産形成には向いていません。しばらく使う予定のない余剰金の範囲内で、減る可能性を理解したうえで行いましょう。
-FX Foreign Exchange(外国為替証拠金取引)
ドルやユーロなどの外国通貨(為替)を売買して利益を得ます。投資先外貨の価値が上がったとき(円安)は利益が増え、逆に下がったとき(円高)は利益が減ることになります。これを「為替変動リスク」といいます。
取引口座の自己資金額(証拠金)に対して、最大25倍までの大きな取引(レバレッジ)が行えます。レバレッジの高い取引は、短期売買に向いています。大きな利益が期待できる反面、大きな損失を被る可能性もあります。自己資金額以上に損をした場合は、負債を抱えることになります。
-デイトレード
デイトレードとは、金融商品の「買う→売る」のサイクルを1日以内に完結させる取引スタイルのことで、その日の終わりにはポジションを閉じ、次の日に新しい取引を開始します。主に個人投資家による取引で、株式・債券取引や外国為替証拠金取引 、商品先物取引、差金決済取引 、株価指数先物取引など市場流動性の高い取引において行われる事が多いです。
デイトレードで最も多い失敗は、保有する銘柄が値下がりした時に早急に対処をせず損失が膨らむことです。
「長期間ゆっくり運用したい」に向いている投資商品
リスクを抑えるためには、「分散投資」が効果的です。一点集中ではなくさまざまな金融商品を購入することを「銘柄分散」、1度に買わずタイミングを分けて購入することを「時間分散」と呼びます。このとき、毎月定額ずつ購入する「積立投資」を行うとさらに効果的です。
-投資信託
投資信託は、株や債券、不動産などさまざまな金融用商品を組み合わせたパッケージ商品で、「銘柄分散」が行えます。短期売買向けのものもありますが、長期運用に適した商品も多くあります。その場合は、毎月コツコツと「積立投資」を重ね、自己資産を増やしていくことで、複利効果を得ることもできます。
その組み合わせによってリスクは異なりますが、運用は専門家が行うこと、少額から投資できることなどから、初心者向けとされています。
-長期運用に適した制度①「つみたてNISA」
NISAとは個人投資家の税制優遇制度で、「つみたてNISA」では投資から20年間、年40万円分の投資に対する利益が非課税となります。また、扱う金融商品は、「販売手数料が無く、信託報酬が低めの投資信託」に限られていて、より低コストでの運用が可能です。
-長期運用に適した制度①「iDeCo(個人型確定拠出年金)」
その名の通り「将来の年金=老後の資産形成」に特化された制度です。扱う商品は「投資信託・保険・定期預金」などリスクの低いものが中心で、運用利益が非課税になるほか、掛金の所得税控除など税制優遇が適用されます。
ただし、1度始めると、60歳以降まで資産の引き出しができません。途中で解約して積み立てをやめた場合も60歳以降まで引き出しができないため、注意が必要です。
投資する前に、「いつ」「いくら」「何のために」増やしたいのか考えておく
10年20年先の老後資金を準備したいのか、来年までにマンションの頭金を貯めるのか、あるいは、使い道は決まっていないけれど「増えたらいいなあ」と思っているのか、しっかり考えておきましょう。
金額や期間などの「ゴール」を決めること、どうなったら手を引くのかなどの「ルール」を定めておくことが、大きな失敗をしないコツです。また、ゴールとルールが明確になることで、どのような投資が向いているのか絞り込むことができます。
長期的にコツコツお金を増やしたい人には
老後資金や子どもの教育資金など、10年20年先の資産形成を目標とする場合は、安全性を重視した運用がいいでしょう。貯蓄型の生命保険や、つみたてNISAを利用した投資信託などで、長期の積立運用を検討してはどうでしょうか。
高い収益性を求める人には
比較的短期でのハイリターンを期待するのなら、収益性の高い株式やFXなどに投資をするのがいいでしょう。ただし、リターンが大きい分、リスクも大きい点には留意が必要です。「目標額に達したら、欲を出さずにやめる」「損失が○%になったら、取り戻そうと考えず手を引く」など、厳しめのルールを決めておき例外なく守ること、冷静で計画的な運用を心掛けることなどが大切です。
目的にあった方法で、効率的な資産運用をめざす
収益を期待する投資に使うお金は、「余剰金×(100-年齢%)」で計算するとバランスがいいといわれています。30歳なら余剰金の70%、40歳なら60%程度を株や投資信託などに投資し、残りは預貯金などで保有しておくと、損失が出た場合に立て直す余力を残せます。
投資を必要以上に怖がる必要はありませんが、やみくもに手を出すことは危険です。「リスクとリターン」を理解し、多くの商品は元本保証が無いことは理解しておきましょう。目標を明確にし、目的に合った方法で、効率的な資産運用を目指しましょう。
※本記事は投資に関