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目次
世界経済見通しの悪化:ロシアのウクライナ侵攻とその影響を踏まえ、国際通貨基金(IMF)は2022年と2023年の世界経済の成長率予想を下方修正
フランス大統領選でマクロン現大統領が勝利:しかし、不満を持つ有権者により、6月の議会選挙がマクロン大統領への反撃の場となる可能性も
FRBにより市場は動揺:最近の米連邦準備理事会(FRB)のタカ派的な発言に市場は動揺。ただし、市場はFRBの発言を恐れるのではなく、歓迎すべきだろう
ロシアのウクライナ侵攻を受け、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを大幅に下方修正。新興国・途上国に関しては、2023年の経済成長の再加速を予想
6月の国民議会選挙では、野党の躍進によりマクロン大統領の政策に変化が生じる可能性も
パウエルFRB議長が5月のFOMCで0.5%の利上げの可能性を示唆
先週もまた、慌ただしく、重要なイベントが相次いだ一週間でした。以下、世界経済の成長、フランスの大統領選挙、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派的発言という3つの重要なトピックについて解説します。
ロシアのウクライナ侵攻とその影響を踏まえ、国際通貨基金(IMF)が成長率予想を下方修正したのは当然のことと言えるでしょう。IMFは、2022年の世界経済成長率を1月時点の4.4%から3.6%に下方修正し、2023年の世界経済成長率については3.6%との見通しを示しました 1 。世界経済を先進国と新興国・途上国に分けると、先進国については、2022年が3.3%、2023年が2.4%と、1月の予測(2022年:3.9%、2023年:2.6%)から下方修正しました 1 。新興国についても、2022年が3.8%、2023年が4.4%と1月の予測(2022年:4.8%、2023年:4.7%)から引き下げられましたが、これは、2023年に経済成長が再加速することを示唆しています。
また、ロシアのウクライナ侵攻により、IMFはインフレ率予測について先進国を5.7%、新興国・途上国を8.7%とし、2022年1月のインフレ予測から1.8%ポイント、2.8%ポイントそれぞれ上方修正しました 1 。
しかし、注目点は、中国とその経済成長に対する懸念です。IMFは、新型コロナウイルスの感染者の急増により北京がロックダウンされる可能性があるとの懸念から、2022年の中国の成長率予測を1月時点の4.8%から4.4%に引き下げました 1 。新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めるためのロックダウン措置を考えると、中国が2022年の公式目標である約5.5%の経済成長を達成することができるのかどうかとの懸念が明らかに高まっています。最近、北京で新型コロナウイルスの感染が拡大し、その結果、東部地区が一部封鎖されたと報道され、国内市場は動揺しています。この地域の住民は、2回の強制的な集団検査が終了する4月27日まで、自宅待機を要請されています。
中国では、3月に消費がロックダウン措置による大きな影響を受け、状況は悪化の一途をたどっています。このような環境では、中国の2022年4-6月期国内総生産(GDP)が失望させる水準に落ち込むとしても驚かないでしょう。しかし、新型コロナウイルス感染による景気悪化からのリバウンドとさらなる政策支援によって2022年後半には力強い成長が期待できるという、中国に対する私の前向きな見通しに変化はありません。それにより、通年で5.5%の成長にはならないかもしれませんが、4.5%以上の経済成長を維持すると見込まれます。また、経済成長が2022年後半に再加速すれば、2023年に向けての成長も強まる可能性を示唆しています。これは、中国と他の多くの新興国との貿易関係の強さから、2023年に新興国全体の成長が再加速するというIMFの予測と一致します。
中国経済は多くの逆風にさらされ、2022年1-3月期の業績は低迷していることから、中国の市場心理は当然ながら弱まっています。しかし、国内の投資家心理は間もなく改善へと変化する可能性があります。最近の取引データを確認すると、先週の中国A株の1日平均売買回転率は1.2%にとどまっており、信用取引は2018年に比べて大幅に低い水準にあります 2 。また、株価バリュエーションの魅力度も高まっているように見えます。
今週のもう一つの大きなニュースは、フランスの大統領選挙です。仏大統領選の決選投票でルペン氏が勝利するのではという市場の懸念に反し、マクロン現大統領が予想以上の大差で勝利を収めました。これにより、欧州市場で見られる恐怖とボラティリティが落ち着くとみていますが、マクロン大統領の勝利はすでにここ数日において株価に織り込まれていたため、市場では”マクロンバウンス”は確認されていません。私は、この結果は大きな意味を持つと思います。高インフレで消費者が苦しんでいるにもかかわらず、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の勝利とみなすことができます。
つまり、今回の選挙結果は、当面の間、現状が維持されることを意味しています。それよりも注目される(そして変化を生じさせる可能性がある)のは、6月12日、19日に行われる国民議会(下院)選挙です。現在、マクロン氏率いる共和国前進党が国民議会577議席のうち312議席を占めていますが、マクロン大統領は友好的な議会と公務に従事し、自身の政党から首相を任命できることから、経済改革を含むより多くの政策目標を実現することができました。
極右と極左の躍進が目立った今回の大統領選を考えると、6月の国民議会選挙は明白とは言えない結果になる可能性があります。2017年、マクロン大統領とその政党が彼らを歓迎する熱狂の波に包まれていたことを思い出してください。多くの選挙民が決選投票で棄権するか、ルペン大統領の誕生を避けるために渋々マクロン氏に投票するなど、現在はその当時とはほど遠い状況です。不満を持っている有権者は、6月の議会選挙を、リーダーの極端な交代劇を回避してマクロン大統領に反撃を加えるための手段と考えているのかもしれません。
そのため、フランス議会はより分裂し、マクロン大統領は自らの政党以外から首相を選ばなければならないかもしれません。その場合、重要な点は、フランスでは大統領が国防と外交を、首相が内政を管理することです。例えば、フランス社会党リーダーのジョスパン氏は、シラク大統領政権下で首相を務め、週35時間労働法を成立・施行しました。極右や極左の首相が選出された場合には、より拡張的な予算が導入される可能性があり、その場合、フランス国債の対ドイツ国債のスプレッドが拡大し、フランスの株式はアンダーパフォームする可能性があります。一方で、欧州連合(EU)加盟という重要問題は大統領のコントロール下にあるため、問題にならないと見込まれます。国際的には、メルケル前ドイツ首相の後を継いで、欧州のさらなる統合の先頭に立つマクロン大統領に期待が集まっています。マクロン大統領はすでに欧州復興基金の背後にある債務相互負担に関与しており、ユーロの長期的な成功は加盟国のさらなる財政統合にかかっていると考えられます。また、マクロン大統領は防衛費の増額を公約しており、この件に関してもEU内の協力強化を推進しています。これは、市場の安定性を維持するのに役立つと、私たちは考えています。
2016年にマクロン氏率いる中道政党の共和国前進党が設立されたことで、フランスの政治が一変したことを認識する必要があります。これは実質的に、極左、中道、極右という3つの投票先が存在することを意味しました。従来の中道左派と中道右派の政党は、共和国前進党の躍進により、この6年間で衰退しました。そのため、2027年の仏大統領選挙では、市場に友好的な候補者が不在となりそうです。マクロン氏は大統領選に再び立候補することはできませんが、ルペンは出馬可能であり、(本人は出馬しないと断言していますが)おそらくそうするでしょう。41% 3 という極右候補としては過去最高の得票率を記録したルペン氏は、中道政党からカリスマ的な候補者が現れない場合には、大統領就任まであと一歩と信じて努力するに違いないでしょう。
先週は、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派的な発言に、市場が動揺しました。木曜日、パウエルFRB議長は5月第1週に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で、0.5%の利上げを「検討する」と述べただけでなく、今後数回の会合で0.5%の利上げを行う可能性を示唆し、「私たちはインフレをより正常な水準に戻すためにあらゆる手段を用いることを約束する 4 」と述べました。また、パウエルFRB議長は「利上げを行って、インフレ率をより中立な水準に戻すためにはもう少し動くことが必要だ」とし、必要な場合にはさらなる利上げを実施すると明言しました。セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁は、先週、さらにタカ派的な発言をしました。
私たちは、市場はこうしたFRBの積極的な発言を恐れるのではなく、歓迎すべきと考えます。タカ派的な発言はFRBの政策遂行にとって重要な役割を果たし、インフレをめぐる消費者心理を形作るのに役立つと私は考えています。こうしてFRBや他の中央銀行は、自国経済をソフトランディングに導き、景気後退を回避できる可能性があるのです。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2022-052