77歳で貯金なしに？ 人生100年時代に備えたお金のシミュレーション方法

『貯金、そんなにないんですけど、 老後のお金、だいじょうぶでしょうか?：50代から考えておきたい「お金の基本」』より一部抜粋

(本記事は、田中佑輝氏の著書『貯金、そんなにないんですけど、 老後のお金、だいじょうぶでしょうか?：50代から考えておきたい「お金の基本」』＝大和出版、2021年7月15日刊＝の中から一部を抜粋・編集しています)

<登場人物>

青山：50代後半。中堅企業勤務で年収は810万円。かつては共働きで豊かな生活を楽しんできた。その一方浪費がたたって貯金は少ない。住宅ローンも結構残っている。

赤坂：50代後半。小企業勤務で年収は多くない。妻のパート収入と合わせても、682万円で青山に届かない。しかし堅実な生活を送り貯金は多め。実家住まいで住宅ローンはゼロ。

南：50代後半。ファイナンシャルプランナー。青山と赤坂の高校時代の同級生。

夫婦の片方が働くだけでお金の寿命は何年も伸びる

南　奥様が仕事をしないまま今の生活をするとどうなるか、見てみよう。

こうなったよ。

青山　77歳でお金がなくなるの？俺よりお金のほうがずっと先に死ぬんだ。厳しいなあ。

南ところが、奥様が働いてくれただけで、だいぶ変わるんだ。58～65歳まで、年収100万円の仕事を続けた場合ね。

こうなった。

青山　86歳か。妻が働くだけで、９年間もお金の寿命が延びるんだ。

南　58歳から65歳まで７年あるからね。総年収700万円だ。

赤坂　ウチの会社は安月給なのに、共働きの若い社員が家を買って「なぜだ？」と思ってた。考えれば、夫婦の年収が500万円だとしても、20年で１億円の稼ぎだもんな。うなずけるよ。

南の金言
妻が働くと老後はグッと明るくなる

100歳まで見通せれば安心度も100％

青山　妻にしっかり働いてもらおう。

でも、妻に依存するのはイヤだな。俺が稼げば、お金の寿命はもっと延びるんじゃない？仮に妻が「やっぱり働かない」と心変わりしても平気だし。

南　じゃあ、奥様は働かなくて、青山が65～70歳まで月15万円、年収で180万円を稼ぐプランでシミュレーションしてみよう。

赤坂　共働きなら強いけど、青山だけが働くんなら状況は変わらないんじゃないか。

南　こうなった。

青山　89歳ね。俺はこれでも十分だよ。

南　青山はそう考えるかもしれないけど、できれば100歳までゆとりを持たせたい。そこまで見通せれば、安心度も100％って言えるもん。

青山　もっと稼げって？

赤坂　いや、南の言いたいのは節約だと思うよ。

青山　娘が大学を卒業したら独立するようだ。その生活費分で、自然に２〜３万円は浮くだろう。それで大丈夫だよ。

それとも、お金の寿命を11年も延ばすには、もっとがんばる必要があるのか。

月1.5万円の節約も100歳までだと756万円が浮く

南　ちょっと待って。シミュレーションしてる。

おっ、月イチゴーくらいだな。

青山　イチゴーって15万円？ムリだよ！

南　安心して。イチゴーは1.5。月に１万5000円だ。

青山　それだけでいいの？

南　そう。だって、今から100歳まで42年ある。

1万5000円×12ヵ月×42年＝756万円の節約になるんだ。

赤坂　まさにチリツモの威力だね。月1万5000円も、長く続ければ巨額に育つ。

南　さっきの年収100万円もそうだ。発想は同じなんだよ。

青山　娘が独立したら、ことさらに節約せずにすむみたいだな。安心した。

実は、事前に支出メモをつくっていた時、これを見せたら、「使いすぎ。お前の老後はヤバい」と諭されるんじゃないかとチラッと思った。

でも、お陰でやる気が出たよ。

南　よかった。

実際には、「大幅な節約が避けられません」とか「このままでは老後破産です」みたいにストレートに伝えなければならないご相談者も、山ほどいるんだよ。

青山は、65歳までまずまずの年収を稼げるポジションにいられたことが大きかったと思う。ただ、奥様が働くか、青山が70歳まで働くかの選択に迫られていることは忘れないでね。

青山　わかった。80歳過ぎまで働くから大丈夫だ。

赤坂　おいおい。南の話を聞いてないじゃんか（笑）

南の金言
ムリな節約は避ける 小さい節約でもチリツモ効果は大きい