投資信託とは一言で言うと、投資家から預かったお金を資産運用のプロが株式や債券などに投資して運用する商品のこと。運用成果が出れば、投資家の投資額に応じて収益が配分されます。
しかし、投資信託は仕組みがやや複雑でわかりにくい面があります。以下では、投資信託を理解する上でおさえておきたい基準価額や普通分配金、元本払戻金などについて詳しく解説していきます。
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投資信託は投資信託運用会社が作り、それを証券会社や銀行などの販売会社が投資家向けに販売します。そして投資家から集められたお金は資産管理を行う信託銀行が預かり、投資信託運用会社や銀行がそのお金で資産運用を行う、というのが基本的な仕組みです。
つまり、投資信託は1つの機関ですべての業務が行われるのではなく、販売や運用、お金の管理のプロがそれぞれの役割を担い、連携することで成立する金融商品と言えます。
投資家にとって投資信託の大きな特徴の1つが、資産運用をプロに任せることができるという点です。特に初めて投資をする人で、株式や債券に詳しくない場合は、うまく利益を出すことが難しいでしょう。しかし投資信託では投資信託運用会社の専門家が、収益性とリスク分散を考慮しながら成果が出やすい形で資産運用を行います。運用をプロにお願いできる点は、投資する側にとっては心強いです。
投資信託の取引は「基準価額」という単位で行われ、その単位のことは「口」と呼ばれています。
例えば購入時に基準価額が1口1万円だったとすると、その1口あたりの値段が購入後の運用成果によって変わっていくわけです。もし運用成果が出て基準価額が1口1万1,000円になったら、もともと1口1万円で購入したわけですから、1,000円分の収益が出ていることを意味します。
投資信託の基準価額は、投資先となっている株式や債券などの時価評価によって算出され、1日1回の頻度で公表されます。そこで提示された基準価額に基づいて、投資信託の購入および換金が行われるのです。
なお、基準価額の公表が行われるのは、投資信託の取引の申し込みが締め切られた後の時間帯とされています。つまり投資家は、その日の基準価額の実数値を知らない状態で投資信託の取引を行うわけです。この取引方法は「ブラインド方式」と呼ばれ、投資信託協会にて取引上のルールとして定められています。
投資信託には分配金という仕組みがあります。分配金とは資産運用によって得られた収益などを、決算期ごとに投資家に配分する金額のことです。
しかし、投資信託では「分配金を受け取らず、資産運用で収益を上げたら元本に運用益を組み入れていく」という方法もあります。この場合、投資家は短期的に収益を得ることはできませんが、複利効果を得られるという利点があるといえます。
ここからは分配金の基本である普通分配金と元本払戻金について解説していきます。分配金の基本的な仕組みを理解しておきましょう。また以下は、参考計算例であって実際の金額と異なります。
購入時の基準価額よりも決算日の基準価額が高い場合、それは運用成果によって得られた収益と位置付けられます。普通分配金は、その収益分を投資家に配分する分配金のことです。
例えば、Xさんが9,000円の基準価額で1口の投資信託を購入し、決算日の基準価額が1万円になっていたとしましょう。このとき決算日に支払われる分配金が1,000円であるなら、運用によって得られた利益分、つまり個別元本9,000円を上回った部分で分配金がまかなわれます。
このタイプの分配金が普通分配金です。普通分配金は投資家の利益とみなされるので、課税対象とされます。
一方、元本払戻金とは、資産運用によって得られた収益からではなく、個別元本の一部を投資家に払い戻すことで支払われる分配金のことです。
例えば、Xさんが9,000円の基準価額で1口の投資信託を購入し、決算日の基準価額も同じく9,000円であったとしましょう。この場合、決算日に1,000円の分配金を受け取る投資信託であれば、運用成果から分配金を捻出できません。そのためこのケースでは、個別元本を取り崩して分配金が支払われる、という形をとります。このタイプの分配金が元本払戻金です。
1,000円分の元本払戻金が支払われた後、Xさんの個別元本の額は8,000円となりますが、投資信託購入時に支払った金額が分配金に回されただけなので、Xさんに損失が発生したわけではありません。収益を思うように上げられなかった場合でも、投資家に損失を与えることなく分配金を支払うのが元本払戻金の目的と言えます。元本払戻金は、もともと支払ったお金が戻っているだけなので非課税です。
投資信託は、投資信託運用会社、証券会社や銀行などの販売会社、お金を預かる信託会社などがそれぞれの役割を果たすことで成り立っている金融商品です。資産運用は投資信託運用会社の専門家が行うので、投資家は株式や債券の取引を実際に行う必要がありません。
投資信託の取引は「基準価額」を元にして行われます。決算日に分配金の取り扱い方法を「再投資」にするのか「受取」にするのかを購入する際に選択することが必要です。普通分配金、元本払戻金という分配金の種類を理解しておきましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。