2020年は働き方が大転換した年になっています。このような時ほど、キャリアプランを見直そうと考える人は多いのではないでしょうか。転職活動の際は、年収を気にするあまり、退職金制度については見落としがちです。収入増加を見込んで転職をしたものの、実は生涯年収は減額していたら、元も子もありません。
退職金は、住宅ローンの繰上げ返済の原資として利用されたり、老後の生活を支えるための資産となるなど、リタイア後の生き方を左右する重要な資金となります。退職金のおおよその金額や制度を確認し、もし人生設計上不安があるのであれば、早めに策を講じる必要があります。まずは、一般的な退職金の額を知ることから始めましょう。
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まずは、このまま定年退職まで同じ企業で勤めた場合、退職金がいくら程度見込めるのかを把握しましょう。
厚生労働省の平成30年就労条件総合調査の結果によると、定年退職者1人当たりの平均退職給付額は、大学・大学院卒の管理・事務・技術職の勤続年数が35年以上の人で2,173万円、同勤続年数が20年〜24年の人で1,267 万円となっています。
また、同じ管理・事務・技術職でも、高校卒の退職給付額は勤続年数が35年以上の人で1,954万円、勤続年数が20年〜24年の人だと525万円となっており、学歴と勤続年数で退職金の額に差が生じていることが伺えます。
また、退職金の給付方法には、主に一時金と年金の2種類があり、企業によって、採用している制度は異なります。基本的に、一時金と年金の両方の制度がある企業の退職金は、どちらか片方の制度しかない企業に比べ、退職金の額は高くなる傾向があります。
例えば、先にあげた大学・大学院卒の管理・事務・技術職の勤続年数が35年以上の人の退職金は、退職一時金制度のみの場合で1,897万円、退職年金制度の場合で1,947万円となっていますが、両制度併用の場合は2,493万円となっています。
会社が倒産した場合に、自分の退職金は守られるのかどうかは、退職金が会計上の自社の資産の一部となっているか否かによります。例えば、会社が退職金を特に積み立てておらず、従業員の退職のたびに会社の資産から払い出しているケースでは、会社が倒産した場合には想定通りの額の退職金が受け取れない可能性があります。
一方、退職金制度として、確定給付年金制度や確定拠出年金制度などを採用している企業の場合は安心です。これらの年金制度は、社外に年金資金を積み立てる制度です。そのため、万が一勤めている会社が倒産した場合でも、年金資産は守られます。
このような統計的な数字だけでは、具体的なライフプランは立てられません。自分の退職金がいくら位になりそうかを調べるには、まずは自社の福利厚生のハンドブックなどを開いてみることが近道です。
自社に一時金と年金の退職金があるにも関わらず、それを知らないまま不利な退職金制度の企業に転職してしまった場合、後悔をするのではないでしょうか。
また、具体的に今の自分の退職金がどの程度積み立てられているかを調べたい場合は、人事部に問い合わせると良いでしょう。確定給付年金のデータは、外部の金融機関が管理しており、問い合わせをかけると意外に早く具体的な金額を知ることができる場合があります。
また、退職金の積立額のルールも確認をしておく必要があります。給与の何パーセントが退職金に積み立てられているのかを把握することで、定年退職まで働いた場合の試算を行うことができます。このように、調べを進める中で、退職金の額は具体的に推計できるようになってきます。
退職金制度を調べたら、平均的な金額よりも少なかった場合や自分が想定していた金額が期待できない場合は、自助努力で対策を講じる必要があります。
企業によっては退職金制度がない場合もあります。新卒の頃はあまり深く考えずに会社を選んだものの、年齢を重ねるごとに他社との待遇の違いを感じ、転職をする人は少なくありません。今の企業にそのまま勤めていても、自己実現が難しいようであれば、転職先を探すのも一つの手です。
一つの会社に勤めていると勤務先の待遇の水準が他社と比較して高いのか低いのか判断できなくなってきます。転職エージェントから情報を収集し、戦略的に他社への転職を計画するとスキルアップを意識し、結果的に能力が高まるでしょう。他社でも通じるスキルを持つことは選択の自由に繋がります。また、待遇アップのために完全に別業界に転職する方法もあります。
現在の自分が置かれている待遇の水準は外部と比較しても高いという場合、転職では問題を解決できないでしょう。自分が期待する水準の資産を築くためには、自助努力が必要です。
ここで重要なことは、退職時をターゲットとした資産形成をする場合は、時間を味方に付けられるという点です。
預金の積み立てだけでは、低金利時代の現代では資産は増えません。しかし、資金を増やそうとして投機的な短期トレードに夢中になってしまうと、仕事に支障が生じるばかりか、資産が目減りすることも否定できません。
自分に合った適度なリスクを取りながら、時間をかけて投資を行うことで堅実な運用が実現できます。
老後の資産を堅実に築くためには、会社の年金制度やiDeCo、NISAなどを活用して資産運用することも有効です。
確定拠出年金制度を導入している企業の場合、マッチング拠出を利用できる場合があります。マッチング拠出とは、会社が確定拠出年金に拠出している掛け金に、さらに従業員が上乗せして資金を拠出できる制度です。
金額は、会社が拠出している金額と同額か、会社と自身の拠出金額が5万5,000円になる金額が上限となります。例えば、会社が2万7,500円を拠出していたら、自身の掛け金の上限は2万7,500円となり、会社が3万円を拠出している場合は、従業員の掛け金の上限は2万5,000円となります。
近年耳にすることが多くなった個人型確定拠出年金制度がiDeCo(イデコ)です。iDeCoは、企業型確定拠出年金制度や企業型確定給付年金制度とは別に、自分で掛け金を拠出する個人年金制度です。
企業型確定拠出年金制度は、運用する金融機関が会社の定めにより決められていますが、iDeCoは自分の好きな金融機関で口座を開けることができます。
また、企業型のマッチング拠出、iDeCoともに、自己資金の掛け金分は全額が所得控除になり所得税額を抑える効果がある上、運用益は非課税となっています。
資産運用の鉄則は、まずは有利な制度を利用することです。先に述べた企業型および個人型の確定拠出年金制度に加え、つみたてNISAも検討すると良いでしょう。つみたてNISAは年間40万円の枠までは20年間は運用益が非課税になる制度です。
投資対象の商品は、手数料が安く、長期・積立・分散投資に適した投資信託とETF(上場投資信託)に限られているので、投資初心者はつみたてNISAを初めの一歩として活用してみるのも良いでしょう。
普段はあまり意識しない退職金ですが、会社員にとって退職金は、豊かな老後を過ごせるか否かを決定する重要な資金になります。転職活動中は、企業側に直接聞きにくいということであれば、転職エージェントを利用し情報を収集すると良いでしょう。
また、自社の退職金制度を調べてみたところ、思いの外充実していることを知り、仕事へのモチベーションが上がるという場合があります。
一度、自社の退職金制度はしっかりと調べておきましょう。
※本記事は投資に関