「投資ってお金が減っちゃうかもしれないから」という人は多いかもしれません。確かに投資方法や状況によっては、損失が発生する可能性もありますが、投資におけるリスクとは、必ずしも「危険」「損をする」といった意味ではないことをご存じでしょうか。投資は、元本の保証がない金融商品のため、リスクとリターンについて正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、投資におけるリスクとリターンについて解説します。上手にリスクと向き合いながら投資に取り組んでみましょう。
目次
投資を行う際、リスクとリターンは必ずついて回ります。そのため、それぞれの意味や考え方、両者の関係について正しく理解しておくことが大切です。
投資におけるリスクとは「不確実性」のことです。正確には「価格変動のブレ幅」のことを指します。例えば株式であれば営業時間中は、常時価格が上下し図で表すと波のように動き、この波の一番上から一番下までの幅が「価格変動のブレ幅」です。この波は、購入時の価格より下がる場合もあるため、その時点では元本割れ(損失)となります。
多くの人が、投資のリスクを「損をする」という意味で捉えがちですが、本来は「利益を得られる可能性もあり、損失が出る可能性もあり、その度合いは不確実」という意味になります。価格変動のブレ幅が大きければ「リスクが大きい」、逆に小さければ「リスクが小さい」ということです。
リターンとは、投資・運用した結果として得られる利益や損失のことです。一般的には、金融商品の購入時よりも高い価格で売却したときに得られる利益をリターンと呼ぶことが多いですが、結果的に損失となった場合はマイナスリターンと言います。
投資におけるリスクとリターンは、比例関係にあります。一般的にリスクが大きいものほどリターンが大きくなり(ハイリスク・ハイリターン)、リスクが小さいものほどリターンも小さくなる(ローリスク・ローリターン)傾向です。
なおリスクとリターンの関係は、金融商品の種類によっても異なり、預貯金→債券→投資信託→株式の順にリスク・リターンが大きくなっていく傾向があります(固有銘柄によってはこのとおりではない場合もあります)。投資を検討する際には、リスクとリターンの関係を押さえたうえで自分のリスク許容度に合った金融商品を選ぶことが大切です。
ここまで、投資におけるリスクの基本的な考え方を説明しましたが、リスクにはさまざまな種類があります。ここからは、代表的なリスクについて解説します。
購入した金融商品の価格(価値)が変動する可能性のことです。先に説明した「ブレ幅」のことで、一般的にリスクという場合は、主にこの「価格変動リスク」のことを指します。
市場規模や取引量が少なく、売却したいときにすぐに売却できない可能性のことです。株式や債券は、売りたい人と買いたい人の需給関係によって取引が成立します。しかし、市場規模や取引量が極端に少ない場合、買い手がつかずなかなか売却できないことがあります。このことを「流動性が低い」といいます。
大型株よりは小型株のほうが、先進国の株式や債券よりも新興国の株式や債券のほうが「流動性リスクが高い」と考えられています。
株式や債券などの発行体が破たんしたり、経営状態が悪化したりすることで投資元本や利子の支払いが滞る可能性のことです。「デフォルトリスク」ともいいます。一般的に、経済基盤や経営状態が健全であるほど信用リスクは小さく、政情や経営状態が不安定であるほど信用リスクは高くなる傾向です。判断する基準として格付け機関が評価し、ランク付けした「格付け」制度があります。
為替レートの変動によって、投資した資産の価値が変動する可能性のことです。特に、外貨預金や外貨建て投資信託など、外貨建ての金融商品へ投資する場合に発生します。
外貨建て金融商品では、手もとの円貨を外貨に交換し、最終的に円貨で受け取るのが一般的です。そのため購入時と売却時の為替レートの変動によって損益が左右されます。
購入時の為替レートよりも円安になれば為替差益、円高になれば為替差損となります。
投資対象国や地域の政治・経済状況の変化によって、投資した資産の価値が変動する可能性のことです。政治の不安定さや経済の混乱によって、証券市場や為替市場が影響を受けることでカントリーリスクが発生することがあります。そのため、外国の株式や債券、またはそれらを対象とした投資信託に投資する際は、カントリーリスクを考慮することが重要です。
投資のさまざまなリスクを紹介しましたが「途中のリスク」と「最後のリスク」という考え方も知っておくといいでしょう。
途中のリスクとは、運用期間中に価格(価値)が上下するリスクのことです。先述した価格変動リスクが代表的な途中のリスクにあたります。価格が変動すると帳簿上の資産額は増減しますが、実際に売却しなければ利益も損失も発生しません。なぜなら投資の利益や損失は売却時点で初めて確定するからです。
最後のリスクとは、売却が必要な時点(目標時点)で目標額に到達しないリスクのことです。売却時点の価格によっては、損失が確定してしまう可能性があります。しかし、リスクの低い金融商品で運用した場合でも、リターンがわずかしか得られず目標額に届かないことも最後のリスクに含まれます。
このように考えると、リスクを避けることだけが正解ではなく、リスクと上手に付き合いながら一定のリターンを目指すことが大切だといえるでしょう。
「リスクとリターンが比例関係にある」「リスクの大きさは金融商品によってある程度の傾向がある」ということは、説明したとおりです。基本的に投資の世界で「ローリスク・ハイリターン」という都合の良い金融商品は存在しません。しかし、投資方法を工夫することで、リターンを期待しつつリスクを抑えることは可能です。
投資の基本戦略のひとつが分散投資です。分散投資とは、特定の金融商品(銘柄)だけに投資をするのではなく複数の商品や銘柄に分けて投資する方法です。
「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言をご存じでしょうか。ひとつのカゴにすべての卵を入れてしまうと、そのカゴを落としたときにすべて割れてしまう可能性があります。しかし、複数のカゴに分けておけば、一部のカゴを落としても他の卵は無事です。
投資も同じで、資産を分散することでリスクを低減できます。例えば、以下のような分散方法があります。
・資産クラスの分散(株式・債券・不動産・コモディティなど)
・地域の分散(日本・米国・新興国など)
・時間の分散(一括投資ではなく積み立てを活用)
ただし、複数の商品や銘柄を購入するには一定の資金が必要です。そこで、少額から分散投資ができる方法として投資信託の活用を検討しましょう。投資信託は、運用の専門家が国内外の株式や債券などに分散投資し、その成果を投資家に分配します。投資信託を1本購入するだけでも、分散投資の効果を得られます。
積み立て投資もリスクを軽減するのに効果的な投資方法の一つです。積み立て投資とは、定期的に一定金額ずつ積み立て方式で購入していく方法で、価格変動リスクを抑える効果があります。市場の価格は常に変動するため、積み立て投資を行うと以下のような特徴が生まれます。
価格が高いとき → 少ない数量(口数)を購入
価格が低いとき → 多くの数量(口数)を購入
この方法を続けることで、購入価格が平均化され、高値づかみのリスクを減らせるのです。これは「ドルコスト平均法」と呼ばれ、長期的に投資を続けるほどリスク軽減効果が高まるとされています。
また、長期の積み立て投資には複利効果も期待できます。複利効果とは、運用益を再投資することで、元本が増え、さらに運用益が増える仕組みです。雪だるま式に資産が増えていく可能性があるため、長期投資には特に適した方法といえるでしょう。
NISAを利用すると、投資で得た利益にかかる税金(通常20.315%)が非課税になります。
・つみたて投資枠:長期の積み立て投資向け
・成長投資枠:一括投資・積み立て投資の両方が可能
NISA自体にリスク軽減の効果はありませんが、非課税メリットにより実質的なリターンを高めることができるのが特徴です。
また、つみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁が厳選した「長期の積み立て投資に適した投資信託・ETF」に限定されています。これにより、分散投資やドルコスト平均法の効果と相乗的に、リスクを抑えながら資産形成を進めることができます。
投資のリスクとリターンは表裏一体です。リスクを小さく抑えればリターンも限定的になり、大きなリターンを求めればリスクも高まります。
しかし、リスクを避けるばかりでは、目標時点で必要な金額に達しない「最後のリスク」に直面する可能性もあります。資産を増やすためには、リスクを管理しながらリターンを追求する工夫が必要です。分散投資や積み立て投資、NISAの活用は、リスクを抑えながらリターンを期待できる方法の一つです。少額からでも始められるため、無理のない範囲で取り組んでみてはいかがでしょうか。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
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