インベスコ・アセットマネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジストである木下智夫が「政策金利と日本株の関係を紐解く- 日銀の金利引き上げで日本株はどう動く? -」と題して政策金利と日本株の関係について解説しています。
今回は、1月末に実施された日銀による金利の引き上げを踏まえて、「金利が動くとどうなるか」について深堀しながら、今後の日本株市場の見方を伺っていきたいと思います。
Q:昨年の新NISAスタートから株式市場を見始めていて、今日は日本株の見通しについてお聞きしたいです! まず何から考えたらいいですか?
今、注目すべきは直近での日本銀行による金利引き上げを踏まえた株価の動向だと思います。
Q:金利が上がると株式市場にはどのような影響があるのでしょうか? そもそも金利といってもいろいろな種類の金利があるようですが、詳しく教えていただけますか?
金利には、日本銀行が政策として決める短期金利、そして債券市場で決まってくる長期金利、この2種類があります。最近特に注目されているのが、日本銀行が1月に引き上げを決めた短期金利の方です。
1月の日銀の会合では、この政策金利が、従前の0.25%から0.5%へと引き上げられました。日本銀行は政策金利を2回引き上げましたので、今回の引き上げで3回の利上げが実施されたことになります。3回の利上げを短期間の間に実施したのは1990年の秋以降初めてのことですので、金利が上がることについての金融市場の関心が急速に高まっている。今日はこれについて考えていきましょう。
Q:では、その金利は株価にどう影響するのでしょうか?
一般論としては、政策金利が実際に上がる、あるいは政策金利が上がるという金融市場の期待が高まる場合には、株価に押し下げ圧力が働きます。
金利の引き上げが株価に及ぼす経路として、主に2つの経路が考えられます。一つは、お金を借りるコストが高くなることです。それによって企業の利益が減りますので、株価にはマイナスとなります。金利が低い間は、企業はコストをあまり気にせずに借り入れをすることができていましたが、借入金利があがってくるとそうはいきません。
もう一つは、金利が上がると、債券投資の魅力が増していく点です。株式を売ってそのお金を債券投資に充てる投資家が増えてきますと、株価にはマイナスとなります。
Q:では、これからの日本は金利上昇が見込まれており、株価にはマイナスな気がするのですが、大丈夫なのでしょうか?
確かに、不安になりますね。ただ、金利が上がるということだけをとって考えると、確かに株価にはマイナスです。しかし、ここは、日本銀行が金利を引き上げるに至った経緯、つまり、なぜ金利が引き上げられたかという点まで考えて判断すべきだと思います。一旦落ち着いて考えてみましょう!
そもそも、日本銀行の目的は、物価の安定を図ることと、金融システムの安定に貢献することです。いま、金融システムは安定した状態にありますので、日本銀行が、いま金利を引き上げているのは、物価の安定のためです。より具体的にいうと、これまでのような低めの金利水準だと過度なインフレになってしまう、そうならないよう金利を引き上げていると言えます。
Q:長い間デフレに悩まされてきた日本にとって、インフレになることは悪いことではないようにも思いますが……
過去30年間の経験をたどってみると、デフレは日本経済に対して途方もなく大きな問題をもたらしてきたことは確かだと思います。しかし、日本はようやくデフレから脱却することができました。
今はむしろインフレが問題で、消費者の実質的な購買力が伸び悩んで、景気に悪影響を及ぼしています。日本銀行は、このインフレ率を将来2%に抑えたい。そのために、利上げが連続で実施されています。
Q:インフレ率が上がりすぎるのを抑えるための政策金利の引き上げなのですね。それでは、短期金利が上がるなかで、日本の株価は結局どうなっていくのでしょうか。
日本は、高齢化が進むなかで働き手の数が増えにくい状況にあります。人手不足で賃金が適度に上昇する環境になってきました。今年中には、賃上げ率がインフレ率を上回るという、実質賃金の上昇率がプラスになる状況がより明確になってくると思います。
消費者はこれまでよりも消費に対して積極的になり、それをうけて企業の方も設備投資をしっかり増やして、消費の伸びに対応していくことになると思います。こうして、内需がこれまでよりも、もう少し安定的に増加していく経済への転換が進んでいくと思います。ということは、消費セクターや設備投資セクターの企業は、これまで以上の利益成長が視野に入り、株価がより高く評価されていくと思います。
消費が緩やかに拡大する中、消費セクターの企業はこれまでよりも販売のボリュームを増やすことができるようになってきました。以前は、消費セクターや設備投資セクターの企業はデフレの下で販売価格を上げることが難しかったわけですが、デフレ時代の終わりとともに、消費者や企業は価格の上昇を受け入れてくれるようになってきました。
このように内需がこれまで以上に成長することが、日本経済の強さにつながります。金利がゆっくり上がっても、日本経済はこの強さを維持できるはずです。これが、内需関連株を軸とした日本の株価上昇をもたらしていくと思います。
Q:金利が上がっていくとその恩恵を受けるセクターもあるのでしょうか?
金利上昇によって、金融株は上昇しやすくなります。銀行が調達する金利は政策金利ほど上昇しないと思われますが、一方で、銀行が貸しだす金利は、政策金利に連動して上がっていきます。また、短期金利の上昇に加えて、中長期のインフレ期待が上がることで、長期金利も上昇してきました。こうして利ザヤが拡大することで、銀行の収益力が高まり、株価にプラスになります。
保険会社についても、長期金利の上昇で資金運用利回りが上昇することで、収益性が高まります。また、資産運用業については、インフレの時代になることで、株式や債券に投資するニーズが高まることが収益力の向上につながります。新NISAによる税制優遇措置も、資産運用会社や証券会社、銀行にとって追い風となります。
Q:株式の中でも当面は内需関連セクターや金融セクターに期待できるわけですね。それでは輸出セクターについてはどう思いますか?
海外、特にアメリカとの金利差が縮小していくとみられる点は、今後、緩やかな円高要因になると思います。これまで、かなりの円安が進行した中で輸出企業は利益率を高め、株価にもその恩恵が及んできました。
これからは、輸出企業であれば収益が伸びるという時代ではなく、他にない強みをもって成長していける輸出企業が株式市場で注目されていく時代になると思います。一方で、海外投資家、特に長期で投資をする投資家にとっては、緩やかな円高というのは日本株への投資の魅力を高めるものです。日本の株式市場における海外投資家の役割は非常に大きく、今後、その動きにも注目していきたいと思います。
Q:いろいろな要素が日本株の先行きにかかわってくるんですね。では、今年の日本株の見通しを教えてください。この後の日本株の行方について、どのように展望していますか?
今年の日本株は内需関連のセクターを軸とした前向きの動きが緩やかな株価上昇につながるとみています。日本株の今後の動きを見通す上で、実はもう一つ重要なことがあります。今は、世界の株式市場の時価総額の約半分を占めるアメリカ株の動きが、世界のその他の市場にも大きく影響する時代です。
したがって、日本株もその影響を強く受けることになります。アメリカ株について、今年前半はレンジ圏、今年後半はアメリカ景気の再加速に伴って緩やかに上昇するとみています。そうした環境下、日本では、緩やかな円高の動きや構造変化に伴う内需関連株の強さが注目されるかたちで、アメリカ株をやや上回って上昇する可能性が高いとみています。
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