ブロックチェーン技術を基盤とする分散型インターネット「Web3」の普及が進む一方で、大規模な導入に向けた課題も多数横たわります。本記事では、Web3の現状と普及に向けた課題、取り組みなどをレポートします。
目次
Web3はブロックチェーン技術を活用することにより、仲介管理者を必要とせず、ユーザーが自分のデータを自分で管理したり、様々なトランザクションを行ったりすることが出来る新しいインターネットの概念です。
Web3の導入はDeFi(Decentralized Finance:分散型金融※1)やNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン※2)などの特定の領域で急進展していますが、総体的にはまだ初期段階にあります。近年はMetaやGoogle、Visaといった大手企業が続々と市場に参入していることから、今後広範囲な普及が期待されています。
一方で、2021~22年の期間、全世界でおよそ940億ドル(約13兆4,526億円)がWeb3関連プロジェクトに投じられましたが、インフレや金利上昇、暗号通貨市場の失速などを背景に2022年後半以降の資金流入は鈍化しています。しかし、2024年第一四半期には再び増加基調に転じ、Web3対応アプリのユーザーベースが世界中で1億人を超えるなど、成長再燃の兆しが見えます。
とはいうものの、Web3がWeb2(現在利用されているインターネット)を超える主流のインターネットとなるためには、以下のような課題を克服する必要があります。
技術的な専門知識がないユーザーにとって、ブロックチェーン・システムの複雑さはWeb3の利用する際の障壁となります。
Web3の中核的技術であるブロックチェーンは、スケーラビリティ(※)という大きな問題に直面しています。
※トランザクション増加にともなう処理延滞や手数料高騰、ネットワークの混雑などのこと。
多くの国においてWeb3に関する明確な規制が整備されておらず、ユーザーが安心して利用できる環境が確立されていません。
Web3の開発・受け入れ環境が未熟である点も大きな課題の一つです。たとえば、多数の分散型アプリ開発者にとって、アップルストアやグーグル・プレイといった従来のアプリダウンロード・サービスは依然として狭き門です。
現在、このような課題のソリューションとして、以下のような様々な手段が模索されています。
そのひとつは、モバイル・テクノロジーの利用です。モバイル・ハードウェアとオペレーティング・システム(OS)を活用して、シンプルで使いやすいインターフェース(異なる機器・システム・ソフトウェアなどを接続する機能)をもつWeb3アプリやウォレットの開発が進んでいます。
成功事例として、アンドロイドのOS上に構築された暗号通貨対応スマートフォン「ソラナ・サガ」が挙げられます。2023年5月に発売された初回出荷分は半年間で完売するなど、ユーザーのニーズを反映した商品であることが証明されました。現在は再入荷分(2025年出荷予定)の予約販売を受け付けています。
Web3に特化した新たなインフラの構築や技術発展も活発化しています。たとえば、分散型ネットワーク・プロジェクトである「トミ(Tomi)」はドメインやブラウザー、ウォレット、DAO(分散型組織)を含む一連のWeb3ツールの開発を介して、安全で高速、かつ相互運用性が高く、ユーザーフレンドリーなWeb3エコシステムの構築を目指しています。
一方で、信頼性・安全性が高い分散型データストレージ(※保存場所)や複数のブロックチェーンをシームレスに利用するためのクロスチェーン技術など、より多くのユーザーにアピールする次世代インターネットのインフラ環境整備も進んでいます。
トランザクションの処理速度を向上させ、手数料を低減する目的で、ポリゴンやオプティミズムのようなレイヤー2ソリューション(※1)や、メインのブロックチェーンと連結するサイドチェーン(※2)を活用するプロジェクトも増えています。
※1 メインチェーンを拡張する目的で、ブロックチェーン上に構築された第二層技術のこと。
※2 トランザクションを高速処理することを目的とする、メインチェーンから独立したブロックチェーンのこと。
このように、Web3の広範囲な普及には多くの課題が残されていますが、課題を克服するための取り組みが進むことで、普及がさらに広がることが期待できるでしょう。Wealth Roadでは投資の視点からも、Web3がインターネット市場の主流となる可能性に注目していきます。
※為替レート:1ドル=143円
※上記は参考情報であり、特定企業の株式や暗号資産などの売買及び投資を推奨するものではありません。