2024年から始まった新NISAは、値上がり益や分配金などを受け取ったときに非課税になる制度です。保有資産の価値が上がっていても、現金化をしなければリターンは受け取れません。相場状況によっては元本を割り込む可能性もあるため、新NISAでは事前に出口戦略を考えることが重要です。実際にはどのような方法があるのか、本記事では新NISAで資産を運用しながら取り崩す方法を紹介します。
目次
ひとつ目は、日々の支出やライフイベントに合わせて、必要な分だけ資産を取り崩す方法です。金融商品を売却すると現金として受け取れるため、家計の苦しい時期や大きな買い物をする時期に合わせて、自由に資産を取り崩せます。
お金がかかるライフイベントとしては、結婚や出産、マイホームの購入、両親の介護などがあります。子どもがいるご家庭では、入学費用や授業料、受験代も必要になるでしょう。新NISAの口座にまとまった資金があると、病気やけが、冠婚葬祭などの急な出費にも対応できます。
すべての資産を取り崩すと、相場が上昇したときや非課税の恩恵を受けられなくなります。そのため、含み益(※)があるときにはコア資産ではなく、サテライト資産から取り崩す方法を考えてみましょう。
(※)金融資産の価値が購入時よりも上がっており、売却すると利益が出る状態のこと。一方で、売却したときに資産が減る状態は「含み損」と呼ばれる。
サテライト資産とは、大きなリターンを期待して積極的に運用する資産です。一方で、分散投資や長期運用などを意識して、堅実に運用する分はコア資産と呼ばれます。コア資産に比べると、サテライト資産は値動きが大きい傾向にあります。長期保有のリスクが相対的に高いため、資産の評価額が下がる前に取り崩すことがひとつの選択肢になります。
また、堅実な運用を心がけている場合は、サテライト資産の売却分をコア資産に移行させる方法も考えられます。
資産の取り崩し方は、一定の金額で売却する「定額取り崩し」と、一定の割合で売却する「定率取り崩し」に大きく分けられます。このうち、保有資産が減るペースを遅らせて長期運用をしたい場合は、定率取り崩しが有効な選択肢になります。
定率取り崩しでは、「毎年5%ずつ」のように売却する資産の割合を設定します。仮に1,000万円を運用するとして、毎年5%ずつ取り崩す場合と、毎年30万円ずつ取り崩す場合の保有資産額をシミュレーションしてみましょう。
運用年数 | 定率取り崩し (毎年5%ずつ) | 定額取り崩し (毎年30万円ずつ) |
---|---|---|
1年 | 950万円 | 970万円 |
5年 | 773万7,809円 | 850万円 |
10年 | 598万7,369円 | 700万円 |
15年 | 463万2,912円 | 550万円 |
20年 | 358万4,859円 | 400万円 |
25年 | 277万3,895円 | 250万円 |
30年 | 214万6,387円 | 100万円 |
35年 | 166万834円 | 0円 |
(※保有資産の価格変動や手数料は考慮しない。小数点以下は切り捨て。)
20年目までは定額取り崩しのほうが多くの資産を残せますが、25年目からは保有資産額が逆転しています。定率取り崩しでは、35年目まで運用しても約166万円の資産が残るため、値上がりや非課税効果の恩恵を長く受けられます。
ただし、相場や資産の状況によっては、定額取り崩しが望ましいケースもあります。たとえば、長期運用中に値下がりした場合や家計が苦しくなった場合などは、定額取り崩しも視野に入れて柔軟に計画を考えましょう。
安定したリターンを重視する場合は、分配金や配当金がある銘柄のみを持ち続ける方法も考えられます。一口・一株あたりの金額が小さくても、長期的には大きなリターンになるかもしれません。
ただし、分配金や配当金がある銘柄は限られるため、購入の前には情報収集が必要です。過去の実績や利回りなどを確認した上で、目標のリターンを達成できるような銘柄を選ぶとよいでしょう。
なお、投資信託の分配金には、ファンドの運用益から支払われる「普通分配金」と、元本から支払われる「特別分配金(元本払戻金)」があります。このうち、特別分配金は元本の払い戻しにあたるため、投資家のリターンにはなりません。
新NISAの出口戦略を考えておくと、銘柄の選び方や投資方法が変わります。資産を増やすだけではなく、ご自身や家族の将来を意識するようになるため、急な支出にも対応しやすくなるでしょう。目的に合った資産運用ができるように、出口戦略を意識して運用計画を立ててみてください。
※本記事は新NISAに関わる基礎知識を解説することを目的としており、新NISAの利用を推奨するものではありません。