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高級時計はインフレ対策実物資産としての価値は?
(画像=悠資原田/stock.adobe.com)

高級時計はインフレ対策実物資産としての価値は?

コロナ禍で記録的な成長を遂げた高級時計市場ですが、長引くインフレ下で中古価格が急落しています。「インフレに強い実物資産」とされてきた高級時計が値崩れしているのは、なぜでしょうか。本記事では、これまでの市場の動きとともに、今後の市場動向を考察します。

世界の高級時計が大幅下落

世界的な人気を誇るスイスの老舗時計ブランドとして、ロレックスやパテック フィリップ、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンなどが挙げられます。これらのブランドは新品・中古品ともに需要が安定していることから、手堅い投資対象としても人気があります。

投資熱が高まったコロナ禍では、輸出額や中古相場が過去最高値を記録するなど、バブル状態となりました。米コンサルティング企業ボストン コンサルティング グループ(BCG)のデータによると、2021年の中古市場の売上高は220億ドル(約3兆2,340億円)と、高級時計市場全体のほぼ3分の1に達しました。

ところが2022年春以降、中古相場は大きく下落しました。高級中古腕時計市場調査プラットフォーム「ウォッチ・チャーツ」の2023年9月18日時点のデータを見ると、高級腕時計市場全体の価値は過去1年間で15.7%減、スイスの3大高級腕時計ブランドのロレックス、パテック フィリップ、オーデマ ピゲはそれぞれ、11.2%、6.4%減、9.1%減(ドル建てベース)となっています。

価格下落の要因は?

下落の主な要因は、「米利上げ」「需要過多の解消」などが考えられます。実際に高級腕時計の価格が下落に転じたのは、FRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を22年ぶりの水準(0.25%)に引き上げた2022年3月以降のことです。投資家間で景気低迷への懸念が強まり、贅沢品支出を控えて貯蓄を増やす動きが広がったことが高級時計の需要に影響を与えたかもしれません。また、コロナ禍のサプライチェーン問題が改善されたことによって、供給が需要を上回って下落に拍車をかけているとの見方もあります。

インフレ下でも投資家を魅了する3つの理由

以下3つの理由から、「インフレに強い実物資産」としても注目されています。

【理由1】長期的なリターンが期待できる

BCGが2023年3月に発表したレポートによると、スイスの3大高級時計の2018年8月以降の年間平均リターンは20%あり、同期間のリターンはS&P500(米国の代表的な株式指数)を上回りました。ロックダウン(都市閉鎖)で経済活動が世界的に低迷した2020年は高級時計市場も冷え込みましたが、中長期的には一定のリターンが期待できるかもしれません。

【理由2】希少価値が高い

ロレックスのように生産量が限定されている高級時計は、正規店でも品薄状態のモデルもあり、希少価値が高い点が魅力です。特にレアモデルは、中古品であっても新品より高値で取引されることがあります。

【理由3】時計そのものに実物資産としての価値がある

高級腕時計の多くは、時計そのものに価値があります。ゴールドやプラチナ、パラジウムなどの希少性の高い貴金属を素材とすることから、ブランド価値や時計相場が変動した場合でも、一定の価値を維持できるためです。

今後の市場の動きは?

投資家は、下落がいつまで続くのかが気になるでしょう。現在も在庫の積み増しによる供給過多状態は続いていることから、ウォッチ・チャートやモーガン・スタンレーのアナリストは、ロレックス、パテック フィリップ、オーデマ ピゲの中古相場が下がりを続けると予想しています。

その一方で、中古市場の再燃を期待させる要素もあります。大幅に値崩れしているのはロレックスの「デイトナ」や「サブマリーナー」など、今回の下落前に価格が大幅に上昇していた人気モデルです。このことから、バブル状態だった市場が冷静さを取り戻し、今後はボラティリティ(価格変動)による市場の混乱が収まることが予想されます。

高級腕時計は「ファッション性」と「長期投資」を楽しめる実物資産

「インフレの万能薬」ではありませんが、高級時計には「洗練されたファッション性」と「長期投資」の両方の楽しみを味わえる実物資産としての魅力があります。ただし、投資対象として購入する際は長期的な視野に立ち、値崩れしにくい、資産性の高いものを吟味することが大切です。Wealth Roadでは、今後も高級時計市場の動向をレポートします。

※為替レート:1ドル=147円
※上記は参考情報であり、特定の高級腕時計の売買及び投資を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の運用成果等を保証するものではありません。

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