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どれだけ裕福になってもバフェットが続ける節約法

『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』より一部抜粋

(本記事は、桑原 晃弥氏の著書『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』=KADOKAWA、2021年12月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

どれだけ裕福になっても、倹約と貯蓄を基本とする

バフェットによると、収入の多寡にかかわらずお金持ちになりたい人すべてが心がけるべきことがあります。それが「使うお金は入るお金より少なく」を守り抜くことです。「莫大な遺産を遺したバフェット家の人間はひとりもいないかもしれないが、なにも遺さなかったものもいなかった。稼ぎを使い果たすことはなく、つねに一部を貯めておいた。それでずっとうまくいっているのだ」(『スノーボール(上)』)と話しています。

日本の「公園の父」と呼ばれる本多静六は、投資家として巨万の富を築いたものの、東京大学を退官するにあたり、そのほとんどを教育機関などに寄付したことで知られています。苦学しながら東京農林学校(現在の東京大学農学部)に学び、教授となっていますが、一方で本多は収入の4分の1を必ず天引き貯蓄する「勤倹貯蓄」を行い、その資金を元手に株式投資を行うことで巨万の富を築いた人物です。

まさにバフェットのいう「使うお金は入るお金より少なく」の実践者といえますが、バフェットはさらに「複利式の考え方」をすることで幼い頃から倹約と貯蓄に努めています。

バフェットにとって投資とは消費を延期することを意味しています。先述した『1000ドル儲ける1000の方法』という本で、複利式でお金を増やす威力を実感したバフェットは、今日の1ドルも数年たてば10倍になるのだから、少額のお金だからと安易に消費するのは馬鹿げていると考えるようになりました。

結婚して2人の子どもも生まれたバフェットは、生まれて初めて一軒家を購入しました。価格は3万1500ドルでしたが、複利思考のバフェットの頭の中では100万ドルに等しい買い物であり、すぐに「バフェットの愚行」と名付けたほどです。

複利思考は徹底しており、妻スージーが何かを買いたいと訴えると、「そんなことで五〇万ドルをふいにするのはどうかな」と答え、自らの散髪にすらもこう自問しています。「ほんとうに私はこの散髪に三〇万ドルを費やしたいだろうか」(『スノーボール(上)』)。今日少額のお金でも消費を先延ばしして運用すれば数年後、数十年後にはちょっとした資産になります。こうした複利式の考え方と、質素な生活こそがバフェットを大投資家へと育てたのです。このような考え方はバフェット特有のものではありません。

ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを運営していたこともある「冒険投資家」のジム・ロジャーズは、1980年に数百万ドルを手に引退しています。投資では大成功したロジャーズですが、私生活では「女性と二度ばかり短い結婚生活を送った」ものの、「犠牲もあった」と話しています。理由はこうです。「私には、私たちのために市場で働いてくれるそのお金で新しいソファーを買うのが必要なことには思えなかった。若者が節約し、正しく投資する1ドルはのちに20倍になって返ってくる」(『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行』ジム・ロジャーズ著、林康史、林則行訳、日経ビジネス人文庫)。投資家と暮らすのはなかなか大変です。

しかし、バフェットにとってはこうした生活は少しも苦でありませんでした。早くからビジネスを行い、投資も行って、大学院を卒業した頃には既に2万ドル近い資産を手にしていました。資産は増え続け、グレアム‐ニューマンを辞め、オマハでパートナーシップを始める頃には手元におよそ17万4000ドルもの資金を蓄えていました。

オマハで借りた家は月175ドル、生活費は年1万2000ドル(『スノーボール(上)』)でした。26歳のバフェットの計算によると、引退して手元の資金を運用するだけでも35歳で念願のミリオネアになれるはずでしたが、それだけの資産を持ちながらバフェットが借りた家はかろうじて住める程度の広さしかなく、しかもそこの狭い書斎を事務所として、たった一本の電話を引いてパートナーシップを始めることにしたのです。

バフェットは一つひとつの出費を黄色い罫線に手書きで記入することでできるだけ出費を抑えます。運営するパートナーシップの総資産は膨れ上がり、1966年には4400万ドルに達し、大金持ちになったバフェットは投資家への手紙にこう書きました。「スージーと私は、映画を観に行くおカネを節約して六八四万九九三六ドル投資しています」(『ビジネスは人なり 投資は価値なり』)。質素な生活はその後も続きます。

資産の大半を慈善事業に寄付すると発表した際にも、「わたしは何も犠牲にしていません」「犠牲とは、夜の外出を控えたり、多大な時間を割いたり、ディズニーランド旅行をやめたりして、教会に寄付することです」「わたしの生活はちっとも変っていません」(『バフェットの株主総会』)と話しています。バフェットにとって倹約することは自然なことであり、お金をたくさん稼いで贅沢な暮らしをしたいといったモチベーションはないのです。

ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」
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<著者プロフィール>

桑原 晃弥
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。著書に『トヨタだけが知っている早く帰れる働き方』(文響社)、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP研究所)、『1分間バフェット』(SBクリエイティブ)、『トヨタ式5W1H思考』(KADOKAWA)などがある。

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