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バフェットがITバブル期にIT企業を買わなかったワケ

『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』より一部抜粋

(本記事は、桑原 晃弥氏の著書『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』=KADOKAWA、2021年12月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

10年後に生き残る可能性が高いのは、アプリよりアイスクリーム

株式投資を行う時、たいていの人は株価の動きを見ながら「今は買い時か」「今は売るべき時なのか」を判断しようとしますが、バフェットはそれよりももっと見るべき点があると指摘しています。「大事なのは商品そのものが長期間持ちこたえられるかどうかを考えることです。その銘柄を買うべきか売るべきかを延々と考えるよりも、そちらのほうがはるかに実りが大きいとは思いませんか」(『バフェットの投資原則』ジャネット・ロウ著、平野誠一訳、ダイヤモンド社)

たとえば、バフェットが好んでやまないコカ・コーラにはたくさんの「物語」があります。

コカ・コーラを今日のような世界的な飲み物、アメリカの国民的な飲み物に育て上げたのはロバート・ウッドラフです。ウッドラフの父親が1919年にエイサ・キャンドラー一族からコカ・コーラ社を買収、ホワイト・モーター副社長だったロバートを社長に任命しています。当時のコカ・コーラは借金だらけの厳しい経営を強いられていましたが、ウッドラフはモータリゼーションの波に乗るべく幹線道路沿いの屋外広告の看板を買いまくり、コカ・コーラの商標をあしらったカレンダーや紙ナプキンを全米中にばらまきました。すべてはコカ・コーラを国民的な飲み物にするためでした。

コカ・コーラのイメージを確固たるものにしたのは第二次世界大戦中、ウッドラフがコストを度外視してどの戦地でも兵士が5セントでコカ・コーラを買えるようにあちこちの戦地に工場をつくったことでした。

やがてたくさんの伝説が生まれました。訓練中に衝突して一命をとりとめたパイロットが意識を取り戻して最初に「飲みたい」といったのはコカ・コーラであり、ノルマンディーの上陸を指揮したアイゼンハワーは「何か欲しいものは」と聞かれると、いつも「コークを持って来てくれ」と答えていました。

バフェットによると、コカ・コーラが株式を公開した1919年に初値40ドルで株を買った人が途中の価格変動を無視して持ち続け、配当もすべて再投資していれば、60年余り後の82年には180万ドルの価値を持つことになったといいます。コカ・コーラは戦争や恐慌に負けることなくその「価値」を上げていたのです。

そして今も、バークシャー・ハザウェイの上場株の保有上位15銘柄(2020年12月末現在)の第3位にはコカ・コーラ(保有額219億ドル)が君臨していますし、バフェットが1963年の株価急落中にオマハのレストランや店を調査することで、そのたしかなブランド力を確認したアメリカン・エキスプレスは第4位(保有額183億ドル)と揺るぎない地位を守り続けています。

コカ・コーラほどの物語はなくとも、バフェットは企業が持つブランド力や、みんなに愛される製品をつくる力を高く評価しています。

以前、なぜ成長著しいIT関連企業に投資しないのかと聞かれたバフェットは自信を持ってこう答えています。IT関連ではなく、デイリークイーンを買収した直後のことです。

「デイリークイーンのアイスキャンディーが10年後も生き残っている可能性は、どんなアプリケーションソフトが生き残っている可能性よりも高いでしょう」(『バフェットの株主総会』)

バフェットの投資基準は、みんなの生活にとってなくてはならないもの、お金を出してどうしても買いたいものをつくっている企業で、どの分野であれ強いブランド力を持つ企業のことです。

「信頼できるもの、そして10年、20年、50年経っても欲しいとみんなが思うものを作っているかどうか、これが私が投資判断するうえでの基準です」(『日経ヴェリタス』No.194)

バフェットにとって見るべきは目先の数字ではありません。その企業の持つ商品がどれほどの価値を持ち、それが10年、20年と価値を持ち続けるものかどうかです。投資で見るべきもの、それは昨日、今日の株価の動きではなく、企業や製品の持つ長期的な価値なのです。短期で見れば華々しい活躍を見せる企業、素晴らしい収益を上げる企業はいくつもありますが、そうした企業の多くが3年先、5年先、10年先に光り輝いている可能性はそれほど高くありません。

「偉大な企業とは、今後25年から30年、偉大であり続ける企業のことです。私はそう定義します」(「『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)というバフェットの言葉こそが、株式投資において見るべきは何かを端的に示しています。

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<著者プロフィール>

桑原 晃弥
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。著書に『トヨタだけが知っている早く帰れる働き方』(文響社)、『スティーブ・ジョブズ名語録』(PHP研究所)、『1分間バフェット』(SBクリエイティブ)、『トヨタ式5W1H思考』(KADOKAWA)などがある。

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