『となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」』より一部抜粋
(本記事は、大江 英樹氏の著書『となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」』=朝日新聞出版、2021年12月13日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
目次
これは、あなたの現在の収入や持っている金融資産の額によりますから、一概には言えませんが、仮に金融資産がほとんど無いということであれば、難しいでしょうね。10年間で1億円貯めるには毎年1千万円、20年間でも毎年500万円を蓄える必要があります。20年かけて投資によって増やす場合、年率3%で運用しても毎月33万円ずつ積立投資、運用利回り5%でも毎月28万円は積み立てる必要があります。言うまでもなく、運用の結果は不確実ですから、必ずしもこの通りになるとは限りません。現時点で手取り収入が800万〜1千万円ぐらいあるのなら毎年500万円を貯めるのも不可能ではないでしょうが、そうするとあまりお金をかけない生活にならざるを得ません。若い内ならともかく、年をとってから生活を切り詰めるというのはあまり楽しいものではありません。
そもそも一体何のために〝億り人〞になりたいのかということを考えると、無理してそれに挑戦する必要はあまりないような気がします。50歳からの生活を考えると、公的年金や自分の勤めている会社の退職金の有無に加え、生涯にかかる費用を一度整理してみた上で、必要と思われる金額を目標として貯めるのが現実的だと思います。
FIREは最近ブームになっていますが、そもそも何のためにFIREを目指すのでしょうか?前述したように、私はFIREで大事なのはFI(Financial Independence=経済的自立)であって、RE(Retire Early)ではないと考えています。今FIREに憧れる人の多くは、「今の仕事がつまらないし、あんな上司の下で働くのは嫌だから、いっぱい稼いで〝億り人〞になり、早く会社を辞めたい」という考えなのではないかと思うのです。つまりREが主体になっているということですね。
私はFIREを実現した人たちに何人もお話を聞きましたが、誰ひとりとして早期退職を目的にした人はいませんでした。経済的に自立するということは、その後の人生の選択肢を拡げるということです。今の仕事を仮に辞めたとしても十分生活していけるだけの資産を作っておくことで、その後の人生設計を自由にできるということなのです。
実際に、ある人は40歳で〝億り人〞になりましたが、会社を辞めたのは、50歳を過ぎてからです。会社での仕事には何も不満はなかったものの、親の介護や家族と過ごす時間をたくさん作りたいということで辞めたからです。もしそういう状況でなかったら、恐らく定年まで勤めていただろうということでした。
ですから、経済的自立を目指すのであれば、それはとても良いことなので、すぐに始めた方が良いと思いますが、今の仕事が嫌だということなら、好きになるまで頑張るか、あるいは転職をした方が良いと思います。資産形成とそれは別に考えるべきです。
資産形成を始める=〝億り人〞を目指すのに良い時期というのはありません。時期を気にするというのは短期的な値動きを追いかけて利ざやを稼ごうという気持ちがあるからだと思います。株式の場合は短期的な値動きを的確に読むことなど誰もできません。時間をかけて長期に保有するなり、積み立てるなりすることで資産は出来上がっていくのです。もし積立投資をするのであれば、むしろ高い時に始める方が効果は得やすいと言っていいでしょう。なぜなら積立を始めた後に下がり続ける、ということは続けるほど平均保有コストは下がります。株というものは永遠に上がり続けることも下がり続けることもありませんから、下がったものはいつかは上がります。したがって安い平均コストで買ったものは次の上昇局面で大きな利益を得ることができるからです。
不動産投資も短期的な値ざや稼ぎをするのではなく、高い利回りを目指して賃貸経営をするということです。したがって、景気の動向によって影響はありますが、少なくとも20年とか30年というスパンで考えるのなら、それほど時期を気にする必要はないでしょう。
※上記は参考情報であり、株式投資や債券投資、
<著者プロフィール>
大江 英樹
経済コラムニスト
野村證券で25年間にわたって個人の資産相談業務に関わった後、確定拠出年金の運営管理業務に携わる。40万人以上の確定拠出年金加入者に対して投資教育を提供してきた。長年にわたる投資教育の経験から資産運用の基本や行動経済学、シニア層のセカンドライフプランにも詳しく、独立後は、株式会社オフィス・リベルタス代表として、全国での講演や執筆などを中心に活動している。
『となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」』