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普通のサラリーマンで「資産家になれる」特徴とは?

『となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」』より一部抜粋

(本記事は、大江 英樹氏の著書『となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」』=朝日新聞出版、2021年12月13日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

サラリーマン編

前節では、自営業やフリーランスで億り人になる人たちに多い思考や行動習慣についてお話ししました。今回はそれらの人たちではなく、給与所得者、つまり会社や役所に勤める仕事をしている人で資産家になった人のパターンや特徴についてお話しします。36ページでもお話ししましたが、実は会社勤めでずっと定年まで過ごした人の中にも驚くほど多くの資産を築いた人は少なくありません。特に親から遺産相続をしたわけでもなく、会社の中で役員になるといった大きな出世をしたわけではなくてもそういう人は間違いなくいます。私も25年間、投資相談業務をやってきた中でそういう人たちをたくさん見てきました。そしてそんな人たちにも共通点は間違いなくあります。ではその行動や思考とは一体どのようなものなのでしょうか?

天引きの習慣を身につけている

自営業と違って勤め人の場合、収入に大きなバラツキはありません。ボーナスなどは年によって増えたり減ったりすることはあるでしょうが、毎月の給料は、極端な長時間残業でもなければそれほどブレることはないでしょう。安定している代わりに収入を大きく増やすということも短期的には難しいのです。したがって収入がそう簡単に増えないのであれば、支出を減らそうという方向に動きがちです。いわゆる「節約」であり、世の中には「節約術」指南書もたくさん出ています。もちろん無駄な支出を減らすのは必要なことですし、支出の適正化が大事であることは次節でもお話ししますが、やたら節約指向だけに走ってしまうと生活が楽しくなくなります。特に何かの目的のために一定金額を貯めようということで一定の期間はお金を使うことを我慢することはできるでしょうが、何十年にもわたってずっと節約を続けるというのはつらいものです。

私は節約よりももっと大事なことが「天引きの習慣」だと思います。サラリーマンのように決まった収入のある人にとってお金を増やすために最も必要なことは、〝自分の視界からお金を見えないようにすること〞です。「天引き」というのはまさにそのための方法です。天引きされたお金は見えないままに貯まっていくからです。

そしてこの場合の天引きは必ずしも投資でなくてもかまいません。単に貯蓄でも良いのです。「でも貯蓄じゃお金は増えないでしょう、やっぱり積立投資の方がいいんじゃない?」と思う人もいるでしょう。けれども後ほど述べるように、最初はむしろ投資よりも貯蓄にした方が良いのです。それに「積立投資」というのは資産形成にとってはとても良い方法であることは確かですが、さりとて積立投資だけで大金持ちになったという人はそれほど多くはいません。これも後ほど第3章で詳しく紹介しますが、積立投資もやみくもにただやれば良いというわけではなく、成功するために考えるべきことと注意しておくべきことはあります。したがって、最初は貯蓄であってもかまわないので天引きで資金をある程度こしらえておくことはとても大切なことです。天引きで一定の貯蓄額ができた後に積立投資を始めるということでも決して遅くはないと思います。

生活パターンを確立している

収入が一定のサラリーマンだからこそ、天引きの習慣を身につけることが大事だということは今お話しした通りですが、もう一歩踏み込んで生活パターン自体を考えてみましょう。人生においてお金とは「稼ぐ」「使う」「貯める」「増やす」そして「守る」ものです。億り人になるためにはこれらをどうやってコントロールしていくかが重要なのです。ただしこの内、最後の「守る」はそれなりに資産ができあがった後の話ですから、これから資産作りをしようというフェーズの人にとってはあまり考える必要はないでしょう。

また、初めの「稼ぐ」、これはとても重要な要素ですが、自営業の人ならともかく、サラリーマンではそれほど急に収入が増えるということはあまりありません。もちろんどこかの外資系企業にスカウトされて年収が一挙に2倍とか3倍になるという人もいますが、これは誰でもできるわけではありません。第3章のはじめにお話ししますが、そういうパターンはあまり再現性がありません。本書ではやろうと思えばやれることに絞ってお話をしていきますので、転職による大幅な年収増というのは取り上げません。

そうするとコントロールに必要なのは「使う」、「貯める」、「増やす」という3つのフェーズということになります。先ほども述べましたが、私はこの中でまずは「貯める」ということから始めるべきだと思います。すなわち給料をもらったらそのまま生活費に使い、残ったお金を貯めるのではなく、まず最初に天引きで貯めることから始めるのです。

明治から昭和にかけて植林、造園、産業振興等多方面で活躍し、同時に投資によって巨額の資産を築いた本多静六(ほんだせいろく)という人がいます。彼は大学で教鞭をとっていたので、自営業ではなく、給与所得者です。彼の書いた『私の財産告白』は今日に至るも資産形成に関する不朽の名著と言っていいのですが、その中で彼は「本多式四分の一貯金法」という考え方を説いています。月給などの月々決まった収入はその四分の一を天引きで貯金しよう、そして賞与などの臨時収入は全額を貯金につぎ込む、という方法です。四分の一、つまり給料の25%ですからこれはかなり苦しい生活になるでしょう。そこまでしなくてもいいかもしれませんが、少なくとも1割〜2割は貯金に回すのが良いと思います。彼はそうやって貯めたお金を投資に回していったわけですが、現代であれば、一定の目標金額まで貯めれば、そこから先は貯金に回していた分のお金を積立投資に回すのが良いでしょう。一定の目標は人によって異なるでしょうが、私は年間に必要な生活費の2年分を目処(めど)にするのが良いと思います。昔と違い、今はサラリーマンといえども身分が完全に安泰というわけではありません。いつなん時、職を失うことになるかわからない。そのことはコロナ禍で多くの人が経験されたことでしょう。したがって、最低でも年間生活費の1年分、できれば2年分はリスクヘッジのために持っておくべきです。

したがって、まず天引きで「貯める」、そして天引きした残りのお金は「使う」、そう全部使ってもいいのです。そして一定額まで貯まったら、貯めたお金には手を付けず、それまで天引きしていたお金を「増やす」ために「貯蓄」ではなく、「投資」へ回していく。こういう生活パターンをできるだけ早い内から確立していくことが大切です。サラリーマンでありながら40代、50代で〝億り人〞になった人たちの多くはこのパターンで財産をこしらえているのです。

何でも自分で考える

これはサラリーマンでなくても大事なことです。ただ、自営業や企業経営者の場合、誰も何も教えてくれないし、指示もしてくれませんから自分で考えて判断するしかないので、必然的にこの習慣は身についています。ところが、勤めている人はなかなかそういうわけにはいきません。自分で判断して動いても上から否定されることもあります。したがって上からの指示がないと動けないというのは、本人の責任ではなく仕方のないことなのです。でも資産を作るために投資をするのであれば、絶対に自分で考えて判断しないとだめです。なぜなら人に聞いて投資をした場合、そしてそれがうまくいかなかった場合は、後悔が残るからです。さらにもっと悪いことは成功しても失敗してもその経験に学ぶということができないからです。「何か儲かる銘柄はないですか?」とか「どうやったらお金が貯まりますか?」みたいなことを聞く人は永遠にお金持ちにはなれません。失敗もしながら何でも自分で考えるということが何よりも大切なことなのです。

また、安易に人の言うことや勧めを受け入れるのではなく、何事においても疑ってかかることは資産を作る上では大切です。具体的な例を考えてみましょう。保険とローンについてです。この2つはどちらも資産作りにとっては大敵と言ってもいいものです。

保険に関して言えば、保険の目的は「補償」です。さらに言うと「確率極小、損失極大」といった事態に備えることにあります。つまり滅多に起こらないけれど、もし起こってしまったら、とても自分の蓄えではまかなえないことに対応するためにあるのです。それに日本の場合、社会保険制度が発達していますから、医療についてもほとんどは公的医療保険でまかなうことができますし、生命保険についても必要なのは本当に人生のごく一時期だけですから、限定的に利用すれば良いのです。公的年金でカバーされる遺族年金は多くの人が考えている以上に給付される総額は大きいですから、まずはそちらの金額を調べた上で、足りないと思った部分だけ加入すればいいのです。

また、ローンというのは名前がどうであれ「借金」です。借金はそれにかかるコストを上回るリターンが得られる場合に利用することで経済的な利益が得られるものです。コストというのは言うまでもなく金利です。つまり自己資金だけでやるよりも金利というコストを負担してレバレッジをかけることで大きなリターンを取りにいくための手段が借金であり、そうでなければ金利を支払うということは大いにお金の無駄です。

家を建てるというのはある意味、将来にわたって自分が安住できる場所を確保できるという精神的なリターンが大きいのでローンを使って建てるというのは理解できます。ところが旅行に行ったり、欲しいものを買うためにカードローンを使ったりリボ払いで利用したりするのは資産形成を考える上ではとんでもない無駄なコストです。したがって、保険もローンも「本当にそれを利用する価値があるのか?」ということを自分で考え抜いて利用すべきでしょう。

サラリーマンで億り人になった人の多くは、「保険は加入した方が良い」とか「欲しいものがあればローンで手に入れればいい」という一般的な社会通念に安易に乗っかるのではなく、それが本当に必要かどうかをしっかりと自分の頭で考え抜いています。もちろん必要であるという結論に達したのであれば、できるだけ安いコストで利用することは考えてもいいのですが、そこに至るまでにどれだけ自分の頭で考えたのかはとても重要なことだと思います。

※上記は参考情報であり、株式投資や債券投資、そのほかの投資を推奨するものではありません。

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<著者プロフィール>

大江 英樹
経済コラムニスト
野村證券で25年間にわたって個人の資産相談業務に関わった後、確定拠出年金の運営管理業務に携わる。40万人以上の確定拠出年金加入者に対して投資教育を提供してきた。長年にわたる投資教育の経験から資産運用の基本や行動経済学、シニア層のセカンドライフプランにも詳しく、独立後は、株式会社オフィス・リベルタス代表として、全国での講演や執筆などを中心に活動している。

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