『サクッとわかるビジネス教養 お金の基本』より一部抜粋
(本記事は、杉山 敏啓氏の著書『サクッとわかるビジネス教養 お金の基本』=新星出版社 、2021年9月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
会社は1年間の業務を終えると、締(し)めくくりとして1年間の経営活動の結果を総まとめします。この作業を「決算(けっさん)」といい、作成する書類を「決算書※1」といいます。決算書の作成は法律によってすべての会社で作成が義務づけられています。
決算書には重要な書類が2つあります。1つは「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」で、もう1つは「損益計算書(そんえきけいさんしょ)」です。貸借対照表には決算時点での会社の財政状態が書かれています。これを見ると、会社の資金(資本)がどこから調達されて、いまどのように運用されているかがわかります。右上の図のように、資産、負債、純資産の3つの部からできていて、資産の額と、負債と純資産の合計額は必ず一致します。
一方、損益計算書は1年間で売上や利益がどれだけあったかをまとめた書類、つまり会社の1年間の経営成績が書かれた書類です。左上の図のように、収益、費用、利益の3つの要素に分かれます。会社のお金がどうなっているかは、これらの決算書を見ればわかるようになっています。
なお証券取引所に上場している会社は、決算時に「キャッシュ・フロー計算書※2」という書類の作成も義務づけられています。
損益計算書は「勘定式(かんじょうしき)」と「報告式(ほうこくしき)」という2つの形式があります。64ページや67ページの図が勘定式で、このページの上図が報告式です。
そこで64ページの図をもう一度見てください。会社に入ってくるお金(キャッシュイン)は、会社が本業で得た売上高や、投融資(とうゆうし) の成果などの営業外収益といった「収益」です。一方、会社から外部へ出ていくお金(キャッシュアウト)は、仕入代金などの売上原価や、社員の給与などの販管費(はんかんひ )、借入金の利息などの営業外費用、法人税など税金といった「費用」です。そして収益から費用を差し引いた残りが会社の「利益」です。
次に損益計算書を報告式であらわした上図を見てください。このように利益には5つの種類があります。まず売上高から売上原価を差し引いた残りが「粗利(あらり)」と呼ばれる売上総利益、ここから販管費を差し引いた残りが会社の本業で上げた利益である営業利益です。経常利益は「ケイツネ」と呼ばれ、一般的に最も重視される利益です。ここから本業以外で偶発的に発生した収益と費用を加減したものが税引前当期純利益、さらに法人税等(税金)を差し引いたものが会社に最終的に残った利益の当期純利益です。
※ 1 財務諸表ともいう。
※ 2 会社の現金(キャッシュ)の出入りと、会社に残った残額がわかる書類。
<著者プロフィール>
杉山 敏啓
江戸川大学教授・博士(経済学)
1969年東京都生まれ。聖光学院高等学校卒業、青山学院大学経済学部首席卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了。都市銀行系シンクタンクで金融分野の研究開発・コンサルティングに長年従事。この間、立命館大学MOT大学院客員教授、東京大学大学院工学系研究科研究員、京都市会計室金融専門員などを兼務歴任し金融分野の理論と実務の両面に深く携わる。2018年より江戸川大学社会学部経営社会学科教授として金融ビジネス基礎、ファイナンシャル・プランナー育成ゼミ等の講義で教鞭をとる。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、証券経済学会員、日本金融学会員。 著書(含む共著・監修)に『金融の基本教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)、『用語でわかる金融の基本としくみ』(日本能率協会マネジメントセンター)、『手にとるように金融がわかる本(監修)』(かんき出版)、『ペイオフ対策のための金融機関評価と選択』(生産性出版)、『銀行の次世代経営管理システム』(金融財政事情研究会)、『金融機関のアウトソーシング』(シグマベイスキャピタル)、『日本金融の誤解と誤算』(勁草書房)、『銀行業の競争度』(日本評論社)など。金融専門誌や学術誌への寄稿、講演、メディア取材対応等の実績多数。