『サクッとわかるビジネス教養 お金の基本』より一部抜粋
(本記事は、杉山 敏啓氏の著書『サクッとわかるビジネス教養 お金の基本』=新星出版社 、2021年9月10日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
日本人は預金が好きといわれます。家計の金融資産に占める預金の割合は米国が約13%、英国が約24%であるのに対して、※1 日本の預金の割合は約52%と突出(とっしゅつ)して高い水準です。
欧米の家計の金融資産では株式・投資信託の構成比が高く、財産形成において「リスク金融資産」が積極的に活用されています。
円預金の金利は低下しており、最近の一般的な定期預金金利は0.002%です。他方、日本の株式平均利回りは※2 2.4%です。株式や株式投資信託には損をするリスクはありますが、値動きをしつつも平均的には預金を大きく上回るプラスのリターンを実現しています。
リスク金融資産は現金とは違ってインフレに強い性質がある点も見逃せません。
世界の人口は今後ますます増加します。人口が増えて消費が旺盛になれば、限りある資源の奪い合いとなり、モノの値段は上がりやすくなります。日本国内でもモノやサービスの値段に影響し、物価が上昇し続けるインフレ時代がやってくるかもしれません。
将来の財産形成にあたっては、インフレ時代にも価値が目減(めべり)しにくい金融資産を活用することが合理的といえます。
お金を増やしたいなら、まず心がけてほしいのが「借金はできるだけしない」こと。いまは手軽に借金ができる時代ですが、お金を借りれば必ず「利息(りそく)」が発生します。借りた額より多く返さなくてはならないのですから、借金は資産づくりにとって大敵です。
クレジットカードやカードローンのキャッシングは借金そのものですし、ほかにも金利や手数料がかかるサービスはできるだけ利用しないことが、お金づくりの基本姿勢です。
ただ、住宅ローンなど生活に必要で、資産になる借金は例外です。
資産づくりの基本の2つめは「しっかり貯金する」こと。確実にコツコツ貯金を増やすには「毎月天引(てんびき)」が一番。つまり収入から支出を差し引いた残りを貯金するのではなく、収入から先に貯金を差し引き、残りを支出にあてるという考え方です。
例えば、会社に財形貯蓄(ざいけいちょちく)制度がある場合はぜひ利用しましょう。毎月の給与から一定額を強制的に天引きしてくれるので、いつの間にかお金が貯(た)まります。なお、財形制度を利用できない人は、銀行の自動積立預金などを利用しても同様の効果が得られます。
※1 金融広報中央委員会の資料による。
※2 2020年の東証1部の加重平均。
<著者プロフィール>
杉山 敏啓
江戸川大学教授・博士(経済学)
1969年東京都生まれ。聖光学院高等学校卒業、青山学院大学経済学部首席卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了、埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了。都市銀行系シンクタンクで金融分野の研究開発・コンサルティングに長年従事。この間、立命館大学MOT大学院客員教授、東京大学大学院工学系研究科研究員、京都市会計室金融専門員などを兼務歴任し金融分野の理論と実務の両面に深く携わる。2018年より江戸川大学社会学部経営社会学科教授として金融ビジネス基礎、ファイナンシャル・プランナー育成ゼミ等の講義で教鞭をとる。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、証券経済学会員、日本金融学会員。 著書(含む共著・監修)に『金融の基本教科書』(日本能率協会マネジメントセンター)、『用語でわかる金融の基本としくみ』(日本能率協会マネジメントセンター)、『手にとるように金融がわかる本(監修)』(かんき出版)、『ペイオフ対策のための金融機関評価と選択』(生産性出版)、『銀行の次世代経営管理システム』(金融財政事情研究会)、『金融機関のアウトソーシング』(シグマベイスキャピタル)、『日本金融の誤解と誤算』(勁草書房)、『銀行業の競争度』(日本評論社)など。金融専門誌や学術誌への寄稿、講演、メディア取材対応等の実績多数。