『不動産投資と資産管理法人戦略』より一部抜粋
(本記事は、中元 崇氏の著書『不動産投資と資産管理法人戦略』=プラチナ出版、2021年5月7日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
著者 中元 崇氏
目次
不動産投資の収益構造を理解しよう!
投資指標や共通言語を理解しよう!
上手に不動産投資を進めて資産を拡大していくには、不動産投資の収益構造を理解する必要があります。そのためには、不動産の投資分析を自分でできるようにしておきましょう。
*さらに理解を深めていただけるよう、YouTubeの「CFネッツセミナーチャンネル」で不動産投資のさまざまなノウハウを提供しています。
そこで投資指標について理解しておく必要があります。「難しそう」と思われるかもしれませんが、基本は単純な算数ですので慣れれば大丈夫です。
投資分析がある程度理解できれば、「この不動産を買おうと思っていたけど、計算するとお金が残らない」「この利回りは相場と比べて低い高いのでは?」といったことがわかるようになってきます。
キャッシュフローツリーや投資指標といった不動産投資の世界での共通言語を理解すると、不動産投資会社の営業マンにも惑わされなくなるはずです。
「この物件はいいですよ」
「場所がいいですよ」
「利回りが高いからいいですよ」といった具合に、いい話ばかり聞かされるだけでなく、自分で判断がつくようになります。少なくとも「キャップレート」という言葉さえ知らない業者から買うのは危険です。
また、キャッシュフローツリーや投資指標など、とっつきづらい不動産投資に係る共通言語に慣れておくことも大切です。投資の営業電話がかかってきたときでも、情報の良し悪しを判断できるようにしましょう。
キャッシュフローツリーについて、具体的に説明していく前に、オーナーまでの道のりは、基本的には上の図表1-4-1のような流れで進むことを知っておいてください。
ただし、現金購入でなければ先に資金調達を受ける銀行を押さえたうえで物件を探し、いい物件があったら投資分析し、見に行ってその物件を買い付ける、という流れが現実的です。
このような手順を踏んでおかないと、他の買い付け者と競合した場合、そちらを優先されることが多々あります。
特に自分が良いなと思う物件は、他の投資家にとっても良い物件であることがほとんどですから、競合相手に勝つためにも事前の段取りである図表1-4-1の「5 銀行事前審査」が重要なポイントになります。
それでは、不動産投資を行うにあたり、まず投資の総額(物件価格+諸費用+修繕費用)を明確にしましょう。
投資物件だと、物件価格に対しての諸費用は、だいたい7%から8%がひとつの目安です。
修繕費用は物件の状況によって変わりますが、中古の物件を購入される場合には、あらかじめ修繕見積りを確認しておくと良いでしょう。
たとえば、物件価格が5,000万円で、
諸費用が400万円、
加えて、修繕コスト(中古のアパートなどで鉄部の塗装や給湯器の
取り換え費用)で100万円がかかる場合、
投資総額は5,500万円ということになります。
こうして物件金額、諸費用、修繕費用がわかり、投資総額が出たところで、いったい自分はどれほど借入れができるのかと通常は考えます。
しかし、先ほど解説したとおり、できれば借入れできる金額は、物件探しをする前に、先に確認しておきます。
仮に、投資総額5,500万円の物件で借入れ金が4,500万円の場合、自己資金1,000万円程度が必要になります。
ところが、仮に自己資金が500万円を前提で物件探しをされる人にとっては、そもそも5,000万円まで融資を受けられないのであれば、この規模の物件は購入できないということになります。
つまり、自分が銀行からどれぐらいまで借りられるのか、ということを先に押さえておかないと、買える物件の上限がわからないのです。
まずは調達可能な融資額を把握したうえで、手元の自己資金をどこまで出せるのかによって、購入を検討できる物件価格の上限額が決まってきます。
投資の総額を明確にしたうえで、物件価格の何割まで融資を受けるのか等、どういう資金計画で進めるのか、ということを考えなければなりません。
たとえばAさんが金利2.2%で30年の融資が受けられたからと言って、Bさんも同じ融資が受けられるというものではありません。購入する物件の評価額と購入する人の「個人的属性」を総合的に判断して金融機関は決まってきます。
極端な例ですが、さんざん高額なセミナーなどに参加し、不動産投資の勉強を積み重ねてきて、いよいよ不動産投資をしようと考えたところ、金融機関の借入れが一切できなかったという人もいます。
また最近では、その人の勤め先が従来は優良企業だったので有利な条件で借入れができましたが、現在は融資が不可ということも出てきています。したがって金融機関の事前審査は大切なのです。
だからといって個人的に金融機関の一般的な窓口で相談しても、その窓口の人がアパートローンに精通しているわけではありませんから、うまくいくはずはありません。
私自身も長く不動産コンサルを行ってきていますが、この事前審査をどこの金融機関に持ち込めば一番有利な回答が得られるかが難しい仕事なのです。金融機関の事情によってすんなり融資が受けられるときもあれば、同じ金融機関でも、すごくハードルが上がってしまうこともあります。
この部分については、真剣に不動産投資を考えられている方は、ぜひ、ご相談いただいたほうが良いと思います。
各略語の正式名称
GPI (Gross Potential Income)グロスポテンシャルインカム
EGI (Effected Gross Income)エフェクテッドグロスインカム
OPEX(Operating Expenses)オペレーティングエクスペンシス
NOI(Net Operating Income)ネットオペレーティングインカム
ADS(Annual Debt Service)アニュアルデッドサービス
BTCF(Before Tax Cash Flow)ビフォアタックスキャッシュフロー
物件購入後に引渡しを受けたその日、賃貸中の物件であったとしても、入居者全員が退去するということもありえます。
また、古くから住んでいる入居者は今と比較して高い賃料で入居していることもありますので、次の入居者募集時には賃料が大きく下落してしまうこともありえます。
1)こうしたケースを事前に想定する
潜在総収入(GPI)といって、相場ではいくらで貸せるのかを出しておく必要があります。そこから、エリアの空室率と未回収損(次項で詳説)のリスクを控除し、
実効総収入(EGI)を出し、
運営費(OPEX)として、
・固定資産税や賃貸管理手数料、共用部の光熱費
・区分マンションであれば管理費や修繕積立金
などを引いて、初めて営業純利益(NOI)がわかります。
さらに、銀行からお金を借りている場合は負債支払額(ADS)を引いて、
税引き前の収入(BTCF)が残るわけです。
これらの数値をすべて年間で計算します。
当然ながら売り手はなるべく高く売りたいので、利回りをよく見せようと、想定賃料を高くしがちです。
しかし、買い手としては、賃貸業者をヒアリングしたり、賃貸系のサイトで相場を調べたりして、相場の賃料で計算する必要があります。とくに遠方の物件を購入する場合、注意が必要です。
2)満室想定賃料と潜在総収入の違い
たとえば、次の図表1-4-4のように、
4世帯のアパートで、5万円、6万円、7万円で3室が埋まり、
残り1室を5万円で募集している場合、
満室想定賃料は月23万円、年276万円になります。
こういう広告図面はよくあります。
しかし、この既存の居住者が部屋を出た場合はいくらで貸せるのか、ということを考えなければいけません。
仮に相場賃料が5万円とすると、このアパートの潜在総収入は月20万円、年240万円という前提で計算していく必要があります。
身内や関連業者を住まわせて、高く賃料を取っていることにして、少しでも利回りをよく見せようという「偽装入居」ということも過去にありました。そんなこともあるからこそ、今の居住者が退去した場合に、実際にいくらで貸せるのかが重要なのです。