『不動産投資と資産管理法人戦略』より一部抜粋
(本記事は、中元 崇氏の著書『不動産投資と資産管理法人戦略』=プラチナ出版、2021年5月7日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
著者 中元 崇氏
不動産を取得し、それを貸すことにより、定期的な家賃収入が得られます。継続的な収入の確保ができます。
一般的には、金融機関からお金を借りて、不動産を取得し、そのローンを返済していくことになりますが、取得した不動産を貸して、家賃収入を得て、そこから経費やローンの返済金を差し引いても、手元にお金が残るという一連のお金の流れが、自分で出資した分以外は他人のお金でまかなえることになります。
そして、そのローンの元金返済が進むにつれて、その不動産物件の価格と返済によって減った元金との差が含み資産になって、自分の資産がふくらんでいきます。
たとえば、1,000万円で買った中古の区分マンションが、場所により、あるいは物件により、将来的に1,500万円になる可能性もないわけでは、ありません。
ただし値上がりのみを見込んで、リスク、つまり入居者の確保に難点がある物件の購入はしてはいけません。
あくまで、確実な家賃収入を得られることを基本として、なおかつ、将来的に値上がりの可能性もありうるならば、最も望ましいということです。
インフレで、物の価値が上がり、お金の価値が下がるとき、不動産の価格も上がり、それに連動して家賃も上昇します。
また、その物件を売却するときは、その価値の上昇した相場で売ることもできます。
たとえば、アパートを1億円で買うために、その不動産を担保として銀行から1億円借り入れた場合、その不動産の価格が翌年9,000万円になったとしても、差額の1,000万円を繰上げ返済する必要もなく、追加担保・追加証拠金なども求められることはありません。
つまり、不動産の価格が変動して、その価額が下がったとしても、その不動産を売る必要はないし、追加してお金を返す必要もなく、継続して家賃収入が得られます。
たとえば、アパートを1億円で買うために、その不動産を担保として銀行から1億円借り入れたとき、その不動産の価格が5年後に9,000万円になってしまったとします。
しかし、その不動産のローン返済が進んでいて、元金が8,000万円になっていれば、価格が値下がりしたその不動産を売却しても、1,000万円の売却益(含み益)が得られます。
通常はお金を借りていなくて、1,000万円の現金しかなければ、1,000万円までの範囲の不動産しか買えませんが、ほかに担保価値9,000万円の不動産を持っていれば、合計1億円までの融資を受けられることになります。
あるいは、買おうとしている物件を担保に入れれば、その分多く融資を受けることができます。
このようにして、不動産の物件選定の範囲が広がることで、より大きな物件の不動産の取得が可能になります。
たとえば、外装、内装をきれいにして売却益を上げるとか、室内の設備を整えることで家賃収入を上げるなど収益性を高めることができます。
つまり、自分自身の工夫次第で、貸し出し賃料や売却価格に影響を与えることが可能だということです。
1億円の現金の相続税評価は、1億円になります。減額要素がありません。
しかし、1億円の不動産、たとえばアパートの相続税評価は、東京都の場合、貸家建付地や小規模宅地の評価減を利用することで30%から40%に圧縮されます。ここまで相続税評価が下がる財産というのは、不動産以外にはありません。
仮に相続税評価が4,000万円になったとすると、相続税評価の圧縮効果は6,000万円になり、相続税率50%の場合、3,000万円の相続税が圧縮されたことになります。
だからといって、余っている土地になんでもかんでもアパートを建てれば、相続税対策になるわけでは、ありません。畑の真ん中にアパートを建てても、入居者がいなければ、不動産の資産価値自体が下がってしまいます。
将来価値とか入居率を全く考えない相続対策は危険です。
たとえば、1棟マンションよりは単価が低い区分マンションの購入でも、少なくとも数十万円の頭金が必要になります。
不動産は、今日買って、今日売るということは、基本的にしづらいです。
金利上昇に備えて、頭金を厚くしたり、固定金利にしたり、また地震・火災には、損害保険でカバーしたりといった対策が必要になります。
たとえば、価格1,000万円の区分マンションが1,200万円に上がったとしても、短期の売買(保有期間5年未満)の場合、短期譲渡税率が約39パーセントかかり、購入したときまたは売ったときの経費、そしてそのときの税金を考えると、たとえ200万円の値上がりがあったとしても、それほど利益はでません。
もちろん、個人で購入したか、法人で購入したかにより、違いはありますが、個人で購入した場合は、思ったほどの利益につながらないので、売却はやめるようアドバイスするケースが多々あります。
典型的な例は、新築投資用3,000万円の区分マンションで全額ローンの場合、所有していてもキャッシュフローがマイナスであることから、売却を検討するにしても、たとえばそのマンション価格が翌年2,500万円に値下がりしてしまえば、売却しようとしても、その抵当権をはずすために3,000万円を支払わなければなりません。
たとえ2,500万円で売れても、500万円は、追加負担になります。そしてその資金が用意できなければ持ち続けなければならず、赤字の垂れ流しとなってしまいます。そのような物件は、買ってはいけません。
相続の遺産分割で区分のマンションの1室の場合はもちろんですが、1棟のアパートの1階部分を兄に、2階部分を弟にというようには、なかなかいきません。
「共有」といって持分を持ち合うという方法もありますが、親子間での持ち合いはいいとしても、兄弟間での持ち合いは、相続後の権利関係が複雑になることからおすすめできません。