『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』より一部抜粋
(本記事は、山中 伸枝氏の著書『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』=同文舘出版、2021年7月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
目次
運用に関する質問
iDeCoのリスクは何ですか?
仕組み上は、60歳まで引き出しができないことですが、やはり運用における損失リスクが最も気をつけるべき点でしょう。特に投資信託は、運用状況次第では元本割れすることもありますし、その損失を補填する仕組みはありません。
ただし、iDeCoで選択する定期預金は預金保護の対象、保険商品も保険契約保護の対象で、投資信託は運用会社から分別管理されているので、それぞれの金融商品提供会社が破綻したところで、加入者が大きなリスクを負うことはありません。
また、運営管理機関が破綻しても、別の運営管理機関が窓口となりますから、問題はありません。
資産運用が不安です。どうしたらいいですか?
運営管理機関も、FPも、特定の金融商品を「お勧め」することは法律で禁じられています。しかし、資産運用について学ぶことはできますので、中長期的にアドバイスを求めるのはよい考えでしょう。
もし、どうしても値動きのある運用はしたくないということであれば、定期預金や保険商品などの元本確保型を選ぶのも選択肢です。
しかし、自分でなかなか金融商品が決められないという場合であっても、そのままにしていてはいけません。所定の日時までに金融商品を自らが選ばなければ、その運営管理機関指定の商品に自動的にお金が振り替えられるからです。
この指定商品は運営管理機関によって投資信託になることもありますので、あらかじめ確認が必要です。
運用商品はどんな風に選んだらいいですか?
例えばiDeCo公式ウェブサイトにも資産運用に関する情報が掲載されていますし、各運営管理機関でも運用商品選びの際に参考になるようなコンテンツが準備されています。
前述のように、特定の運用商品の推奨は法律で禁じられていますが、資産運用の知識を学ぶことができます。
iDeCoの場合、選べる運用商品も35種類程度と決まっているため、ある程度勉強していただければご自身で運用商品を選べるようになるのではないかと思います。
また、運営管理機関によっては、各運用商品を比較検討するツールが充実していて、商品選びの参考にできるところもあります。最近では、ポートフォリオ(資産配分)ツールが充実しているところも多いです。
運用商品は一度決めたものをずっと継続するというのではなく、次月の積立金で購入する運用商品を変更する(配分変更)ことや、これまでの残高を一部あるいは全部売却して別の金融商品を購入する(スイッチング)ということも随時できます。
iDeCoの運用商品にはどんなものがありますか?
iDeCoの運用商品は、運営管理機関によって異なりますが、必ず元本確保型と元本変動型の商品の2種類があります。
元本確保型と呼ばれる商品には定期預金と保険が多いです。こちらは文字通り、元本が割れない商品という意味ですが、満期日前の解約(iDeCoの口座内での売買)では利息が予定通りつかなかったり、解約時ペナルティで元本より解約金が下回ることもあります。
元本変動型と呼ばれる商品は投資信託です。債券、株式、不動産、コモディティに投資するものなど、さまざまあります。特徴として、通常かかる購入手数料がすべて無料、日々かかる信託報酬が低いので、銀行や証券会社で同じ投資信託を扱っていても、iDeCoの口座で投資したほうが有利になります。
iDeCoの運用商品は複数選べますか?
iDeCoの運用商品数は運営管理機関によって異なります。厚生労働省が35種類程度と定めているので、おおむねその程度のラインナップをそろえています。
その中で、1つの商品を選んでもよいですし、複数商品を選んでも構いません。
選んだ商品は入れ替えも可能です。iDeCoの口座内では、いつでも商品の売買が可能です。売買をすることで確定した利益は非課税ですから、複利の効果を用い、次の投資に振り向けることができます。
複数の商品を選ぶ時には、割合で指定します。例えば、毎月の掛金2万円のうちA商品を40%、B商品を30%、C商品を30%、合計100%という風にです。割合で指定することにより、掛金額を変更してもスムーズに商品の買いつけを継続することが可能になります。
年代別に運用で気をつけることはありますか?
iDeCoは60歳まで積立を継続し運用する仕組みですから、若い方は運用期間が長く、年齢が上がるにつれ運用期間が短くなります。
一般的には、運用期間が長い場合は積極的な運用、運用期間が短い場合は安定的な運用を目指すべきとされています。
積極的な運用とは、株式を中心とした運用、反対に安定的な運用とは債券を中心とした運用という意味です。資産運用の基本は、株式や債券といった投資先を分散し、適当な割合で組み合わせる資産配分が非常に重要なのですが、その配分を投資期間によって変えることも重要です。
最近は、このような年齢による投資期間の変化に着目した「ターゲットイヤーファンド」も注目されています。これは自身の年齢に合わせたターゲットイヤーファンドを選ぶと、60歳に向けて、徐々にその投資配分を積極型から安定型に変更してくれるという投資信託です。
iDeCoの他にNISAもできますか?
NISA(ニーサ)とは少額投資非課税制度と呼ばれ、iDeCoと並んで注目される税制優遇のある資産形成の仕組みです。iDeCoと同様、運用益は非課税ですが、iDeCoと異なり掛金は所得控除になりません。
iDeCoは60歳まで資金の引き出しはできませんが、NISAはいつでも解約が可能です。したがって、用途に合わせ資産運用の「場所」を変えるという意味で併用は大賛成です。
NISAは2種類あり、どちらか一方を選択します。「一般NISA」は、運用益非課税期間が5年間で1年間に投資できる枠が120万円です。「つみたてNISA」は、運用益非課税期間が20年で1年間に投資できる枠が40万円です。
一般NISAは2023年に制度変更が行なわれ、複雑になりそうですから、これから始める方の場合、つみたてNISAのほうがよいかもしれません。
<著者プロフィール>
山中 伸枝(やまなかのぶえ)氏
心とお財布を幸せにする専門家ファイナンシャルプランナー(CFP®)株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役FP相談ねっと代表 一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。執筆:金融庁サイト有識者コラム連載、50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話(東洋経済新報社)、ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他
『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』