『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』より一部抜粋
(本記事は、山中 伸枝氏の著書『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』=同文舘出版、2021年7月2日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
確定拠出年金には、3つの場面での税制優遇があります。
①毎月掛金を拠出する際に所得税がかからない
②金融商品で運用をする際に税金がかからない
③受取の際に税金の優遇がある
①の毎月の掛金についての税制メリットは、企業型・iDeCo・iDeCo+で異なります。順を追ってお伝えします。
企業型確定拠出年金は、会社が従業員の確定拠出年金口座に掛金を拠出します。この掛金は制度導入の目的によって意味合いも変わりますが、まずは退職金の前払いをイメージしていただくとわかりやすいと思います。
この事業主掛金は、所得税も社会保険料も引かれず、全額が従業員の老後資金となるところがポイントです。なお、会社としても法定福利費、つまり社会保険料の負担も不要です。
例えば、会社から従業員にお金を支払うという意味では、給与も確定拠出年金の掛金も同じです。しかし、給与には、社会保険料と税金の支払いが発生します。しかし、確定拠出年金の掛金には、それらすべてがかからないのです。
従業員が負担する社会保険料(健康保険・介護保険・雇用保険・厚生年金保険)は、給与に対して約15%、所得税は最低でも5%、住民税は10%ですから、それらの負担額が引かれるのと引かれないのとでは、ずいぶん大きな違いになります。
また、会社側から見ると、従業員に支払う給与に対してやはり約15%の法定福利費の負担義務が生じますが、確定拠出年金にはその支払いも不要です。確定拠出年金の掛金は全額損金ですから、社会保険料の負担のいらない給与のようなものです。
会社の処理としては、事業主掛金を「確定拠出年金掛金」という会計科目で経理処理を行ないます。
そもそも、課税も社会保険料の算定対象にもならないお金なので、給与明細に記載する必要はありませんが、従業員の意識を高めるために「確定拠出年金掛金」欄をわかりやすく設けることはお勧めです。
なお、会社が拠出する毎月の掛金額や累計額は、従業員一人ひとりの確定拠出年金口座マイページで各自確認が可能です。
資金の流れとしては、全社分の掛金を会社の口座にまとめておくだけで結構です。毎月26日に、運営管理機関がその口座から指定金額を引き落とし、各従業員の口座に資金が入金されます。
企業型確定拠出年金の掛金は、月5万5,000円が上限と定められています。会社にDB(確定給付企業年金)も併設している場合は、その半額2万7,500円が上限です。
しかし、上限いっぱいまでの掛金を会社が拠出しているわけではなく、大企業の場合も多くが1万円以下というデータもあります。この掛金は、退職金の前払いという形で勤続年数や役職に応じて会社が定めます。
福利厚生として全従業員一律の額を支給する会社もあります。いずれにしても、上限はあるものの、その範囲内であれば会社が独自で設定するものと考えてください。
企業型の掛金拠出は、規約により65歳までとすることが可能です。例えば定年が60歳であれば掛金拠出は60歳まで、定年が65歳、あるいは再雇用制度で資格を継続させるなどの状況であれば掛金拠出は65歳までと設定が可能です。
なお、2022年からは70歳まで掛金拠出ができるように規約を変えられるようになります。
<著者プロフィール>
山中 伸枝(やまなかのぶえ)氏
心とお財布を幸せにする専門家ファイナンシャルプランナー(CFP®)株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役FP相談ねっと代表 一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。執筆:金融庁サイト有識者コラム連載、50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話(東洋経済新報社)、ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他
『会社も従業員もトクをする!中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』