ビデオ会議を詰め込むのは危険?リモートワークで勃発する「テクノロジー疲れ」とは

『リモートワーク・マネジメント〜距離と孤独を乗り越える強いチームづくり』より一部抜粋

(本記事は、セダール・ニーリー氏の著書(山本 泉氏翻訳)『リモートワーク・マネジメント〜距離と孤独を乗り越える強いチームづくり』=アルク、2021年6月30日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

テクノロジー疲れ

まず、「テクノロジー疲れ」の問題から片づけましょう。働き手が認知的過負荷[大量の情報に接したための、脳への過度の負担]、頭痛、ひどいときには舌がもつれるなどの症状を訴える場合はたいてい、ビデオ会議が一つ終わったらすぐにまた次のビデオ会議に出席、というスケジュールで動いているときです。

バーチャル世界でもリアルな世界と同じペースで業務上のコミュニケーションをこなそうとし、しかもリアルでなら掛けるような歯止めを掛けないと、テクノロジー疲れが起きます。これが対面ミーティングなら、連続で開く場合はミーティングの合間に必ず移行時間をとるでしょう。

一つには、対面ミーティングでは普通、A地点からB地点への移動が必要になるからです。たとえ廊下を移動するだけであってもです。そのため、ミーティング時間を詰め詰めで設定しようと思っても不可能です。

ミーティングを二つぐらいならたて続けにやることもあるでしょうが、毎日毎日、あらゆるミーティングをぎっちり詰め込むようなことはしないでしょう。

リモートワーカーが疲弊するのは得てして、ミーティングが一つ終わったら間をおかずに次のミーティングを開始するようなスケジュールを組んだ場合です。しかも、ミーティングの後処理時間やミーティングの結果を踏まえたToDoリストの作成時間をあらかじめ組み込んでおかないと、みるみるうちに仕事が山積みになってしまいます。

デジタルツールを利用すればスケジュールをぎっしり詰め込めるからといって、詰め込まなくてはならないということはありません。こうした理由から、ミーティングの合間には必ず移行時間を設けるべきです。

同じように、ビデオ会議システムがあるからといってむやみとビデオ会議を開かなければならないということもありません。誤解しないでいただきたいのですが、ビデオ会議にはメリットもたくさんあります。

ただし、メール、電話、ビデオ会議、インスタントメッセージング(チャット)、ソーシャルメディアといったコミュニケーションツールは、TPOに合った形で利用することが大事です。

その最大の理由は、こうしたツールは単なる伝達手段ではないからです。デジタルツールはソーシャルダイナミクス[チームメンバー間の交流・関係がチーム全体の行動に及ぼす影響]を形成します。形成されたダイナミクスは、チームの業務目標の達成度を左右します。

したがってリモートワークで成果を上げるためには、正しいデジタルツールの選び方を知っておくことが必要です。正しいデジタルツールとは「チームが生産的に活用できて、リモート環境で成果を上げられる」ようなツールです。

リモートコミュニケーションに適したデジタルツールの選び方問題は、1970年代にまでさかのぼります。おかげで、デジタルツールが働き手にどのような影響を及ぼすかや、よく考えて利用しないとリモートワークにとって最大の懸念材料になりかねないことについては、幸いにしてすでにかなりの知見が蓄積されています。

これから、リモートワークに利用するデジタルツールを選ぶ際に頭に入れておきたい主な問題――「相互知識」と「社会的存在感」――と、その解決策をみていきましょう。

本章では、こういう状況にはこのデジタルツール、という1対1対応を列挙して終わるのではなく、いつ、どんな状況ではどういうデジタルツールがふさわしいかの判断の目安となるようなキーワードと枠組みを紹介していきます。

リモートワーク体制を設計する組織やリーダーにとって、これは単にどのハイテクツールを選んで購入するかというだけの問題ではありません。ツールが変われば推進される目標も、メリットやデメリットも違ってきます。そこを理解しておくことが大切です。

自律性が高くシンクロ性の低い活動に向いたツールもあれば、コラボレーションやリアルタイムの話し合いをサポートするツールもあります。リアルタイム性や親密さを強化するツールもあれば、プロセスやポリシーを型どおりに進めたいとき向けのツールもあります。

市販の膨大なデジタルツールの中でも人気が高いのはパソコンメール、携帯メール、ビデオ会議、電話、ソーシャルメディアです。それぞれのツールの種類や特徴を理解し、意識的に選択することが、チームの成果向上や、結束力強化や、仕事満足度の改善につながります。

しかしまずは、リモートチームが直面する「リモートならではの諸課題」を知っておく必要があります。メンバー全員がリモートであれ、あるいはコロケートメンバーとリモートメンバーの混合形態であれ、「このチームにどういうコミュニケーションカルチャーを形成したいか」を決めるのはリーダーの仕事です。

私は自分や他の社会科学者の研究を通じて、この疑問に答えを出すために解決しなくてはならない問題を、「テクノロジー疲れ」の他に少なくとも五つ発見しました。次に挙げるのがそれです。

  • 「相互知識」の問題
  • 「社会的存在感」の問題
  • 「リッチメディアかリーンメディアか」の問題
  • 「繰り返しコミュニケーション」の問題
  • 「文化の違い」の問題
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<著者プロフィール>

セダール・ニーリー氏

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