株式投資の研究者として知られる、米ペンシルバニア大学のジェレミー・シーゲル博士。同氏の著書『株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす』は、アメリカでは株式投資の必読本と言われています。その中で語られている重要な視点とは!?
ジェレミー・シーゲル氏は、アメリカのテレビ番組で投資領域のコメンテーターとしても活躍しています。長期投資の理論や投資家心理についても詳しく、同氏が語る株式市場や金融市場の見通しに関心を寄せるベンチャー・キャピタル(VC)や個人投資家は多いです。
そのジェレミー・シーゲル氏の著作として知られる『The Future for Investors』は、2005年3月に出版されて全米でベストセラーになりました。その日本語版『株式投資の未来』も同年10月に日経BPから発売され、アメリカ株に投資する人の「バイブル」になっています。
副題にもある「永続する会社が本当の利益をもたらす」という点を中心に、投資銘柄を選ぶ際の重要な視点などが書かれています。成長株や割安株への投資は正しいか、株主価値の源泉とは何かなど、過去100年以上の市場データを分析した上で導きだされた理論が展開されています。
同著の第1部では「『成長の罠』を暴く」と題し、成長セクターへの投資におけるリスクや株式投資の新たなアプローチなどが語られ、第2部「過大評価される成長株」、第3部「株主価値の源泉」へと続いていきます。
ジェレミー・シーゲル氏が指摘する「成長の罠」を端的に言えば急成長している企業に投資したとしても、長期的に見れば必ずしも高いリターンが得られるわけではないということです。これには、配当の再投資が結果的に多くのリターンを生む、というメカニズムが関係しています。それを踏まえて着目すべきなのが、「株価の割安・割高」です。
成長企業の株式は、人気があるため値上がりしていきます。そのため、すでに成熟している企業に比べて株価が割高になっているケースが多いです。
投資家の期待を受けて株価がどんどん値上がりしる場合、配当でその企業の株を追加購入しようとしても、あまり多くは買えません。一方、株価が安定している成熟企業の場合、得た配当で効率よく買い増すことができます。
ジェレミー・シーゲル氏は著書の中で、1950年から2003年における米IT(情報技術)大手IBMと米巨大石油会社のスタンダード・オイルの株価の変遷などを例に挙げ、このことを説明しています。
株式が割高か割安かを判断するためには、「株価収益率」(PER)を使います。PERは株式の指標の一つで、「株価 ÷ 1株当たり当期純利益」で算出されます。この数値が高いほど「割高」、低いほど「割安」と考えることができます。
新たに投資する銘柄を選ぶ際は、PERは一つの判断基準になります。なお業績が拡大している企業は、PERが高くても高いリターンを得られることがあります。
さらっと読める投資本ではありませんが、株式投資の本質に迫る良書と言えます。じっくり向き合って読破すれば、株式投資における新たな視点が得られるのではないでしょうか。