投資信託の運用により得られた収益を、決算期に投資家へ配分するお金のことを分配金といいます。投資信託で分配金を受け取りたいと考えている人にとって、実際に分配される金額がどのような計算方法で決まるのかは、やはり気になるところでしょう。そこで今回は、投資信託における分配金の計算方法について、計算シミュレーションも交えながら詳しく解説します。
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投資信託を行っている会社では、投資家から集めたお金を株式や債券など多様な資産に投資しています。それらの資産から得た配当や利子、あるいは売却益などによる収益が分配金の対象となるお金です。では実際に、分配金はどのような仕組みで配分され、どのように計算されるのか、以下でご紹介しましょう。
分配金について理解するには、まず基準価額について知っておく必要があります。基準価額とは一言でいえば「投資信託の値段」のことです。1口あるいは1万口あたりを単位として、投資家が投資信託の取引をする際の価格として設定されます。
この基準価額は資産運用会社による資産運用の結果によって変わり、運用益が出て投資信託の純資産が増えれば上がり、純資産が減れば下がります。計算式は、1万口あたりの値段を基準価額とした場合だと以下の通りです。なお、株式などは日々価格が変動するため、その運用によって変化する基準価額は1日1回、毎日決定、更新されます。
・基準価額=(純資産額÷総口数)×1万口
実際に投資する際は、この基準価額をベースとして「個別元本」が決まります。個別元本は、再投資すればその都度、そのときの基準価額を元に再計算・修正されます。
投資信託による資産運用がうまくいき、純資産額を増やすことに成功すれば、基準価額は上がります。
個別元本が決算日における基準価額と同額または下回っているときは、税金が発生する「普通分配金」が分配金として投資家に配分されます。
一方、決算日における基準価額が個別元本を下回っているとき、あるいは支払うべき分配金(定額で分配金を受け取れる場合など)が収益額を上回っているとき、投資家に配分される分配金は「元本払戻金」です。元本払戻金は投資元本の払い戻しという性格を持つため、課税されません。
では実際に、普通分配金と元本払戻金について、計算シミュレーションをしてみましょう。以下では、普通分配金となるケース、元本払戻金になるケースをそれぞれご紹介します。計算例は参考計算例であり、実際の金額とは異なります。
まず、前提として個別元本を1万円、分配金支払い前の基準価額が1万2,000円である状況を考えましょう。この場合、投資家が受け取る分配金が500円であるならば、分配金支払い後の基準価額は1万1,500円となり、個別元本として支払った1万円を下回ることはありません。
この場合、投資家が受け取る払戻金500円は普通分配金となり、課税対象とされます。なお、計算プロセスを見てわかる通り、分配金が支払われると支払われる前よりも基準価額は下がります。
個別元本1万円、分配金支払い前の基準価額が1万2,000円という点は上記と同じですが、分配金を3,000円受け取れるという状況を考えてみましょう。
この場合、分配金は3,000円のうち、基準価額から個別元本を差し引いた2,000円分については、資産運用の収益から充てることができるので普通分配金として投資家に配分されます。
しかし、分配金は3,000円であるため、普通分配金だけではまかないきれません。この計算例だと、普通分配金として2,000円、元本払戻金(個別元本を投資家に払い戻すという意味)が1,000円として分配金は計算されます。分配金支払い後の基準価額は9,000円となってしまいますが、1,000円分は払い戻されているという位置づけになるため、投資家に損失は発生していないわけです。
投資信託の分配金には2種類あります。分配金として収益を純粋に配分できる場合は課税対象となる普通分配金が分配金として支払われます。一方、基準価額が個別元本を下回っているとき、あるいは分配金の額を普通分配金だけではまかないきれないときは、元本払戻金として分配金が支払われます。
分配金をいつ・いくら受け取るのかは商品によって異なるので、投資信託に投資をする場合はその点をしっかりと吟味することが大切です。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。