増加する東南アジアの「マス富裕層」における購買行動とは?

東南アジアで急速に増加する「マス富裕層」。比較的若い世代でデジタルに明るいことがマス富裕層の特徴です。高級ブランドを好み派手に散財する従来のアジア系富裕層とは一線を画すマス富裕層の性質を解説し、今後消費拡大が期待される領域について考察します。

ASEAN諸国の経済成長と台頭する「マス富裕層」

ボストンコンサルティンググループ(BCG)が2018年11月に発表した資料では、東南アジアの「マス富裕層」の増加に焦点が当てられました。近年、シンガポール、タイ、カンボジアなどのASEAN加盟国10カ国では急速な経済成長が続いています。

経済成長によって中間層が次々と富裕層にシフトしていき、現在5,700万人いる東南アジアの富裕層は2030年までに1億3,600万人に膨らむとBCGは予測しています。

東南アジアでは現在、全人口の約10%の富裕層が、域内家計資産の約40%を握っています。今後、ここに中間層からシフトした「マス富裕層」(従来とは異なる購買傾向を持つマス化した富裕層)が加わり、富裕層の割合・域内家計資産の割合ともに増加すると推定されます。

増加するマス富裕層をターゲットに効果的なマーケティングを展開していけるかどうかが、今後の東南アジア市場でのビジネスの成否を分けるでしょう。

「マス富裕層」の特性を理解してマーケティングに活かす

BCGの調査では、マス富裕層の大多数は高収入の専門職もしくは事業主だとわかっています。マス富裕層は、一般的にイメージされる派手に散財するアジア系富裕層とは異なる性質を持っており、それを理解することがマス富裕層向けマーケティングには不可欠です。

まず、マス富裕層の約3分の2が40歳未満と比較的若い世代であること、約4分の3が富裕層になってからの期間が10年以内ということを押さえておかなければなりません。

マス富裕層は中間層と比べて最新技術に明るく、デジタル機器を積極的に利用することがわかっています。購買においても、インターネット検索やSNS検索などデジタルチャンネルから得られる情報を重視します。

特定のブランド品も好みますが、マス富裕層はそれ以上に、価値や機能について情報収集を行い、価格に見合った商品かどうかをよく吟味する傾向があります。

富裕層の消費財といえば、腕時計や自動車、海外旅行などが挙げられます。しかし、マス富裕層は家電や食品、アパレルなど中価格帯の商品でも「ワンランク上」の消費を意識し始めている段階にあり、今後の動向が注目されています。

日本の高付加価値製品はマス富裕層と相性がいい

世界のどの地域でも、生活が豊かになるにともない、高性能家電への買い替えが増加し、食品に気を遣うようになります。

経済成長が目覚ましい東南アジアでもこの傾向は変わらず、適切なマーケティングによってマス富裕層を取り込むことができれば、日本の高付加価値製品が一気に浸透するチャンスです。

東南アジア富裕層の根強い日本食人気からも、彼らが食品に健康・安心・安全を求めていることがわかります。

「マス富裕層」向けに商品・サービスを浸透させる手立て

東南アジアにはさまざまな文化・言語の国がありますが、マス富裕層はインターネットを積極的に活用すること、海外旅行で行き来が盛んなためお互いに交流があることから、似たような消費動向を持つという特性があります。

いち早くマス富裕層向けのマーケティングに乗り出すことで、東南アジアの市場ニーズを一気にくみ上げることができるでしょう。

富裕層になってすぐは、一時的に知名度の高い有名ブランドを好み、散財に該当するような無計画な消費行動をとる傾向があります。しかし富裕層となって 10 年以上経過すると、高品質なものを好み、商品・サービスが自分の価値観に合うかどうかを重視するようになります。

また、ニッチであまり知られていないブランドに関心を示す傾向が強まります。今後東南アジアのマス富裕層が増加していく過程で、マス富裕層の嗜好性の変化を正確にとらえ、マーケティングに活かしていくことが重要です。

商品・サービスを浸透させるには、機能的な価値のアピールはもちろんのこと、利用シーンを一緒に提供することが効果的です。利用シーンを提供し、消費者の共感を得ることが、商品・サービスが浸透する下地となるのです。

「企業名・ブランド名」を浸透させるブランディング戦略がカギ

「日本食は安全」「日本製品は高品質」というイメージは東南アジアの富裕層の間に浸透しているものの、欧米諸国と比較すると日本の特定企業のブランド名が浸透している割合は低いと指摘する専門家もいます。

そのため、企業名・ブランド名でのブランディング戦略も今後東南アジア市場を切り開いていくうえで重要なカギとなるでしょう。

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