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「アクティブ型非透明ETF」は、 新たなETFの幕開けとなるか?

考案から10年以上の年月を経て、2019年に米国証券取引委員会(SEC)の承認受けた、新たな上場投資信託「アクティブ型非透明ETF (Actively Managed Nontransparent ETF)」が稼働します。パッシブ運用の傾向が強いETFのメリットと、利益を追究するアクティブ運用のメリットを兼ね備えた商品として、今後の活用が注目されています。

人気が高まるETF。コストの低さと流動性の高さが魅力

ETF(上場投資信託)のメリットには、手数料の低さや分散投資のしやすさ、流動性の高さにおいて有利であることに加え、透明性の高さがあります。

投資信託のポートフォリオ開示が大抵四半期ごと以上の頻度で必要であるのに対し、ETFは基本的に保有銘柄リストが毎日開示されるため、投資家はリアルタイムで価格などを確認でき、また株のようにいつでも取引することができます。投資信託に比べて、手数料(信託報酬)が低い点も魅力です。

このような特性から、ETFはパッシブ運用向きの投資商品として人気が上昇しています。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の調査によると、米国における投資信託の運用資産残高(AUM)は、2011年から2018年まで年間8.7%のペースで成長。2018年から2025年までは年間5.6%と若干ペースは落ちるものの成長を維持し、26.8兆ドルに達する見込みです。

この状況の中、より大きなリスクをとり高リターンを狙うアクティブ型に対して、リスクを抑えてそれなりのリターンを狙うパッシブ型の構成比率は、2011年は全体の21%でしたが、2018年には36%に成長し、2025年には50%になると予想されています。

そしてETFのAUMは、2019年10月の時点で、過去最大の4.15兆ドルに達したことが、ETF.com のデータから明らかになっています。また特定の条件を満たしたETFを優遇する新たな規則「ETFルール」が、証券取引委員会(SEC)によって同年9月に可決されるなど、ETFの成長を力強く後押しする要素の1つとなっています。

パッシブ型の成長が予想されている背景には、アクティブ型がパッシブ型に比べ、コストに見合うパフォーマンスを上げていないと言われていることもありますが、ロボアドを含む低コストのパッシブ運用商品が増加し、手数料関連で価格競争化していることなどがあります。より低コストで投資を行える環境が整いつつあるのです。

ファンドマネージャーの戦略を保護する「アクティブ型非透明ETF」

このような背景から、顧客をつなぎとめる手段として、手数料を下げるアクティブファンドが増えています。

しかし、アクティブ型のファンドマネージャーにとって、ETFのように毎日ポートフォリオを一般公開することは、自分の銘柄選びのスキルや戦略をライバルやブローカーなどに明かすことを意味します。そのため、一部のファンドマネージャーは、ETFへの参入に消極的です。

手数料を削減して顧客にとってのコストを下げ、ETFのメリットである流動性も活かして、顧客と運用資産を増やしたい。しかし、自分の戦略は公開したくない。アクティブ型非透明ETFは、このようなジレンマの解決策として生まれました。ファンドマネージャーにポートフォリオの公開を限定出来る機会を与え、かつ市場での流動性を維持することを目的としています。

2019年4月にアクティブ型非透明ETFとしてSECの承認を得た、米国の投資企業プレシディアンが運用する「Precidian ActiveShares 」を例に説明すると、従来のETFでは、指定参加者(AP=主に証券会社)がETF市場と運用会社との仲介役として、ETFの設定や解約、銘柄のマーケットメイクといった取引プロセスを管理していましたが、アクティブ型非透明ETFでは、カストディアン(投資家に代わって有価証券の管理を行う機関)が唯一「APの代表者」として、毎日のポートフォリオを閲覧したりETFの設定などを行える「機密アカウント」へのアクセス権を有しています。

これによりファンドマネージャーは自分の戦略の開示を、必要最低限の範囲にとどめることができます。

世界初のアクティブ型非透明ETFとしてSECの承認を得たのは、米老舗投資関連企業Eaton Vanceです。同社の「NextShares」は2016年2月に「ハイブリッドETF」としてローンチされましたが、トム・ファウストCEOいわく、取引開始にあたり既存のETFとは異なる取引システムが必要であったため、広範囲に普及することはありませんでした。

しかし「Precidian ActiveShares」は2019年5月時点で、ブラックロックやJPモルガン・チェース、ネイションワイドアメリカンセンチュリー・インベストメンツ、キャピタル・グループを含む大手投資企業9社とライセンス契約を締結していることなどが新しいETF構造を後押し、ETFの歴史を変える可能性が期待されています。

アクティブ型非透明ETFが市場にもたらすメリット

アクティブ型非透明ETFの承認は、ETFなどパッシブファンドに押され気味のアクティブ型投資信託にとって、新境地を開拓する絶好の機会になると期待されています。

従来のETFの透明性というメリットはなくなるものの、ファンドマネージャーにとってはポートフォリオの保有を一般開示する必要がないため、ライバルとの差別化を図ると同時に自社の競争力を維持することができます。また低コストや流動性の高さ、課税の取扱いが有利といったETFの他のメリットを維持する一方で、アクティブ型の要素を備えた運用ができるようになるため、より幅広い層の投資家にアピールすることができるでしょう。その結果、市場の多様化やさらに堅甲な資産配分モデルの構築が実現するのではないでしょうか。

大手投資企業が続々扱い始めるアクティブ型非透明ETF。投資家に受け入れられるのか

すでにSECの承認を得ており、大手が続々と参入準備をしているという点で信頼性の高さが伺えますが、前例がないため先行きが不透明であることは否めません。

従来のETFの特徴である透明性を重視する投資家にも受け入れられるためには、アクティブ運用のメリットを立証できるかどうかにかかっていると言えるでしょう。

投資家は、常に新しい投資対象やイノベーティブな投資手法を求めています。現時点では米国のみで承認を受けていますが、今後実績を積むことで、アクティブ型非透明ETFも、徐々に世界各国の市場に浸透していくのではないでしょうか。

※上記文中の個別企業や金融商品はあくまで事例であり、当該銘柄の売買を推奨するものではありません。

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