株価は、「夏枯れ相場、年末高」と呼ばれる値動きをすることがあります。今回は、「夏枯れ相場、年末高」の意味を解説するとともに、過去5年間の株価の推移を検証します。2020年前半の相場は、コロナショックで乱高下しました。12月前半時点までの、2020年後半の動きもおさらいしましょう。
目次
「夏枯れ相場」とは、お盆休みなどで市場参加者が減ることで取引量が少なくなり、変動が鈍くなる相場ことです。
しかし取引量が少ないと、些細な出来事が大きな変動を引き起こします。そのため、「夏枯れ相場」はリスクが高いともいわれています。
「年末高」とは読んで字のごとく、年末に株価が上がることです。年末に株価が上がる年が多いため、「年末高」を見込んで投資判断を行う投資家も少なくありません。
では、過去の日経平均株価の終値を見てみましょう。
2015年8月 1万8,890円
2015年12月 1万9,033円(+143円)
2016年8月 1万6,887円
2016年12月 1万9,114円(+2,227円)
2017年8月 1万9,646円
2017年12月 2万2,764円(+3,118円)
2018年8月 2万2,865円
2018年12月 2万14円(−2,851円)
2019年8月 2万704円
2019年12月 2万3,656円(+2,952円)
お盆休みのある8月と12月を比較すると、過去5年間では2018年を除くすべての年で、8月の株価は12月より低くなっています。「夏枯れ相場、年末高」の傾向は、実際の株価にもはっきり表れているといえるでしょう。
続いて、2020年の相場を振り返ってみましょう。
2020年は新型コロナウイルスの影響で「夏枯れ相場」にはならず、イレギュラーな動きとなりました。日経平均株価の終値の推移は、以下のとおりです。
2020年1月 2万3,205円
2020年2月 2万1,142円
2020年3月 1万8,917円
2020年4月 2万193円
2020年5月 2万1,877円
2020年6月 2万2,288円
2020年7月 2万1,710円
2020年8月 2万3,139円
新型コロナウイルスの影響で2月に株価が下がり始め、3月には2万円を割りました。1月と比較すると、3月は約18%も下落しています。
しかし、その後は急激に回復。4月は2万円台に戻し、5月以降も上昇傾向が続きます。そして8月には、コロナショック前の1月とほぼ同じ水準まで戻りました。
2020年の夏は、「夏枯れ相場」を予想していた投資家やアナリストにとっては意外な展開となりました。
コロナショックから急回復し、「夏枯れ相場」にならなかった理由はどこにあるのでしょうか。
まず新型コロナウイルスによって世の中が大きく変わったことで、「ウィズコロナ銘柄」が注目を浴びたことです。
例えば「非接触」「巣ごもり」といったキーワードのもと、通信販売を利用する人が急増。通信販売大手のAmazonの株価は、2019年12月は1,847ドルでしたが、コロナショックにもかかわらず2020年8月には3,450ドルを記録しました。8ヵ月で株価が約1.9倍になったのです。
またスーパーやドラッグストアは、3~5月は増収増益となりました。ネットスーパーをはじめとしたデリバリーに力を入れることで、コロナショックを切り抜けたといえます。
さらに、リモートワークを導入する企業が増える中で、投資への関心が高まりました。証券口座の口座数は軒並み増加。特に対面で取引する必要のないネット証券が人気を集めました。ネット証券大手のSBIホールディングスでは、2020年3月に口座数が500万口座を突破しています。
新型コロナウイルスによるライフスタイルの変化は、すべての企業に打撃を与えたわけではなかったのです。
ニーズの変化をいち早くキャッチし、コロナショックを乗り切った企業。ウィズコロナ銘柄に積極的に投資した投資家。そこにワクチンや経済回復への期待も重なって、例年のような「夏枯れ相場」にならなかったと考えられます。
「夏枯れ相場」がなかった2020年ですが、「年末高」に向かって進んでいるのでしょうか。
日経平均株価の終値には、2020年8月以降も上昇傾向が見られます。
2020年8月 2万3,139円
2020年9月 2万3,185円
2020年10月 2万2,977円
2020年11月 2万6,433円
2020年10月から11月にかけて、株価が約15%も上昇しています。2020年11月の日経平均株価の終値は、すでに2019年12月の「年末高」である2万3,656円を大きく上回っています。
2020年11月は日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ諸国でも株価が大きく上昇しました。新型コロナウイルスのワクチン開発に関するニュースや、アメリカの大統領選が終わって不安が払しょくされたことが影響していると考えられます。
コロナショックから急回復し、そこからさらに株価が上昇しているのは喜ばしいことですが、楽観視は危険です。
2020年の夏に「夏枯れ相場」にならないまま株価が上昇し、11月にさらに上昇した今、このまま「年末高」になると見越して投資するのは危険でしょう。2020年夏の相場がイレギュラーであったように、年末の相場もイレギュラーとなる可能性は十分あるからです。
専門家の間でもセオリーどおり「年末高」となるのか、セオリーに反して相場が下がるのか、意見が割れています。
続いて、2020年の年末年始にかけての市場の懸念材料を見ていきましょう。
新型コロナウイルスのワクチンへの期待感が高まる一方で、ワクチンの買い占めやアレルギー反応が問題になっています。ワクチンへの期待感が少なからず相場を押し上げていたとすると、ワクチンに不安要素が出ることで相場が勢いを失う可能性もあります。
またアメリカのバイデン次期米大統領は、金融規制改革を政策綱領に掲げています。規制強化の度合いは未知数ですが、金融システムに影響がおよぶ可能性も指摘されています。日経平均株価はアメリカの市場の影響を受けやすいことから、新しい大統領の金融政策によっては、相場が急変する可能性も十分あるでしょう。
2020年前半は、ウィズコロナ銘柄に人気が集まりました。一方でアフターコロナを見据え、割安株を仕込む動きもあります。このような動きも踏まえて、「年末高」「ウィズコロナ銘柄」だけにとらわれることなく、投資先を慎重に選ぶ必要があるでしょう。
2020年の相場は、コロナショックによる急落から始まりました。その後急回復しましたが、「夏枯れ相場」のセオリーが崩れる展開に。その後も株価は上昇を続け、11月は大きく上昇し、12月前半も上昇が続いています。このまま年末高となるのか、逆に下落に転じるのか、相場の動きから目が離せません。
(2020年12月10日作成記事)
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。