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目次
①ブレグジット、②米国財政刺激策、③連邦準備制度、④ジョージア州米上院決選投票、⑤新型コロナウイルスの感染率、⑥ワクチン供給の一時的な中断、⑦米国企業の設備投資動向、⑧中国の経済指標、⑨金融市場—の年末の動向に注目
1. ブレグジット:
ジョンソン英首相は、交渉決裂に備える警告を企業へ始める
2. 米国財政刺激策:
財政刺激策が近日中に発動される可能性は低下
3. 連邦準備制度:
量的緩和(QE)政策での支援拡大が視野に
4. ジョージア州米上院決選投票:
決選投票で上院の支配政党が決まる
5. 新型コロナウイルスの感染率:
感染拡大から二番底の恐れも
6. ワクチン供給の一時的な中断:
ワクチン接種を希望する人口割合を注視
7.米国企業の設備投資動向:
設備投資と企業心理の先行きに注目
8. 中国の経済指標:
中国経済の好調が続く見込み
9. 金融市場:
株式市場の一時的な下落はありえるが、それは短命となるだろう
本稿は、2020年内に発行する最後のリポートです。2020年は、多数の人がお亡くなりになり、企業の倒産も見られるなど、多くの損失に見舞われた1年でした。先日、ニューヨークの老舗レストラン「21クラブ」が、無期限で営業を停止することを発表しました。今年は多くのサービス関連ビジネスが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けました。人々は、2020年が終わり、2021年が明るい年になることを望んでいます。多くの医療従事者や、その他の新型ウイルスにさらされる可能性が高い労働者(食料品店の従業員、救急隊員、教師など)に、私たちの日常は支えられてきました。インベスコの全社員に代わり、皆さまに感謝申し上げます。
2020年が終わり、2021年が始まる中、年末までの数週間で注目すべきことを記しておきます。
直近、交渉期限が再度延長されましたが、先行きはいまだ不透明です。英国のボリス・ジョンソン首相は、交渉が「破談」した場合に備え、企業に在庫を積み増しておくよう警告し始めました。12月11日時点では、英国・欧州連合(EU)両サイドの関係者は、交渉決裂が最も可能性が高い結果だ、と述べました。パンデミック下、その代償は非常に大きなものとなるでしょう。私は、「合意なき離脱」が市場に完全に織り込まれているとは考えておらず、合意が見られることを心から望んでいます。
財政刺激策が近々、発動される可能性は、刻々と低下しているようです。私は、提案された9000億米ドルの財政案は不十分なものの、米連邦準備理事会(FRB)が警告している 1 ように、財政出動がなければ、経済的な傷あとがさらに残ると考えています。今後数週間~数カ月において、さらに多くの企業の倒産が見込まれており、米国の雇用統計は大きく悪化することが予想されます。これにより、現在の「K」字型回復がさらに進み、所得と富の不平等が拡大するでしょう。ただし、2021年は、世界金融危機後よりも力強い、包括的な景気回復が見られると考えています。金融環境が緩和的である限り、「創造的破壊」が生まれ、新規のスタートアップ事業が誕生し続けるでしょう。しかし、適切な財政刺激策が近々に発動されなければ、経済の損害が重大となる恐れが十分にあるでしょう。
FRBの会合が、今週に開かれます。欧州中央銀行(ECB)は、前週、資産購入プログラムの拡大を決定しましたが、その規模は予想を下回り、多くの人々を失望させました。米財務省による緊急融資の一部打ち切りの決定を考えると、FRBは市場と経済への支援をさらに強化する必要があると考えます。FRBは、経済状況が短期的に悪化すると予想しているため、今後の量的緩和(QE)政策における購入額の増額や、長期債の買い入れ拡大といった支援が行われる可能性があるでしょう。これは長期金利を低下させる効果があるため、経済と市場を下支えするはずです。また、FRBは、インフレをより容認しながら利上げ前まで経済を走らせるという意志を、繰り返し示すと思われます。これにより、ユーロなどの他の主要通貨に対しての米ドル安が継続することが考えられるでしょう。
2つの議席をめぐる決選投票の結果が、どちらの政党が上院の過半数の議席を確保するかを決めます。そして、将来の刺激策(インフラや環境関連の投資を含む)と税制の行方が明らかになります。私は、共和党が1議席か2議席を確保する可能性が非常に高いと思いますが、民主党が両議席を獲得した場合(私はその確率は20%程度と思います)は財政出動の規模が大きくなり、州・地方自治体への支援も含まれると予想します。一方で、税率が引き上げられることが予想され、これにより、株式市場の変動性が短期的に高まる可能性があるでしょう。
米国の新規感染者数は、減少どころか、増加の一途をたどっています。ユーロ圏は、現在、感染者数の増加に歯止めがかかっているようですが、北半球では冬が始まったばかりです。直近、過去に経済に大きな打撃を与えた新型ウイルスのまん延に対応するため、ドイツでは厳格な封鎖措置(ロックダウン)が発表されました。西側先進国で感染者数が増加した場合、それは各国経済に甚大な損害を与えかねず、最悪の場合、景気後退の二番底が見られることが懸念されます。
英国と米国では、新型コロナウイルスのワクチン接種が承認され、さらに多くの国がそれにすぐ続くというニュースは、非常にポジティブなものです。ただし、ワクチン運搬の障害や副作用などが発生した場合、株式市場が大きく反落する可能性があることを認識する必要があります。また、ワクチン接種を希望する人口の割合が、新型ウイルスを収束させ、経済が正常な状態に戻るまでの時間を決定づけることから、これらを注視していきます。
以前にも述べましたが、多くの国では、新型ウイルスワクチンが広く供給される前に、設備投資が増加し始めるとみています。また、設備投資の増加に先立ち、企業心理も改善する(経営者の自信が高まる)と予想されるため、この2つの指標を綿密に追っていく考えです。来月以降、新型ウイルスの厳しい環境下にもかかわらず、企業心理が改善に向かったとしても、私は驚きません。
新型コロナウイルスの制御に成功している中国経済は好調を維持しており、2021年には景気回復をリードすることが見込まれます。それは、すでに好調な経済指標に現れており、例えば、11月の自動車販売台数は前年比11.6%増と好調でした 2 。今後も経済指標を注視し、中国経済が好調さを維持するかを確認していきます。
2020年3月以降、株式市場は上昇基調が続いています。今年、新規上場企業が投資家から大きな注目を集めたことは、「リスクオン」の環境を象徴しています。そして、現在の状況がいつまで続くのか、投資家は懐疑的な姿勢を持ち続けています。今年に見られたように、力強い株価の上昇の後に調整局面が訪れるのは自然なことだと思います。市場下落のきっかけとしては、経済活動を阻害する新型ウイルスの感染者数の大幅な増加や、ワクチン供給の一時的な中断など、さまざまな要因が考えられます。ただし、緩和的な金融政策を背景に、ワクチン普及に伴う力強い景気回復が企業業績を強力に支援すると予想され、下落局面は短期的なものになると考えます。株価の下落とともに金価格の上昇が予想されますが、それも短期で終わると考えています。
上記に挙げた点を注視しながら、次回は新年1月4日付けの本リポートで、これらの状況について読者の皆さまにお伝えする予定です。よい年末をお過ごしください。
1.出所:ニューヨーク・タイムズ、“Fed Officials Warned of Slowdown Without Stimulus”、2020年10月12日。
2.出所:中国自動車工業協会。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2020-188