インデックス投資とは、日経平均株価やS&P500などの「インデックス(指数)」と連動する成果を目指す投資手法です。基本的には投資信託で行われており、株価指数などと連動するファンドはインデックス・ファンドと呼ばれます。
インデックス投資は「おすすめしない」といわれることもありますが、どのような特徴がある手法なのでしょうか。本記事ではインデックス投資がおすすめしないといわれる理由に加えて、向いている人の特徴や失敗を防ぐコツなどをご紹介します。
インデックス投資が「おすすめしない」といわれるのは、個別株式に比べて短期間で大きなリターンを期待しづらかったり、個別銘柄を選べなかったりすることが理由です。また、保有期間に応じて信託報酬がかかる点や元本保証がない点に不安を感じる人もいるでしょう。
なかには大きく値上がりするファンドもありますが、インデックス投資は少額から積立投資を始めたい人や長期の資産形成を目指している人に向いている手法です。以下では、その主な理由をご紹介します。
インデックス・ファンドには様々なタイプがあり、ファンドによっては期待できるリターンが少なくなります。
たとえば、資産構成の大部分を債券が占めるファンドは、株式を中心としたファンドに比べると値動きが少ない傾向にあります。様々な株式に投資をするファンドについても、個別銘柄に比べると期待リターンが小さくなるかもしれません。
ただし、債券型などの投資信託であっても、値動きが大きいファンドは存在します。タイプ別にリターンを判断すると、目的に合ったファンドを見落とす可能性があるので注意してください。
株式や債券などとは違い、投資信託でインデックス投資をすると、ファンドの保有時に「信託報酬」と呼ばれる手数料がかかります。信託報酬は「純資産総額の年〇%」といった形で決められており、信託財産(ファンドの保有資産)から毎日差し引かれます。
つまり、インデックス・ファンドは保有期間が長引くほどコストがかかる金融商品です。ファンドの基準価額がプラスであっても、相場状況によっては信託報酬で損失がでることもあります。
ただし、インデックス・ファンドの信託報酬が特別に高いわけではありません。専門家が組入銘柄を定期的に入れ替える「アクティブ・ファンド」に比べると、インデックス・ファンドの信託報酬は安い傾向があります。
投資信託を活用したインデックス投資は、個別株式と比べて短期投資に向いていないことがあります。投資信託の取引では、申し込みの締め切りが終わってから基準価額を決める「ブラインド方式」が採用されているためです。
たとえば、損失がプラスに変わったタイミングで売却しても、実際の取引価格は申し込み
の後に決まります。その後に基準価額が下落すると、再び損失に転じてしまうこともあるでしょう。
なお、上場投資信託と呼ばれる「ETF」については、取引時間内であればリアルタイムの市場価格を見ながら取引できます。多くのETFはインデックス・ファンドに該当するため、短期のインデックス投資に興味がある方はETFから検討してみましょう。
インデックス投資では、株価などの指数と連動する金融商品を選ぶことになります。指数には複数の銘柄や資産が組みこまれているため、ご自身で個別銘柄を選ぶことはできません。個別銘柄を選べない弊害としては、主に以下のような点が挙げられます。
・配当金を受けとれない
・株主優待がない
・特定の銘柄だけが上昇したときに、その恩恵を受けられない
その一方で、インデックス投資にはひとつのファンドで分散投資できる強みがあります。
インデックス投資の対象商品には元本保証がありません。元本保証とは、投資家の資産が減らないことを保証する仕組みです。
一般的に「リスクが低い」といわれるインデックス・ファンドでも、購入時より基準価額が下落すると損失になります。また、運用成績がよくないファンドでは、予定の期間を待たずに運用を終了させる「繰上償還」が適用される場合もあります。
リターンがでるまで待つ選択肢はありますが、必ずしも基準価額が上昇するとは限りません。もし下落しているタイミングで繰上償還になると、その時点での損失が確定してしまいます。
インデックス投資は「おすすめしない」といわれることもありますが、目的によっては有効な選択肢になる場合もあります。どのようなケースが該当するのか、以下ではインデックス投資に向いている人の特徴をご紹介します。
株式の個別銘柄では1株や100株が購入単位となるため、まとまった資金が必要になることもあります。利用する金融機関にもよりますが、インデックス投資の対象商品には100円から購入できるものがあります。
例としては、投信積立の対象に含まれるインデックス・ファンドが挙げられます。金融機関によっては、口数単位ではなく毎月100円からインデックス・ファンドを購入できるため、インデックス投資は少額から積立投資を始めたい人に向いているでしょう。
インデックス投資の対象商品には、個別株式に比べて値動きが小さいファンドもあります。ただし、基準価額の変動が小さかったとしても、投資金額を増やせば大きなリターンを目指すことは可能です。
そのため、インデックス投資は長期の資産形成を前提としてコツコツと投資金額を増やしたい人に向いているかもしれません。また、購入金額と購入頻度を一定にして長期運用をすると、ドル・コスト平均法の効果(※)も期待できます。
(※)購入金額は一定なので、金融商品の価格が下がったときに購入量が多くなり、価格が上がったときに購入量が少なくなるため、購入単価を平均化する効果に期待できます。
インデックス・ファンドでは、ベンチマークとなる指数と連動するように組入銘柄が選ばれるため、投資家は情報収集や分析の手間を省けます。各ファンドの情報収集は必要になりますが、個別銘柄まで細かく調べる必要はありません。
一方で、個別株式などに投資をする場合は、各銘柄の業界動向や業績、配当金の傾向などを調べることになるでしょう。外国株式では為替動向も影響するため、情報収集だけで大きな手間がかかる場合もあります。
前述の通り、インデックス投資ではひとつのファンドを購入するだけで、様々な地域や資産に分散投資できます。そのため、インデックス投資は損失のリスクを抑えたい人に向いています。
地域や資産を分散させると、ある個別銘柄が大きく下落した場合に、最大の損失幅を抑える効果が期待できます。ただし、資産構成によってはリスクが下がらない場合もあるので、各ファンドの組み入れ銘柄は事前に確認しておきましょう。
確定拠出年金のiDeCoや企業型DCは、拠出した掛金で金融商品を運用できる年金制度です。対象商品には定期預金や保険のほか、インデックス・ファンドをはじめとした投資信託も含まれます。
iDeCoや企業型DCでインデックス投資をすると、以下のような節税効果が期待できます。
・金融商品から生じた全てのリターンが非課税になる
・個人で拠出した掛金が所得控除の対象になる
・資産が増えていても、受給時には退職所得控除や公的年金等控除が適用される
ただし、確定拠出年金で積みたてた資産は、原則60歳になるまでは受給できません。また、投資対象のファンドが限定されるため、加入前には目当てのファンドに投資できるかを確認しておきましょう。
「おすすめしない」といわれるインデックス投資でも、コツを押さえれば目的を達成できる可能性があります。ここからは、インデックス投資の失敗を防ぐ6つのコツをまとめました。
どのような投資手法でも、基本的には金融商品の特性に合った運用計画を立てることが重要です。インデックス・ファンドにはどのような特性があるのか、ここまでの内容も含めて整理してみましょう。
<インデックス・ファンドの主な特性>
・基本的にはベンチマークの指数と成果が連動する
・ひとつのファンドで様々な資産に投資できる
・株式型や債券型、バランス型などの種類がある
・保有期間に応じた信託報酬がかかる
・個別銘柄に投資できない一方で、プロに運用を任せられる
・金融機関によっては毎月100円から積みたてられる
・リスクが低いファンドでも元本保証はない
投資の目的によっては、そもそもインデックス・ファンドが向いていないかもしれません。上記の特性を見たときに「自分には合わない」と感じた場合は、ほかの金融商品も検討してみましょう。
インデックス・ファンドは分散投資ができる金融商品ですが、選び方によってはリスクを十分に分散できない場合があります。たとえば、米国株式のみに投資するファンドは、米国の株式市場が落ちこんだときに下落することが予想されます。
また、大きなリターンを期待できるファンドは時期によって変わります。相場状況に合わせた判断が重要になるため、ひとつのファンドにこだわり過ぎることは控えましょう。
投資の目的や相場状況によっては、株式型と債券型を組み合わせたり、複数のバランス型ファンドを保有したりする手法が有効になる場合もあります。
元本保証がない金融商品では、常に損失がでることも想定しておく必要があります。
利益が出るまで保有を続けると、信託報酬が大きな負担になったり、かえって損失が膨らんだりする可能性があります。前述の通り、インデックス・ファンドには繰上償還の仕組みがあるため、長期運用でも必ず利益になるとは限りません。
下落が続いても資産を守れるように、損切りの基準はあらかじめ決めておきましょう。
インデックス・ファンドを選ぶときには、過去のパフォーマンスだけではなく信託報酬にも目を向けることが重要です。
投資信託やETFには、資産構成が似ているファンドも存在します。同じような資産構成であれば、基準価額の変動(パフォーマンス)は大きく変わらないと考えられるため、信託報酬の安いファンドを選んだほうが得になりやすいでしょう。
また、信託報酬の安さに目を向けることで、長期保有を続けやすくなる効果も期待できます。
最初は何十年と運用するつもりでも、実際に長期積立を続けることは簡単ではありません。投資をする余裕があっても、「思ったより増えない」「損失が膨らんでしまった」などの理由から長期積立を諦めてしまう人も見られます。
長期積立は途中でやめると効果が薄れるので、長く続けるための工夫を考えましょう。例としては、無理のない積立金額を設定したり、ポイントが付与されるクレジットカードで積みたてたりする方法があります。
長期でインデックス投資を始める場合は、事前に運用のシミュレーションをすることが重要です。運用のイメージをつかんでおくと、シナリオから外れた場合に売却の判断を下しやすくなります。
いきなり長期運用のシミュレーションを立てることは難しいため、まずは1年間の大まかなリターンから計算してみましょう。
投資金額×トータルリターン(1年)=期待できる年間のリターン
上記の「トータルリターン」とは、信託報酬などのコストを差し引いた実質的なリターンです。証券会社によっては、公式サイトで各ファンドのトータルリターンを公開しています。
トータルリターンには3年単位や5年単位のデータもあるため、投資金額を調整すれば長期のシミュレーションも可能です。データがない場合は、資産構成が似ているファンドのトータルリターンを調べてみましょう。
インデックス投資にはリスクが低い対象商品もある一方で、個別株式より大きなリターンを期待しづらいこともあります。また、投資信託ではブラインド方式が採用されるため、短期投資には向いていないファンドも多いでしょう。
ただし、長期の資産形成を考えている人にとっては、有効な選択肢になる場合もあります。インデックス投資や対象商品の特性を理解した上で、ご自身の目的に合った運用計画を立てましょう。
※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。
※本記事は投資信託に関わる基礎知識を解説することを目的としており、特定ファンドの売買や投資を推奨するものではありません。
※本記事は、2024年7月23日現在のものです。今後制度が変更になる場合もあります。