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実物資産にもESGの波 注目のバイオマス・エネルギーとは
(画像=Andrei/stock.adobe.com)

実物資産にもESGの波 注目のバイオマス・エネルギーとは

化石燃料に依存しない持続可能なエネルギー源として、バイオマス・エネルギーの市場が成長しています。本記事では、バイオマス・エネルギーのポテンシャルと課題、そして実物資産としての価値について考察します。

バイオマス・エネルギーとは

バイオマス・エネルギーは、自然由来の有機物(植物・微生物・木材・廃棄物など)をエネルギー源とする再生可能エネルギーで、燃焼・ガス化・発酵・熱分解などに関する技術により生成されます。

国際エネルギー機構(IEA)によると、バイオマス・エネルギーは世界の全エネルギー供給量の6%、再生可能エネルギーの55%を占める主要エネルギーであり、以下のようなメリットから脱炭素社会への移行で重要な役割を果たすと期待されています。

・自然環境に影響を受けず、安定した電力を確保できる
・廃棄物を再利用するため、廃棄物の削減に役立つ
・地球上に豊富に存在する資源から生成される
・カーボンニュートラルなエネルギー源(※)である

(※)バイオマスはエネルギーの生産プロセスで二酸化炭素(CO2)を排出するが、原料である植物はライフサイクル中に同じ量のCO2を吸収すると考えられている。

実物資産としての価値は?

脱炭素社会への移行、発展途上国におけるエネルギー需要の急増、各国のバイオマスおよび再生可能エネルギー推進策といった様々な要因に後押しされ、バイオマス・エネルギーの実物資産としての魅力が高まっています。

バイオマスはエネルギー資源だけではなく、炭素クレジット(※1)やバイオマス灰(※2)といった多様な収益源となることが期待され、バイオマス発電所は不動産およびインフラ投資対象となります。

(※1)企業間で温室効果ガスの排出量をクレジットとして発行して、売買できる仕組みのこと。
(※2)木材を使用するバイオマス発電で発生す灰のこと。セメントや土壌肥料の原料として注目されている。

バイオマス・エネルギーへの投資状況

国家規模の投資の活発化は、持続的な成長が期待されている要因のひとつです。たとえば、次世代バイオ・エネルギー開発をリードする米国政府は、2023年、バイオ燃料や肥料生産などに関わる研究開発、インフラへ総額7億7200万ドル(約1,235億円)を投じました。

最近では、低コストバイオ燃料・製品向けの原料を開発する8つの大学および産業プロジェクトに総額1,860万ドル(約29億7,600万円)の資金を提供したほか、先進バイオ燃料の開発に最大940万ドル(約15億400万円)を投資する計画を明らかにしました。

一方で、バイオマス・エネルギーの消費量は年々増加傾向にあり、SDGs(※)の実現に向けてさらなる需要拡大が予想されていることから、将来性が高く、投資の機会が豊富な領域として期待できるでしょう。市場調査企業マーケッツ・アンド・マーケッツは、世界のバイオマス発電市場が2028年までに1,050億ドル(約16兆8,000億円)以上に成長すると予想しています。

(※)持続可能な開発目標、2015年の国連サミットで採択された世界共通の目標のこと。

今後の課題は?

バイオマス・エネルギーは持続可能なエネルギー源としてポテンシャルを秘めている一方で、技術的・経済的・環境的な課題もあります。

たとえば、バイオ燃料に用いる作物の大規模な栽培が森林伐採や水資源の過剰利用、土壌劣化につながること、バイオマス発電所は石炭や天然ガスより多くのCO2を排出することなどが報告されています。その一方で、生産コストの高さやバイオマスの収集・処理・輸送の効率化といった課題にも対処する必要があります。

このような課題を克服し、持続可能なものにするためには、技術開発や政策支援に加え、エネルギー供給と環境保全のバランスを配慮した慎重なアプローチが必須となるでしょう。

ESG投資の選択肢としての将来性にも期待

バイオマス・エネルギーは脱炭素化に必要な代替燃料のひとつです。ESG投資の選択肢としても将来性が期待されている一方で、様々なリスクや市場の不確実性といった課題も存在します。投資家はこのようなリスクを理解した上で、持続可能な投資戦略を立てることが重要です。

Wealth Roadでは、今後もバイオマス・エネルギーを含む再生可能エネルギー市場動向をレポートします。

※為替レート:1ドル=160円
※本記事は投資に関わるバイオマス・エネルギーを解説することを目的としており、バイオマス・エネルギーへの投資を推奨するものではありません。

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